灼炎の転生魔女〜いじめられて自殺した私、異世界で炎の魔女の娘に転生しましたが、今度こそ強く生き抜きます!〜

銀鏡。

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七章 ガロウの雷鳴

640.蒼穹の雷霆

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 金の光がゆっくりと収まっていく。
リゼの周囲を包んでいた雷はやがて消え、静寂の中に柔らかな余韻だけを残した。

「・・・久しぶりね、セリエナ」

その声は静かで、それでいて凛としていた。
母はわずかに目を細め、微笑を浮かべた。

「ええ。もう10年以上ぶりね、こうしてあなたに会うのは」

 空気が少しだけ緩む。
リゼが結界の縁に手を伸ばし、淡く光を散らせると、そこに金色の門が開いた。

「中へ入りなさい。ここでは話しにくいでしょう」
母は短く頷き、私たちに目配せした。

私、ノエル、サラの順に、慎重に結界の中へ足を踏み入れる。
一歩進んだだけで、空気の密度が変わるのがわかる。
外の空よりも重く、けれど温かい――雷の魔力が、絶えず町全体を包み込んでいる。

 アウリンの内部は、想像とは違っていた。
焼け焦げた家々の中に、修復の跡が見える。
通りには人影がまばらにあり、皆が青白い光の結晶を抱えて何かの作業をしていた。

「・・・生きてるんですね、ここの人たちは」

ノエルの声に、リゼがわずかに目を向ける。
「ええ。私の結界がなければ、とうにこの町は消えていたでしょうね」

 その言葉には、どこか疲労の色があった。
リゼは『蒼穹そうきゅう雷霆らいてい』とも呼ばれており、この世界の雷魔法使いの頂点とされている。
そんな彼女が、こんな表情をするとは思わなかった。

「リゼ・・・この結界、あなた一人で?」

母の問いに、リゼは小さく頷いた。
「北からの攻撃を防ぎ、民を守るにはこれしかなかったの。代償は小さくないけどね」

 彼女はそう言って、右手を胸元に当てた。
そこには、うっすらと焦げた痕が残っている。
何となくわかった・・・雷の魔力が、彼女自身を蝕んでいるのだと。

「だから、あなたたちを呼んだのよ」
その言葉に、母を目を見開いた。

「呼んだ?・・・ああ、『運命の蒼盤』を使ったのね」

「さすが、察しがいいこと」

運命の蒼盤、というのは聞いたことがある。
その名の通り、人の運命を操作できる魔法道具・・・なのだが、使いこなすには高い魔力と優れた技術が必要で、一般的にはまず使われない。
そんなものを使うあたり、さすがは大魔女だ。

「私たちに何の用?・・・いや、私たちもあなたに用があるんだけど」
ふっと目を伏せた。

「それはよかった。とにかく、話したいことはたくさんある」

 リゼは背を向け、歩き出した。
その背中を追うように、私たちは彼女の後に続く。

結界の中を進むうち、崩れた石畳の隙間から微かに雷光が漏れているのが見えた。
まるで、町そのものが彼女の魔力と一体化しているかのようだった。



 やがて辿り着いたのは、中央の塔――アウリンの心臓部と呼ばれる場所。
その最上階のバルコニーからは、灰色の空と遠い地平が見えた。

「改めて・・・ようこそ、アウリンへ」

振り返ったリゼが、微笑む。
けれどその笑みの奥には、深い憂いが滲んでいた。

「そして・・・アリア・ベルナード。このことは、あなたにも聞いてほしい」

 雷鳴が、遠くで低く響いた。
その音は、これから始まる何かを予告するかのように、ゆっくりと空を震わせていた。

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