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五章 ラグルの呼び声
307.灰色の町、タルネア
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風の音が次第に遠のいていく。
土と煙の匂いが、ようやく薄れてきた頃──私たちは、タルネアの城壁を遠くに望む丘へとたどり着いた。
城壁に囲まれた都市ではあったが、ミフィアで見たどの都市とも違っていた。
「・・・堅い、町ですね」
サラが言ったのは、見た目の話だけではないと思う。
重く、灰色の石で築かれた高い城壁。鋸のような見張り塔。空気そのものが、どこか押しつぶされたように張り詰めている。
「空気が重いのは、気のせいじゃなさそう」
ノエルが足元に手を当て、地脈の流れを探るように目を閉じた。
「地面の下で、魔力が変にせり上がってる。流れていない、沈んで、詰まって、揺れてる・・・」
私もまた、まるで内側から不安定な力が、町ごと押し上げているような気配を感じていた。
私たちは城門へと向かう。
門前では、数人の兵士が警戒態勢をとっていた。通行人も少なく、以前のラグルを知っている母も、どこか怪訝な顔をしていた。
「・・・門番まで魔力検査してるのね。タルネアって、昔はもっと開かれた町だったのに」
「よそ者を恐れているのかな。何かあったのかも?」
私が問うと、母は目を細めた。
「“何か”じゃないわ。いくつも、起きてるのよ。きっと」
私たちは名と目的を告げ、短い身元確認と魔力量の測定を受ける。杖を持っている私たちは、特に厳しく調べられた。
けれど、母がレフェの大魔女、セリエナ・ベルナードであることがわかると、門番の態度は急速に和らいでいった。
「これは、ご足労を。オルガ様に会いにいらしたのですね?」
兵士がそう尋ねてきたとき、私たちは一瞬だけ顔を見合わせた。
「ええ。異変の報を聞いて、こちらに」
「ならば、塔を訪ねるといいでしょう。ですが──今、オルガ様は誰にもお会いになっていません。塔の封印が下りたままなのです」
「封印・・・?」
「ええ。塔の根元にある“地の間”がうねり出してから、オルガ様はずっとその奥に篭ったままなのです。・・・それが、もう四日になります」
四日。それが、何かを意味している気がした。
地の魔女が姿を消し、町が沈黙するほどの魔力を孕み始めてから、ちょうど四日。
「・・・わかりました。私たちは宿を取り、様子を見ます」
母が静かに告げ、私たちは町の中へと足を踏み入れた。
タルネアの通りは、まるで地下坑道のように無音だった。
石畳に足音だけが響き、人の声も、笑いも、子どもの声も聞こえない。
まるで、町全体が何かに耳を澄ませているような──
地の底から、何かが目覚めるのを待っているかのような、そんな沈黙だった。
土と煙の匂いが、ようやく薄れてきた頃──私たちは、タルネアの城壁を遠くに望む丘へとたどり着いた。
城壁に囲まれた都市ではあったが、ミフィアで見たどの都市とも違っていた。
「・・・堅い、町ですね」
サラが言ったのは、見た目の話だけではないと思う。
重く、灰色の石で築かれた高い城壁。鋸のような見張り塔。空気そのものが、どこか押しつぶされたように張り詰めている。
「空気が重いのは、気のせいじゃなさそう」
ノエルが足元に手を当て、地脈の流れを探るように目を閉じた。
「地面の下で、魔力が変にせり上がってる。流れていない、沈んで、詰まって、揺れてる・・・」
私もまた、まるで内側から不安定な力が、町ごと押し上げているような気配を感じていた。
私たちは城門へと向かう。
門前では、数人の兵士が警戒態勢をとっていた。通行人も少なく、以前のラグルを知っている母も、どこか怪訝な顔をしていた。
「・・・門番まで魔力検査してるのね。タルネアって、昔はもっと開かれた町だったのに」
「よそ者を恐れているのかな。何かあったのかも?」
私が問うと、母は目を細めた。
「“何か”じゃないわ。いくつも、起きてるのよ。きっと」
私たちは名と目的を告げ、短い身元確認と魔力量の測定を受ける。杖を持っている私たちは、特に厳しく調べられた。
けれど、母がレフェの大魔女、セリエナ・ベルナードであることがわかると、門番の態度は急速に和らいでいった。
「これは、ご足労を。オルガ様に会いにいらしたのですね?」
兵士がそう尋ねてきたとき、私たちは一瞬だけ顔を見合わせた。
「ええ。異変の報を聞いて、こちらに」
「ならば、塔を訪ねるといいでしょう。ですが──今、オルガ様は誰にもお会いになっていません。塔の封印が下りたままなのです」
「封印・・・?」
「ええ。塔の根元にある“地の間”がうねり出してから、オルガ様はずっとその奥に篭ったままなのです。・・・それが、もう四日になります」
四日。それが、何かを意味している気がした。
地の魔女が姿を消し、町が沈黙するほどの魔力を孕み始めてから、ちょうど四日。
「・・・わかりました。私たちは宿を取り、様子を見ます」
母が静かに告げ、私たちは町の中へと足を踏み入れた。
タルネアの通りは、まるで地下坑道のように無音だった。
石畳に足音だけが響き、人の声も、笑いも、子どもの声も聞こえない。
まるで、町全体が何かに耳を澄ませているような──
地の底から、何かが目覚めるのを待っているかのような、そんな沈黙だった。
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