灼炎の転生魔女〜いじめられて自殺した私、異世界で炎の魔女の娘に転生しましたが、今度こそ強く生き抜きます!〜

銀鏡。

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四章 ミフィアの青と水音

255.監視の魔網

 翌朝──
私は、宿の食堂で温かいスープを口に運びながら、静かに切り出した。

「・・・昨日の夜、夢に“何か”が入り込んできました」

その場にいた全員が、ピタリと動きを止める。

 女王はスプーンを置き、落ち着いた声で言った。

「・・・詳しく、聞かせてもらえますか」

「はい」


 私は、あの夢の中で見た光景──
水のように歪んだ闇と、輪郭の定まらない“影”、そして、“見つけた”“大魔女たち”と囁かれた言葉──
それらを、ありのままに話した。

「・・・間違いなく、意志を持った何かが、私の夢に干渉してきたんです」

話し終えた私を、女王とシェル、そして母がそれぞれ真剣なまなざしで見つめていた。

「やはり」

 女王が低く呟いた。

「女王も・・・何か感じたんですか?」

「ええ。夜中に、感じたのです。ちょうど昨日の噴水のあたりから、異様に強い魔力の気配が広がっていたのを」

 シェルも頷く。

「私も、似たような体験をしたわ。夜中、ふと目が覚めたときに、うっすらと──意識に魔力が引っかかるような感覚がしたの」

彼女は、ふっと一息ついて続けた。

「アリアさんもそんな体験をしたのなら、あの場所には・・・夢を通じて干渉できるほど、強力な魔力を持った存在が潜んでいるんじゃないかしら」

 母も、真剣な表情で口を開いた。

「私は・・・夢は見てないけど、魔力の“網”のようなものが張られているのは感じたわ。昨日の昼間と違って、はっきりした魔力の形を捉えられた。あくまでも可能性だけど、私たちが近づくほど、気配が強まっているんじゃないかしら」

「・・・やっぱり、あの噴水には何かある」

私が言うと、女王は静かに頷いた。

「ええ。もはや、疑う余地はないでしょう」

私たちは顔を見合わせ、同じ思いを共有していた。

 ──あの噴水には、確かに何かがある。
それも、“魔寄せの石“だけではない。明確な意思を持ち、こちらを警戒し、あるいは誘い出そうとしている──何かが。

私たちは、改めて覚悟を決めた。


 朝食を終えた私たちは、宿の一室に集まっていた。
女王が椅子に腰かけ、静かに周囲を見渡す。

「──まずは、現状を整理しましょう」

その言葉に、私たちは姿勢を正した。

「アリアさんは、夢の中で“何か”と接触した。そして私たち三人も、あの噴水周辺から強い魔力の異常を感知した」

 女王が淡々と言う。
それに、シェルが頷いて続けた。

「町全体に、魔力の“網”のようなものが張り巡らされているわ。恐らく、あの噴水を起点にして・・・」

「その魔力網が、町中のどこにでも干渉できる手段になってるのね」

母、セリエナが短く言った。

「・・・だから、アリアさんの夢にも“入ってこられた”」

 サラがぽつりと呟く。
彼女は不安そうに、胸元を押さえていた。

「・・・つまり、町にいる人たち全員が、いつでも“見られてる”ってことですよね?」

「そう考えていいでしょう」
女王はきっぱりと言った。

「ただ、知能のある相手でしょうから、無差別ではないはずです。私たちのように、魔力を扱える者──あるいは特定の目的を持った相手には、向こうから積極的に仕掛けてくる可能性もあるかと思います」

 私は思わず、身を強張らせた。
そんな中、ノエルが少し首をかしげて口を開いた。

「じゃあ、魔法使いたちは気づいてないんでしょうか?」

彼女の疑問に、シェルが考えるように目を伏せた。

「その辺については・・・気づいている者もいるかもしれません。しかし──おそらく、向こうも気づかれないようにしているのでしょう。無差別に働きかければ、魔力に敏感な町の魔法使いに感づかれる危険がありますから」

「・・・だからこそ、私たちにだけ接触してきた、ってことですか」
ノエルが唇を噛んだ。

「その通りです」

 女王は静かに言い、指を組んで机に置いた。

「この状況下で、向こうが何を狙っているのか。そして、どうすればそれを止められるのか──慎重に、策を練りましょう」

 部屋に、しんと静けさが落ちる。

「・・・私たち、狙われてるんですね」
サラが、呟くように言った。

(・・・敵は、確かにこの町にいる)

私は、改めて胸の中で強く思った。

そして、私たちは──その中心にいるのだ。
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