俺は異世界召喚された『セイジョ』として。

のんびり高速移動旅

074、馴染みの服屋 6（蔓玉）。

その後、精愛の勇者のチート力を信じて二人が襲われた近辺を捜索してみた。
久し振りの魔力引っ込め状態で彷徨いていると、すぐにカラマンダラ登場。
さすがの引き寄せチート力で、その手に持つのは花が付いているミラツル蔓玉。
カラマンダラは、全長100センチとかのデカい足のないヤモリのような姿。
上半身と言うのか、持ち上げられた上半身の体幅と同じくらいの大きさの蔓玉を短い手でガッシリ掴んでいた。
女王なのかはわからないので、花付きの蔓玉のみを回収してもらった、もちろん、リンに。

回収した蔓玉を持ち帰り、先の行動をどうするかと迷っていると、カープレノが実験台になると申し出てきた。
そして、リンの魔法回復などを駆使しながら実験してみて分かったのは、最終的にはアナフィラキシーのような症状に見えた。
ミラツルの花の匂いのみにアナフィラキシー症状が出るようだ。
アナフィラキシーの対処は、その物に近付かないことが一番なのだと記憶の片隅にある。
学生時代、エピペンを持っている生徒がいるからとアナフィラキシー対処の為に何かの時間に少しだけ勉強させられた。
それを持っている生徒は、別のクラスのやつで実物のエピペンも見たことはない。
ただ学年担当のやつが、張り切ってアレルギー反応はどうのこうのと宣っていた。
あれも、一応の雑学として記憶されていたから、やつの張り切りも無駄ではなかったのかもしれない。
とは言っても、エピペンはこちらでは不可能。
だから、出来ることといったら近付かないこと、周りに教えることしか出来ない。
でも、エピペンがあっても結局はそれは同じなのだから、最終的にはこれでいい。

次にやったことは、ムシュー葉がなぜミラツルの葉と同じになるかという問題に移った。
いきおいで虫除けの葉に毒耐性の付加の薬剤をかけてみた。
すると、ミラツルの花の匂いとほぼ似たような匂いになることが判明。
匂いに詳しい被服師の合格を貰うまでものほぼ同じ匂いと判明。
ちなみに被服師は、デザイナー兼針子の総称。
被服師が作った服には、付加の効率も上げ下げも関わるなんやらかんやらがあって……。
最終的に薬服師がいくら腕が良くても、被服師の腕一つで左右される。
オヤジさんは、二刀流の被服薬服師。
マヒルナは、被服師一本、薬服は気が乗らないとのこと。
カープレノは、薬服と針子が得意で、デザインがイマイチ。
おかみさんは、被服のデザインは得意、だが針子と耐性付加の薬服が苦手で接客上手。
四人揃って、家族経営被服薬服店の最高峰の一角でもあったりする。
そんな被服薬服一家の被服一本と決めて極めていこうとしているマヒルナが同じと言ったら、同じなのだ。

でも今できることは、忠告のみ。
この時期には探索しないこと、毒耐性の付加時には虫除けの葉を近付けないようにと、注意した。
だが、被服師が作った服を薬服師が付加時に葉を混ざることは限りなくない。
たまたま買った虫除けの葉に、ミラツルの毒がかかっていた方が現実的。
ということで、匂いのある虫除けの葉は、研究を重ねてから実用化するように進言してみた。
マヒルナが匂いがあるといいと張り切っていたから。
いつかムシュー葉に匂いが付くことは間違いないだろう。
そして、商品名はムシュー葉にと思ったが、匂いが付いたまでも付けてしまうのは、あの商品に失礼かと思って、名前は進言しなかった。
でもどうしても言いたかっから、リンに言いまくっただけで我慢した。

服屋に寄っただけだったが、お見舞いでクンクンで、話聞いて、探索に蔓玉採取よりは強奪？そして実験に検証などと一日で終わるはずもなく、２日かかった。
おかげで久し振りの宿屋泊まり。
食事はマヒルナ絶賛のカープレノの料理を頂いた。
オヤジさんの症状をリンの魔法で治し、俺は少しでもあの匂いがするところを見つけては、イムリンに掃除させた。
最初、イムリンに掃除させる事を回復したしつつあるオヤジさんにも止められた。
我が家のイムリンは、クリーン技術もクリーニング店真っ青な洗濯乾燥技術も完備。
だが、普通のクリンスライムに、洗濯機能はない。
洗濯したいなら、個別にランドリスライムが必要。
でも、ランドリスライムは付いているものをゴミとして綺麗にしてしまう難点がある。
要は、ボタンや装飾、色まで取ってしまうというあと一歩二歩なスライムで需要は少ない。
だから、服や装飾品のある棚を掃除されては、モノがなくなると恐れられた。
我が家のイムリンの高性能を見せてしまえば、これならっと承諾してくれたりと一悶着もあったりと賑やかな二日間を過ごした。
そして、一通り終わって、茶を飲みながらの団らんに混ざっているとそれは起った。