グラドル戦隊グラドルレンジャーズ

青キング

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第二話 ストッキングが盗まれた。破廉恥!百足怪人ムカデラス

出現予測

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 それから二日後のこと、またしてもストッキングのみが製造所の倉庫から盗み出されたという事件が発生した。

 都内ではどこのランジェリーショップでも、女性用のストッキングが入荷できない状態になり、被害は全国に報道されるまでに拡大した。

  

 同日、午後七時。グラドルレンジャーの五人は急遽司令官の木田にに招集をかけられ、ネックレスで共通回線を開いた。

 それぞれ全く違う場所にいる五人が、回線に集まった。

(シキヨクマーの動向を掴んだ)

 司令官は前置きも説明もなく言った。

(はあ、唐突になんの話だ?)

 栗山は木田の説明不足を咎めるような口ぶりで訊いた。

(君たちは、先日から発生している、ストッキングの品薄については、存じているな)

(はい、存じています)

 西之森は真面目に応答した。

(私も知ってるよ)

(知ってます)

(ええ、承知してますわ)

 楠手、上司、新城も頷いた。

(ブルーはどうだね?)

 一人うんともすんとも言わない栗山に、司令官は水を向ける。

(もちろん、存じているだろうね)

(ああ、わかってるよ)

 億劫そうに答える。

 全員理解しているうえで話をしよう、と木田の声音が引き締まる。

 話し出そうとした寸前、上司が遠慮気味に訊く。

(あの、話って後じゃいけませんか?)

(なぜだ?)

(いま、マネージャーさんと大事な話をしてて、すぐに戻りたいんです)

(何分くらいかかりそうだね?)

(あと、三十分くらいです)

(我慢してくれたまえ、君らは世界の平和をまも……)

(あの、私もあとにして欲しい)

 司令官の台詞の途中で、楠手が上司と同様に申し出る。

(なぜだ?)

(入浴中だから)

(私も後にしてもらってよろしい?)

 新城も次いで願い出た。

 先延ばし希望者が続出して、木田は質すように問う。

(なぜだ?)

(夕食を摂ろうとしていたところなのよ)

 木田は呆れ果てて、深く長い溜息を吐いた。

(勝手にしろ、三十分後に再び招集をかける)

 そう言い置いて、回線は閉じられた。

 レンジャーの五人はそれぞれ次の呼び出しまでの時間を過ごし、七時三十分ぴったりに再び共同回線を五人は展開した。

(これ以上先延ばす奴はいないな?)

 もっと時間を遅らせてほしいやつは前もって報告しろ、とでも言うような口ぶりだ

 五人の誰も後にしてほしい旨は言い出さなかった。

 ごほん、と咳ばらいをすると木田は声の調子を

(お前らさ、ヒーローの自覚あんの?)

 咎める口調できつく問い詰めた。

 五人は反駁せず、じっと説教を聞く。

(ヒーローは遊びじゃないんだよ! れっきとした給料の出る仕事だよ。それをさ私用を優先して、会合を遅らすなんて、社会人の礼法もなっとらん。今回は許すが、次からは減俸だと思え)

 ひとくさり説教を垂れると、木田はふうと一息、感情を抑えるように吐き出す。

(それで招集をかけた理由だが……)

(ストッキングの品薄が関係しているんですよね?)

 西之森が先んじて尋ねる。

(そうだ。そのストッキングの品薄はシキヨクマーの仕業だ)

(なぜです?)

(シキヨクマーは不定期に靴下工場の倉庫からストッキングのみを盗み出しているのだ。それが原因で店舗にストッキングが出荷されないのだ)

(だから品薄になっていると)

(そういうことだ)

 物わかりのいい西之森はしきりに頷いて対話している。楠手が木田に問いかける。

(それで私達は何をすればいいんです?)

(怪人を倒してもらいたい)

(うえ、またこの前みたいな変態怪人と戦わないといけないんですか)

(汚らわしいなんて言うなよ、我だって口にしないよう気を付けているのに)

(あんたも思ってのかよ)

 栗山が恥ずかしそうに吐露した木田を、面白がって噴き出した。

(でも怪人を倒すと言っても、ターゲットの怪人がどこにいるかわからないんじゃ手も出せないよ)

 楠手の指摘に、うむと木田は頷く代わりに言って、

(出現する場所は把握できている。今回は二手に分かれて行動してもらう)

(何故です?)

(候補が二カ所あるからだ)

(二手に分かれるなんて、面倒じゃねーかよ。木田のオジサンよぉ)

 栗山はすぐさま不平を漏らした。誰がオジサンだ、と声を荒げて言い返してから、候補二カ所を告げる。

(丸山靴下工房とローズソックスの二社だ)

(その二社のどちらかに怪人が現れると?)

(そうだ。今宵未明に、どちらか一方を襲撃するだろう。君たち五人は、二手に分かれて、会社の外で待ち伏せして、怪人を倒してもらいたい)

(どういうグループにしたらいいんですか?)

