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再びSEASON1

16.狂極のアイドル

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「お兄ちゃん! 林林ちゃん! アイドル目指しましょう!」

 部室に声が響く。
 今、先輩方はまだ来ておらず部室には一年メンバーのみが顔を出していた。
 俺と林林が顔を揃えた瞬間……先に来ていた爆弾猛烈馬鹿娘、太陽が急にそんな事を言い出した。
 こいつはいつも思いつきでやりたい事をやる、クレ○ンしんちゃんよりも嵐を呼んでいるんじゃないだろうか。

「突然何言い出したんですか? 馬鹿ですか? おっと、思わず本音が」

 馬鹿な事をいつも言い出す太陽に林林が辛辣な突っ込みをいれる。
 車にはねられた様だが大事には至らずかすり傷で済んだらしい。

「アイドルですよアイドル! アタシ達全員アイドルになるんです!」
「何でアイドルなんだ?」
「知らないんですかお兄ちゃん! 今世の中は未曾有のアイドルブームなんですよ! AK○しかりラブ○イブしかり!」
「だいぶ前に過ぎ去ってますよ」

 まぁ、それらは今も大人気なんだが……アイドルブームに乗っかるというのなら確かにだいぶ出遅れてる気がする。

「それにそんな簡単になれるもんじゃないですよ?」

ガチャ

「話は聞かせてもらったぜ」

 顧問の香茶先生が部室に入ってきた。

「呼んでません」
「大丈夫! 俺が保証する! この部は奇跡的に超絶美少女が揃ってるんだ! トップアイドルだって夢じゃねぇ!」

 まぁ確かに顔だけなら、繰り返し言うが顔だけなら。
 何度も言うけど顔だけなら。

「しかし顔だけでアイドルになれるってもんじゃないような……」
「そこは斬新さでカバーですよお兄ちゃん! ○○なアイドルってあるじゃないですか! 会いに行けるアイドルみたいな! これまでにないアイドルって目新しさで売り出しましょう!」

 ふむ、存在自体が斬新なやつらがアイドルになったらどうなるか興味が無くもないが。

「しかしそれらを考えるのは売り出す社長やプロデューサー的な人達だろう」
「夜永先輩にお金出してもらって響木くんが社長兼プロデューサーやったらいいじゃないですか」
「断」
「それいいです林林ちゃん! 早速夜永さんにLI●Eしちゃいました!」

 こいつら肝心な時はいつも俺を無視するな。

「じゃあ太陽さんはどんなアイドルで売り出すんですか?」
「勿論お兄ちゃんとラブラブなアイドルです!」

 売れるか。
 アイドル界隈に男の存在は御法度だ。
 例えそれが兄弟でも……存在を匂わせる事自体が禁中の禁だというのに。

「ふぅむ、売り出す前からビッチ全開ってことですか……斬新といえば斬新ですね」
「林林ちゃんはどんなのがいいですか?」
「………そうですね……なんか……焼きそばの匂いがするアイドルとかでいいんじゃないっすかぁ?」
「お前既に飽きてきただろ」
「じゃあ先輩方のを考えましょう! まずは部長……雪さんは……」
「脱糞するアイドルだな」
「ですね」

 できるか。
 斬新な発想っていうのはまず何故誰もそれをやらないかを考えてからやるもんだ。

「じゃあ次は夜永先輩ですね」
「夜さんは……お金持ちアイドルとか?」
「うーん……なんか既にいそうですけど……それ以外に夜永先輩を表現できるものが何一つありませんね」
「お前あんだけ金貰っておいて夜永さんに何か恨みでもあるの?」
「じゃあ最後は雨さんですね!」
「雨ちゃんはまさにアイドルを具現化したような存在だぜ……ただ……」
「確かに。既にファンクラブまであるし……ただ……」

 俺と香茶先生は同じ理由で雨さんにアイドルは無理だと諦めていた。
 それはーー

「あのくそ音痴をどうにかしないと日本は沈没しますよ」
「お前はもう少しオブラートに包む言い方を覚えろよ」
「うーん、音痴なアイドル……なんか狙いすぎてるような感じがしますね」
「もう一つあるじゃねぇか、雨ちゃんの特性が」
「あっ、そうでしたね」
「斬新ですね」

 もう一つ? 何かあったっけ?

「生理になるとトチ狂うアイドル」

 できるかっ!!

「よーし! 決まりましたね! じゃあ今からアイドル編スタートですよっ!」

 え? 本当にやるの?
 まぁ……言った通りそんな簡単になれるもんじゃない。
 思いつきで始めたんだ、きっと挫折したりすぐに飽きたりするだろう。

 しかし、この狂人集団にそんな常識が通用するわけなかった。





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