翡翠の記憶 ~Nephrite to Earth~

中島しのぶ

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第十二話 セイロン島での再会と挑戦

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 ボブたち四人はセイロン島の荒廃した海岸に到着し、島の中央に向かった。

 そしてそびえるエレベーターの姿を目にして、彼は確信した。ここが、キャロルが話していた西方だ。
 エレベーターのケーブルが空に伸びる姿が、遠くからでもはっきりと見えた。ボブは義体の視覚でその構造を捉え、かつてガイアで見た設計図が脳裏をよぎった。風が砂を巻き上げ、彼の足元に微かな音を立てた。

 エレベーターの基部には、翠とデイビッドが既に立っていた。
 翠がボブを見つけ、声を上げた。
「ボブ! 無事だったんだね! よかった!」
「ああ、俺もやっとたどり着いたよ。みんなが無事で何よりだ」
 ボブは微笑み、二人に近づいた。

 翠の声が風に乗り、ボブの耳に届いた。彼は彼女の義体を見つめ、ガイアでの彼女の姿を思い出した。デイビッドが隣に立ち、彼の灰色の瞳がボブを捉えた。ボブは一瞬、軍時代に戦った仲間を重ね合わせた。

 キャロルから聞いた話を思い出し、ボブは少し警戒したがデイビッドに向き直り握手を交わした。
「デイビッドか。キャロルから聞いてるが、俺たちは同じ目的のためだ。協力しよう」
 デイビッドもうなずき、「オレも同じ気持ちだ。地球再生はオレたち全員の目標だ」と答えた。
 握手が交わされ、義体同士の接触が微かな振動を生んだ。ボブは彼の瞳に過去の影を見たが、今は仲間として受け入れた。

 ボブは早速、生存者たちに向き合った。
 彼らは依然として警戒心を解かず、エレベーターの周辺にたむろしていた。
「皆さん、聞いてください。俺たちは地球を再生するためにここに来た。このエレベーターで上に上がり、ECOSをリブートする。マーカスはエレベーターの修理を補佐し、シェリルは皆さんの健康を守り、ジャレッドはERISの動きを監視する。信じてくれ、共に未来を切り開こう」
 その言葉には力があり、生存者たちの間に徐々に納得の色が広がった。

 ボブの声が風に乗り、生存者たちの耳に届いた。彼らの疲れた顔に、わずかな希望が灯った。母親が子供を抱き締め、男が武器を下ろす姿が目に入った。ボブは彼らの目を見て、ガイアでの住民を守った記憶が蘇った。

「さて、修理だな」ボブはエレベーターの基部を調査し始めた。
 コロニー墜落の影響で、エレベーターは機能不全におちいっていた。昇降ケーブルは部分的に切れ、動力システムは停止していた。
 ボブは基部の制御パネルに近づき、義体の手で埃を払った。ケーブルが風に揺れ、金属の軋む音が静かに響いた。ガイアの崩壊が、このエレベーターにも爪痕を残していた。

 ガイアでの経験を活かそう。ボブはそう自分に言い聞かせ、作業を開始。デイビッドと協力し、ケーブルの交換や動力システムの再接続に取り掛かる。
 翠は周囲を警戒しつつ、自分の記憶をさらに探り、コードの断片を思い出そうとしていた。
 ボブは工具を手にケーブルを固定し、デイビッドが配線を調整した。翠は基部の陰に立ち、風に髪を揺らしながら目を閉じた。彼女の義体が微かに震え、記憶の霧が動き始めた。

 ボブが連れてきた三人が、生存者たちの世話を始めた。
 防護服を身にまとった彼らは、同じガイアからの脱出者としてすぐに打ち解け、生存者たちの健康管理や食料の分配を手伝った。
 マーカスが工具を手に基部に近づき、シェリルが子供に水を渡し、ジャレッドが通信機を調整する姿が、ボブの目に映った。彼らの動きは、ガイアでの訓練を思い起こさせた。
 ジャレッド、マーカスの手を借り、時間が刻一刻と過ぎる中、ボブは制御パネルの前で汗を流していた。

