俺は異世界召喚された『セイジョ』として。

田子タコ

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のんびり高速移動旅

091、白き者が泣く 1

サエランスから、次のエルランスに向けてひた走り数日。
目的の聖地手前でリンが呟いた。
「子供?」
「んっ?」
「向こうに子供がいる。ここは安全な場所だが、こんな時間に子供が一人でいるのはおかしい」
エルランスは、一番最初のキユランスのように街外れの公園内に聖地がある場所だ。
昼は憩いの場としても使われているからと、終刻の鐘が鳴り終わってから来てるから、今は現代的に言えば、21時過ぎ。
「まじ?なんか事件とか?無事?どっち?」
脳裏に過るのは、あっちで起きている事件の数々。
性的趣向が子供へと向く、頭のおかしなやつらがいる事実。
それを寛容し、認めていた昔がある地球。
海外だけではなく、日本だって例外ではない。
それに世紀まで変わったのに、未だに子供の内に嫁がされ、子供が子供を産む国もまだあるという情報などと頭をよぎる。
「こっちだ」

小走りに走っていると小さな泣き声が聞こえて、更に速度を早めた。
すると、月明かりの下、短めの銀髪のエルフが水溜まりの中心で膝を抱え泣いていた。
そのエルフが流した涙が溜まって出来たと言われたら、そうかっと納得してしまえるような絵図のような光景。
実際には水溜まりはないが、月明かりの絶妙な加減でそう見えた。
リンがランタンを敢えて取り出し、灯りを付けてから、エルフに近付く。
「大丈夫か?」
声をかけると、ビクリと肩が上がり、泣いていた泣き声が止まって、数秒の間の後、ゆっくりと顔をあげた。
髪色のイメージでエルフと思っていたが、耳は尖っておらずエルフではなかった。
だが、瞳の色が赤く、髪も白く、肌の色も白人の肌よりも白く、アルビノのようだと思った。
「こんな夜更けに一人かい?」
「あっ……」
そして、衣類や髪に乱れはないから、想像してしまった最悪な事態ではないと物凄く安堵した。
俺にそっちの趣味はないし、子供を子供と思わない様々なやり方は、嫌いな部類。
子供の時にうけたものは、消えないのだ、どうやっても。
リンが優しく声をかけると、少年とも少女とも言える性別不明な子供は、一度目を細めリンの顔を確認すると、目を見開き口をポカンと開けた。

実は、ヒムテヒヤ王国も過ぎ、次のエルドラスト王国に入った辺りで眼鏡が壊れた。
振動で眼鏡のネジでも緩んだのか、走ってる最中に落ちて、そのままカシャンっと壊れた。
眼鏡屋は大きめな街にしかないらしく、素顔晒しで、数多の視線を集めて、今に至る。

子供……中学生くらい、そんな年の離れた子さえも、悩殺してしまう、リンの造形美?にある意味呆れてしまった。
「……えっ?あっ、もうこんな暗く……どうしよう」
リンに見惚れてから、その辺りが暗いことに今になって気付き、泣き腫らしても赤みの少ない顔が驚きの表情に変わる。
「大丈夫かい?」
「あっ、えっと……大丈夫です」
「それ、大丈夫じゃないし」
数秒の間があった後に繰り出される『大丈夫』は、大抵が大丈夫ではないことをよく知っている。
「えっ……」
「なんで、こんなとこで泣いてたんだ?」
「っ……」
「俺らは通りがかりの旅人だ。話してもお前の知り合いの誰にも知られないぞ」
「コウ?」
「俺の勘が正しかったら、これは聞かなきゃいけないやつ」
頭のどこかで何か引っ掛かると、そう告げるとリンは頷いた。
「コウがそう言うならそうなんだろう。俺はリン、こっちはコウ、君の名を聞いてもいいかい?」
「…………」
俺の語尾が強すぎたのか、口を閉ざしてしまった。
「ごめんな。えーっと子供相手に急ぎすぎた。俺はコウってんだ。お前が泣いていたのって、その髪と目のせいじゃないか?」
町や村を歩いていても、こんなはっきりとアルビノだと思う人は見当たらなかった。
老人以外のここまで白い髪はいないし、銀髪エルフすら見たことない。
多分だが、こいつはアルビノなのだと勘が言う。
「っ、あっ、なんで?」
「何となく、なあ、こっちではそういうの何て言われんだ?俺、こっちに来たばかりで知らねー」
「……エルフではない、白き者……」
うわー、完全に陰湿な雰囲気ばりばりな別称。
白い顔が更に白くなった気がして、更にリンを見ると少し曇った表情。
すると、めちゃくちゃに入れてある脳内情報が嫌な情報を思い出させ、リンに小声で聞いた。
「リン、もしかして、こいつ呪術とかに使われたりする?」
俺の聞き方に、瞼をピクリと動かしたあと、頷いた。
「ないとは言えない。この国は比較的にない方だろうが……」
その言葉に、地球でも未だ問題視されている、とある風習が重なる。
「泣いてたのはなぜだ?」
「……あの、聞いちゃったんだ。次の誕生日来る前にどこかに売られるって」
止まっていた涙が、また一気に溢れ出し、頬を流れ落ちる。
「君、次で15歳になるのかい?」
コクリと頷く子供に、リンは呪術などで利用される可能性が高いと小声で伝えてきた。
脳内で情報がインターネットでも見てるかのように、昔、アルビノのことを調べたときの記憶がよみがえり、情報が溢れ出す。
アルビノ、遺伝子疾患、メラニン不生成、チロシナーゼ不活性などなど。
その時、右手が輝きだした。
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