灼炎の転生魔女〜いじめられて自殺した私、異世界で炎の魔女の娘に転生しましたが、今度こそ強く生き抜きます!〜

銀鏡。

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七章 ガロウの雷鳴

764.善意という裏切り

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 革命の準備が始まって、4日目。

表向きには、ペドラの街は落ち着いていた。
集まった人々は、表立って武器を振り回すこともなく、それぞれが平穏に生活する者の顔に戻っている。

――けれど、水面下では確実に何かが動いていた。

 食糧の分配。夜間の見張り。連絡役の配置。崩壊した街の復興。
どれも、慎重すぎるほど慎重に進めていたはずだった。

「・・・妙だな」
小さく呟いたのは、元兵士の一人だった。
彼は、周囲を気にしながら声を落とす。

「向こうの動きが、静かすぎる気がする」

「と、言いますと?」

「このところ、他の都市に税の取り立てが来たという話を聞かない。今までのカイルのやり方からして、一箇所がダメならすぐ別の場所に手を回す・・・ってやり方をするはずなんだが」

その違和感は、私の胸にも引っかかっていた。
今までは、確信を持てずにいたが。

 革命に限らず、大きな謀反や陰謀の企てはどこかで漏れる可能性が高い。
それは、歴史の中で何度も証明されてきたことだ。
でもそれは、味方の中に裏切り者がいるからとは限らない。

「誰かが外に連絡して、そこから結果的に情報が漏れたのかもしれない」
そう言った瞬間、周囲の空気が一段冷えた。

「裏切り者がいるって言いたいのか?」
「誰だ、そんなことするやつは!」

怒りが、すぐに誰かを探し始める。
けれど私は、首を振った。

「いいえ、違います」
言葉を選びながら続ける。

「悪意とは限りません。むしろ、善意の可能性の方が高いかと」

 皆が、私を見る。

「誰かが、外に助けを求めたんだと思います。『このままじゃ戦争になる』『誰か止めてほしい』って」

それで、別の都市に連絡した。
おそらく、まだまともだと思っている誰かのいる都市に。

「・・・その情報が、回り回って上層部に届いたんです。きっと」
誰かが、歯を噛みしめる音がした。

「・・・そんなの、裏切りじゃないか」
「いいえ」
私ははっきり言った。

「それは、むしろ普通の人の行動です」

 もちろん、全員の意見としては革命を起こすことで一致した。しかし、厳密には革命を望む者だけがこの街にいるわけではない。

戦いたくない人。ただ守ってほしい人。
誰か偉い人が、なんとかしてくれると信じている人。
そのような人たちが、この街にもいる。
そのことを、私たちは都合よく忘れかけていた。

「革命は、すべての国民の願いじゃない。だからこそ、どこかで情報が漏れるのは当然なんです」




 その日の夜。
突然、リゼが私を呼び止めた。

「もう、向こうは動いてる」
低い声だった。

「この辺じゃないんだけど、都市を見回る兵士の数が増えてるって報告があった。少なくとも、普通の様子見じゃないそうよ」

 私は、静かに息を吐いた。
「まだ、革命を起こしてはいないですけど・・・始まりましたね」

「ええ。そして、これからは――」
リゼは、一瞬だけ言葉を切る。

「敵と戦う前に、味方を選ばなきゃならない」
その言葉が、胸に刺さった。




 その夜、私は眠れなかった。
誰が密告したのかを、探そうとは思わない。
探した瞬間に、この集団は壊れるからだ。

けれど、わかったことがある。
革命は、剣や魔法の戦いじゃない。
敵より先に、“味方を選別する”戦いだ。
覚悟のある者。引き返せなくなっている者。それでも、最後まで残る者。

 そして・・・守られるだけでいい人は、ここから先に進ませてはいけない。
それは、冷酷な判断だ。
でも、遅かれ早かれ、誰かが下さなければならない。

その役目が自分たちに近づいていることを、私はもう否定できなかった。
革命は、血が流れる前から始まっている。
そして最初に壊れるのは、いつだって――
人の「善意」なのだ。
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