「このエレベーター、ガイアのシステムと似てる。俺なら直せるはずだ」
 デイビッドが助けに入り、「制御回路にERISの干渉の痕跡がある。早くしないと何か企むかもしれない」と警告した。
「了解した。バックアップ電源を起動するぞ。アキラ、準備はいいか?」

 ボブの声が響き、翠が頷いた。パネルの電子音が静かに鳴り、基部が微かに振動した。
 翠はうなずき、「はい。コードを思い出すために、もう少し時間が必要。でも、ERISに先を越される前に、何としてもECOSをリブートします」と答えた。

 ボブはホログラムの制御パネルに手を伸ばし、慎重に操作し始めた。
 一つずつ成功するごとに、ホログラムディスプレイには『初期化中』『エラーチェック』『再接続』のメッセージが高速で浮かび上がる。
 ボブはパネルのデータを凝視し、ガイアでの経験を頼りに操作を続けた。ディスプレイの光が彼の顔を照らし、汗が額を伝った。
 最後に、『再起動』を押した。

 ディスプレイ上で数字や警告が流れ、最後に『バックアップ電源起動』の文字が浮かび上がった。
 基部が低く唸り、動力システムが動き出す音が響いた。ボブは息を吐き、成功を確信した。
「クラーク・ステーションまで約三十分で到達する。アキラ、コードを思い出す時間はその間しかない」とボブが説明した。
 彼の声が静かに響き、翠に届いた。彼女は目を閉じ、記憶の深層に潜る準備を整えた。

 これで、ステーションまで上がれる。だが、時間がない。ERISが動き出す前に、アキラを上に送り込むんだ――ボブはそう思いながら次にカプセルの修理作業を急いだ。
 カプセルの扉を開け、内部の配線を点検した。ガイアでのカプセル管理の記憶が、彼の手を導いた。
 エレベーターのカプセルがゆっくりと動き始め、ボブはその動きを確認。
 デイビッドが最後の点検を行い、翠、ボブ、デイビッドの三人はエレベーターカプセルに乗り込んだ。
 カプセル内部は狭く、義体の三人が肩を寄せ合う形で収まった。扉が閉まり、低い振動が足元に伝わった。
「これからが勝負だ。アキラ、頼む」とボブは言い、翠に伝える。彼女は深呼吸し、決意を固めた。

 そして地上に残る三人にも声をかける。
「マーカス、シェリル、ジャレッド。支援を頼んだ」
 ボブの声がカプセル内に響き、外にいる三人が頷くのが見えた。彼らの姿が基部に佇み、風に揺れていた。
 エレベーターが上昇し始めると、三人はそれぞれの役割を果たすべく動き出した。翠はコードの記憶を探るため瞑想を始め、ボブとデイビッドはヨーロッパにいるキャロルと協力しながら、ERISと対抗する準備を始めた。

 翠は目を閉じ、ガイアの記憶に潜った。ボブはカプセルのモニターを監視し、デイビッドが通信機を調整した。カプセルが上昇するにつれ、風の音が遠ざかり、静寂が三人を包んだ。
 マーカスは地上からのバックアップとしてエレベーターのシステムを監視。
 シェリルは生存者の治療や健康管理に専念。
 ジャレッドはキャロルとの通信を確保しつつ、ERISの動きを監視。
 地上では、マーカスが工具を手に基部を調整し、シェリルが子供に包帯を巻き、ジャレッドが通信機のノイズを調整する姿が続いた。
 残った三人は、エレベーターに乗り込んだ三人の支援をしつつ、生存者の生活を守ることに全力を尽くした。
 彼らの動きが基部で続き、生存者たちの間に秩序が生まれ始めた。ボブはカプセルからその姿を見下ろし、彼らの力を信じた。
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