(その辺は君たち五人で相談し合って決めるんだ)

 そう言って、木田は回線を閉じた。共通回線にはレンジャー五人だけが残された。

 五人は回線上で話し合い、誰がどちらで待ち伏せするか配役した。



 丸山靴下工房は昭和初期に創立された老舗の靴下販売店で、東京郊外に生産工場を構えている。

 周辺住民も寝静まった深夜一時、丸山靴下工房の正門から道を挟んで反対側にある空き地の藪から、イエロー、パープル、グリーンの三人は工場の正門見張っていた。正門は淡い門灯に照らされて夜でも人の出入りを把握できる。

「怪人はいつ来るんでしょうか?」

 イエローが待ちくたびれたように膝に目を落として言った。それもそのはず、彼女たちは社員全員が帰路についた午後八時から、藪に潜んで監視を続けている。

「怪人を工場の外で待ち伏せる指令だからね、こうしてるしかないね」

 グリーンは退屈した風を微かにも見せず答えた。

 パープルが肩を両腕で抱いてぶるぶると震わせる。彼女の二の腕には鳥肌が立っている。

「水着一枚は寒いわ。怪人が来てくれないと風邪ひいちゃうわ」

「私も寒いです。防寒具の一つでも取りに行くべきでした」

 イエローはレンジャーの格好そのままで、見張り場所に赴いてきたことを後悔する。

 静寂した工場内に守衛以外の人影が動くことはなく、時折イエローとパープルが駄弁を交わして数十分が経過した。

「しっ!」

 急にグリーンが唇に人差し指を当てて、二人に音を立てないよう厳禁した。

 イエローとパープルはいつでも出ていける構えに体勢を変える。

「怪人、出ましたか?」

「いえ、でも男が一人門に近づいているわ」

 グリーンは左方から現れた男に注視する。男は上下黒の服装にワイドサイズのマスクを付けており、きょどきょどと周囲を見回して、三人の潜む藪の前を通り過ぎようとしていた。

 しかし男は門の前まで来て、足を止めた。入念に辺りに目を配ってから、門の格子に手をかけ昇り始めた。

「あの男!」

 グリーンは叫んで立ち上がり、門を昇ろうとする男に駆け寄った。

 背後から突然響いた大きな声にぎょっとして、男は格子に掴まったまま動きが固まった。

「あんた、何しようとしてるの?」

 男の背後に立ってグリーンは高圧的に詰問した。

 男は格子に掴まったまま何も言わず、頭を垂れる。

 不審者の背中を睨みつけて立つグリーンの左右に、イエローとパープルが遅れて藪から出てきて並んだ。

「あの男の人が怪人ですか?」

 イエローが訊くと、グリーンはまだわからないと返す。

「不法侵入はいけませんよ」

 言い諭すようにパープルは不審者の男に声をかけた。

 彼女の優しい声に男は振り向いた。三人の姿を目に入れてあきらかに驚く。

「み、みずぎ……?」

 優れた容姿のグラドル三人が、揃ってワンピース水着で路上に立っているのである。男でなかろうと驚いて当然だ。

 男が信じがたい状況におどおどし始めたのを見て、疑義をかけている西之森は目を眇めて見つめる。

「言い訳しようたって無駄よ。こっちはちゃんと見てたからね」

 罪を認めない訳にはゆかず、男はすごすごと門から下りた。

「なんでこんなことしたの?」

 西之森は男に訊いた。

「テレビニュースで事件を観まして」

「ストッキング盗難の?」

「はい」

 悄然とした声のトーンで男は頷く。

「つまりは模倣犯ということ?」

「そんな感じです」

「そうでしたか。ならばあなたはこれまでの事件とは、無関係ということかしら?」

「はい」

 男の受け答える様子を見ていて西之森は、彼が普段は実直に生きている全うな人物であるのを感じ取った。

 日頃閉じ込めている欲情が事件に触発されて今回の挙に出ちゃったのかな、と男の心の奥まで推察する。

 彼を見逃してあげようか否か迷っていると、西之森を含めレンジャー三人のネックレスが微振動した。

「ちょっとごめんね」

 男に背を向けて、西之森はネックレスを耳に寄せる。

 短いノイズの後、緊張したレッドの声が聞こえだす。

(怪人が出たわ、早くこっちに来て)

 レッドとブルーが張り込みをしているローズソックスの工場内で、事件の犯人であるシキヨクマーの怪人が出現したようだ。

 イエローとパープルもレッドからの報告を聞いていて、三人は顔を向けあい頷く。

 丸山靴下工房からローズソックスまでは約十五キロ、鉄道路線で二駅離れているが、彼女らグラドルレンジャーには仲間の傍へと瞬間移動できる能力を持っている。

 三人は走り出して工場の塀を曲がって、その場から姿を消した。

 角を曲がって闇夜に消えた三人を、男はまやかしであったかの如く真実味の感じられない目で眺める。

 三人の美貌も相まって男は夢でも見ていたんじゃないかと朧気に思い始め、放心状態で自宅へ引き返した。
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