俺は異世界召喚された『セイジョ』として。

田子タコ

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のんびり高速移動旅

124、テンプレ先の令嬢 4(二人)

さて、魔人の見解はちょい置きで、令嬢に紹介されたのが二人のフィアンセだということに戻ろう。

こちらの世界でも、伴侶は一人。
もし何らかの理由で子供が産まれなくても、こちらには卵があるから、王族であっても第二、三の伴侶なんてものはいらない。
昔は男女と言う考えはあったから、王族だけは男女とかもあったが、それも少くなり、今は自由恋愛優先。
隊長のとこのような田舎にはまだ残っているが、それも親世代やその前の世代が言っていることが多く、適齢期の年齢層は寛容になってる。
それも政略結婚では、何故か妊娠にくいし、卵なんて出てこない。
小賢しい庶民が、貴族を上手く誑したりといった特殊な状況下でも、妊娠しにくく、卵は出てこないらしい。
番的な要素とも思えるが、それがこの世界の根本。
そんな中でも、妾とか愛人とかを何人も囲う、ハーレム状態を好む馬鹿はいるにはいるが、そういうのに限って、何かしらの不幸が付き纏うから、それこそレア中のレアのマイノリティ。
というのを前に聞いたから、二人のフィアンセという目の前の状況に違和感しかない。

俺が椅子に座り、リンから受け取っていたカップをテーブルに置くと、令嬢が切り出した。
「少し気味が悪いかもしれないけれど、見てもらえるかしら。二人共片方しかないから」
「よく分からないけど、分かった」
すると二人はほぼ同時にベールを脱いだ。
「おっ!えっ?…………んっ?まさかっ」
二人共、片方しか顔がない、半分のっぺらぼう。
しかも左右違えど、同じ顔。
この、のっぺらぼうの所をさくっと切って、くっつけたら一人になりそうと考えて、令嬢を見ると少し目を見開いていた。
「だから言ったろ。コウは、大丈夫だと」
緊張していたのか、一度息を吐いた令嬢は立ち上がると、二人の間に入り、二人の肩に手を置いた。
「そのようね。改めて紹介するわ。私のフィアンセ、アティモアよ。この二人は本来、一人だったの……」

令嬢曰く、今から8年前。
令嬢は、学問塾を卒業してすぐに領主代行となった。
アティモアから、しっかりとした地盤を作るまで婚約はしても結婚は先延ばしに、との言葉に従い、実績を積んでいた。
3年後には先代から領主権を渡され、領主となり、それでも若造と侮る輩を相手に試行錯誤を繰り返すこと2年。
地盤も固まり、もうそろそろ結婚と考えていた矢先、事件は起きた。
小賢しく動き回っていた相手を断罪し、後処理に奔走している間に、アティモアを誘拐された。
そして、次に会えた時にはもう二人になっていた。
「首謀者達はある魔人と契約して、アティモアを誘拐させていたの。けど、それだけでなく、その魔人はアティモアを………」
奥歯を噛み締める令嬢を、二人のアティモアは、2つの顔のある方の手で優しく包む。

俺は、知識として知っていたので、魔人のあれこれを話そうとした令嬢を止めた。
「そう、知っているのね。………アティモアを二人にした魔人は、独自に魔法具を作り出して、長睡眠を長期に渡り抑え込むことに成功したようなの。私達がアティモアを取り返しに行った時に魔法具を壊して、強制的に長睡眠に入った。それから3年超えてもまだ長睡眠から起きない。早く起きて、アティモアを元に戻して欲しいのにずっと」
2つの半分の顔が、令嬢を優しく見ている。
確かに初めてこれを見たら怖いかもだけど、縦半分に切り裂かれたゾンビとか遺体とか、グロ映画でよく見てきたので、これは怖いものとは認識しない。
まあ、朝起きて目の前にいたら、ギャーッとはやりそうだが。
「そろそろ起きそう?」
「起きてもらわないと、3年も寝ているなんて聞いたことがないわ。いつ起きてもすぐに知らせれるように常時三人で監視に当たらせているし、魔法具も何個も。……長睡眠から起こそうと本当に色んな手を使ったわ。でも……起きないの」
「ちなみにそいつはどこにいんの?話の状況からして床にゴロンのまま?」
「ゴロンは、寝ているということだ。床に寝たままなのか?」
オノマトペ博士と化しているリンが、令嬢が疑問符を掲げる前に一言付け加える。
「ああ、そういうことね。……触れないことも知っているのね。その魔人は……」
令嬢が悔しそうに唇を噛みだしたのを、アティモアが2つの手で優しく止め、令嬢がありがとうっと礼を言っている。
「……魔人は、私の屋敷にいるわ。ちゃんとベッドに寝て。……魔法具を壊す直前にベッドにきちんと寝て、しかも……長睡眠に入る好きな所に運べと書き置きを残して……」
「ベッドなら運べるのか!盲点だった!」
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