俺は異世界召喚された『セイジョ』として。

田子タコ

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のんびり高速移動旅

141、セイランス出たらトロ

「クエントが卵妊娠?!卵が腹んなか?!しかもドラゴンに戻って戻れない?!まじかよ!なぁ、リン!クエントがなんかスゲーよ!腹ん中に卵出来て、ドラゴン戻ったって!あと、ジララの家族でダンジョン周辺に武器屋とか作るとか?!すげっすげっ!リン、なんかすげっ、でな、でなっ……!」
手紙を振り回しながら話すコウタは、我が事のように嬉しそうにしていることに気が付いていない。
そんなコウタを微笑ましく見ながら、リンが羽リスに器に入れた水を差し出した。

セイランスを出てラウに跨がろうとしたコウの前に、手紙を手にした羽リスが現れた。
宛名に、『コウタへ』と『ジララ』の名前が自動翻訳されたので、ラウには乗らずに手紙を貰って封を切り、この状況。

「そうか、良かったな」
「あと、ソイツ、クエントんちのペタじゃなくて……」
「レタクレーブな」
「それ!名前はーっ……えーっと、と、『とぷろく』で『とろ』だって!これでとろ?食べるとこないし」
笑っているコウタの声に、ペタに似ているが模様や顔がちょっと違う羽リスが、挨拶するかのようにぴっと背筋を立てた。
「よろしくな。コウ、どぶろくの言葉を変えたのは分かるが、とろって食べ物なのか?」
「えっ、こっちには鮪いないの?えー海鮮の楽しみが減るじゃん!」
「マグロは分からないが、海側の海鮮は豊富だ。俺はブルフィンツナのスパファティが一番好きだな」
聞いたことあるツナのフレーズに、和英辞書でまぐろとポチるとツナと出た。
その下にご丁寧に、クロマグロ bluefin tuna、びんちょうまぐろ……と載っている。
大西洋クロマグロとか、大西洋がないここには意味のないやつまで完備。
そりゃあっちのアプリだからしゃーねぇが、スマホにおいっとツッコみたくなった。
「……それガッツリ、黒鮪のことだし。なーんでそこで英語使うんだろ、鮪は鮪でいいじゃん!変なとこで英語使うのなしにしようぜーぞうさんよー」
創造神は、長ったるいからとぞうさんと呼んでいる。
そうさんは、会社にそうさんと呼ばれている人がいたし、神さんはありきたりだしと、なら『ぞうさん』と呼ぶことにした。
♪ぞーうさん、ぞーうさん、こぉーこを作ぅちゃったのね、そーよ、わらわも作ぅちゃったのよ~♪
何時だか、ふっとぞうさんの替歌を歌ったら、リンが固まっていたので、それ以来封印案件だ。
ちなみにぞうさん呼びは了承してもらった。

「んっ?ブルーフィンツナがクロ?マグロなら、もしかしてトロがスパファティのことだったりするのか?」
「あーんとな、鮪も種類があって、一番ポピュラーっ……一般的に知られてるのが黒鮪でそれがブルーフィンツナ。トロ?えーっと…………」
スマホ辞書で検索するとスパファティでは出なくて、トロを英語にしたら出てきた。
「大当たりー!正確には、ファ、ファティー?……ファティーでいいのか。ファティーがトロ。ミッディ、ア、ム?……中トロはミディアムファティー。大トロは……ファ、シ、スト?ポーション?なんだこれ?ファティーどこ行った?英語とかマジで苦手なのに使うなよ~。でも、スパファティって、スーパーファティーのことじゃね?その方が俺的には良さげ」
「なるほど、こちらのブルフィンツナには、ブルフィンツナ、ファティ、ミドファティ、スパファティの段階がある。その段階は同じなようだ。今度、知り合いがやってる海鮮屋に連れて行くよ。その大トロが凄く美味しい店なんだ」
「おおー、そこは段階ありなん!最高!なら、そこで大トロ買って、アイツに送ってやろうぜ!妊娠?卵出来た祝いで!」
「大トロをお祝いに送るのか?確か妊娠祝いで海鮮は送らないほうがよい食材だ。それに祝い事に食べ物は送るのは良くないよ」
妊娠中、出産後は生食ものは、体に良くないとリンが教えてくれたが、相手はドラゴンだから今回は関係なさそうだが……。
「んっ?でもお祝いも食べ物ダメ?だって、ジンケットって鮮度保つだろ。送っても支障ねえじゃん、クール宅急便だけでなくて、ホット宅急便も出来んのに勿体ねぇ。俺らのとこは祝いとかでも普通に送ってるし」
首を傾げているコウタに、祝い時は時期が過ぎても会って言葉を交わすことが重要、と教えられてきたリンの常識が崩されていく。
「利便性の追求……いや、時期ズレを厭うのか……。確かに手紙だけで数年後に祝いの品を持って会うこともあるからな。そうだな、贈ることもいいかもしれないな」
「そう?あり?……まあ、まずは行こうぜ、ここはセイランスだっけ?次は、どこ?お前は……ちょっとここで休んでけ、イムリン落とさないようにな……それそれっ」
手紙をジンケットにしまい。ラウ達に跨る。
イムリンはすぐさま形を変え、ペタとトロの寝床に。
出発準備は整ったコウタは寝姿勢に入る二匹を指差し。
「見ろよ、これがトロならっ、食うとこねぇだろ」
リンは変形したイム巣を見て苦笑すると、次の聖地を思い出した。
「たしかにないな。……次は、イヤランスだ」
「イヤーなことあったりして」
「言うと思ったよ」
それにニヤリと笑み、二人は次のイヤランスを目指した。
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