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のんびり高速移動旅
070、馴染みの服屋 3(実験)。
「えーっと、どうすっかな」
「どうしたんだ?」
「何か、似たような匂いが他からもするんだけど、出所がこの棚の中な気がして、さすがに何も聞かないで開けれないしょ」
「そうだな。……一度、魔法を止めるか?」
「それしかないよなー……オヤジさん、鬼畜な所業、お許しください」
オヤジさんに手を合わせて拝むようにすると、リンに何で拝んでるんだ?と突っ込まれ、ごめんの時もするんだよっと返すと、なるほどっと納得された。
「あっ、切りのいいところでなっ、この一枚終わらせたらっ……今っ!」
スッとリンの掌から光が消えるとオヤジさんは、ペンを握り締め固まり、おでこに手を当てた。
一応、吐いた時用の桶みたいなのを準備したが、使わずに落ち着いてくれた。
「…………すいません、止めてしまって。聞きたいことがあったので途中で止めてしまいました」
「……いや、……ふぅー、なんだ?聞きたいことって」
書いた紙を見てはまたクラッときているようで、俺が散らばった紙を集めて視界から外すと、少し落ち着いた。
「コウがこの棚からも匂いがすると、こちらを開けてもいいか聞こうと思いまして」
「あー、それは一段目以外はアイツのだから、俺は開けていいと言えるのは一段だけだぞ」
五段ある棚の所有権は、奥様が大半を牛耳ってる状態らしい。
平等な世界なのに、女性の方が荷物などが多いのは、こちらでも同じらしい。
「それなら、多分一段目だから大丈夫。開けてもいい?」
「いいぞ、そんな気になるものなんて入ってないと思うが」
了解を得て、棚を開けると服が何着か入っているだけだが、確かにここから匂いがする。
「……ちょっと、中見ていい?」
棚を指差して聞くと、微妙な顔でも快諾してくれた。
初めて会った他人に棚を探られるのは、そりゃあ嫌だろう。
他人の家に無断で勝手に上がり込み、無断で棚を開けたり壺を壊してアイテムやコインゲットしていいのは、ゲームの中だけ。
「失礼しまーす」
服を探り、出所を探していくと、服の下にあった一枚の葉っぱにたどり着いた。
「これっ!これって葉っぱ?」
「虫除けの葉だろ。お前さんは使ってないのかい?」
当然のように言われ、この世界にムシュー○ではなく、虫除けの葉を棚に入れる習慣らしい、と今知った。
「えーっと」
「彼は旅人。産まれたときから旅してるから、虫除けの葉は使ってないんだ」
「そうか、それなら仕方がないな」
あっさりと納得され、そんな職業が確立していることも今知った。
「あー、っと、んで、この棚にはこれだけ?」
「いつも三枚ほど入ってるはずだが」
「……あっ、これか、あとは……あった、けど匂いがない。この葉っぱだけ匂いする」
最初に手に取った葉っぱだけ、匂いが違う。
少しきつめのレモンとかのすっぱめの柑橘系の匂いがするが、他の二枚は葉っぱの匂いだ。
「……これは匂いが凄いな。俺が家で使っていたのは、匂いのないこっちの方だ」
どちらかと言えば、この匂いのある葉の方が防虫効果がありそうだが、防虫として使っているのは匂いのない『ムシュー葉』の方だと、リンが確めた。
「これ何か、かかってんの?」
「いいか?」
そこで寄越せと手を差し伸べてきたオヤジさんにそれを近付けると、オヤジさんは手を前に出して近付くなっというようなサイン。
顔も青ざめて来たので、どうしようかとワタつくとリンがすかさず俺の手から奪い、ジンケットにしまいこんだ。
ジンケットに入れると匂いは漂っているだけになったので、窓を開けて換気してみたが、オヤジさんの青ざめた顔はしばらく戻らず、横になってもらい、俺たちは部屋を出た。
「父さんどう?」
下で仕事をしていた二人が、部屋の目の前のLDKのキッチンテーブルに着き、お茶を飲んでいた。
茶髪の女性が、座ってと促し、ホビット系の男性が俺たちのお茶を注いでから差し出してきた。
「ありがとう、カープレノ」
「いえっ」
「先に紹介するよ。今、一緒に旅をしているコウタだ」
「どもっ」
ペコッとお辞儀すると、二人はにこやかな笑みで自己紹介してきた。
「私はマヒルナ」
「カープレノです。よろしくお願いします」
さっき父さんと言っていたから、マヒルナの父さんがあのオヤジさんでこっちのホビットは婿養子か?と思っていると、リンが俺の顔色で察知して、訂正を入れた。
「カープレノは、この家の養子ではあるが、二人は夫婦じゃないよ」
「あっ、そうなん?」
「私は捨て子でして、オヤジさんは拾って育ててくれた恩人なんです」
そうにこやかにそう暴露され、返答に困ると、マヒルナがため息を吐いた。
「オヤジさんじゃなくて、オヤジって昔みたいに言えばいいのに、数年前から他人行儀で、特にこの頃はまた酷いの……」
ふて腐れたように言うマヒルナの空気が悪くなってきた。
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