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チュートリアル
#002~箱庭入門『クラフト』①
しおりを挟む俺は松明を何個か取り出して転がっている岩を並べ台を作って地面に立てる。
落とされたこの階層が地下の何階かはわからないが……周囲には何もなく、ただの洞窟といった感じの岩と砂でできた地面や壁、それに石碑があるだけだ。
「それで……その力ってやつはどう使えばいいんだ?」
<なんでもかんでも俺に聞くんじゃねぇよ、言っとくが俺が補助してやんのはこの【ネザー】の洞窟を出るまでだ。なはは、いわゆる『チュートリアル』ってやつだな。じゃあ教えてやっからよく聞けよ>
結局教えてくれるのかよ、と突っ込むとハコザキはまた「なはは」と笑った。
<いいか? 【箱庭】には付属的な便利ヂカラが多々あるが……メインの力は『物を持ち運び可能なブロックに変えられる』。最強にして最悪の神の力さ>
「………『物をブロックに変えられる』………こう言っちゃなんだけどそれのどこが最強なんだ?」
<バカかてめぇは!! こんな便利で最強の力が他にあるかよ! まぁいいさ、ものは試しだ。やってみろ>
「いや、だからどうやって………」
それっきりハコザキの声はしなくなった。恐らく面倒くさくなったんだろう。なんて適当な奴だと少し苛ついた。
「仕方ない……魔法と同じ要領でイメージしてみるとするか……」
魔法を使用する時は体内にある魔力の源泉……【マナ】と呼ばれる気のようなものを体全体から脳へ、脳から発動させたい箇所へ流れるイメージを創りあげる。
脳から流れるイメージをする際、発動させたい魔法特有の術式と魔法陣の型を鮮明に脳内に創りあげる。それがより鮮明であればあるほど魔法は正確に、より強力になって発動する。他にも手順はあるのだが凄く簡略的に説明するとそんな感じだ。
そのイメージから発動までの時間を詠唱時間と呼ぶ。
(話だけ聞くと簡単そうだが……実際には術式と魔法陣のイメージはそう簡単にはできない……俺は下級魔法を発動させるだけでも半年もかかった。まぁ……それは俺がダメなだけなんだけど……)
一般でも魔法一つを覚えるのに約2ヶ月はかかる。高位魔導師と呼ばれる魔法使いは上級魔法でもひとめ見ただけで使用できるらしいが……そら恐ろしい話だ。
(高位魔導師……ミランダ………)
魔導師をイメージすると必然的にあいつを思い出す。
【白銀の羽根】随一の最強の魔法使い……ミランダ。貴族の出自ながらにして王宮の学院を首席で卒業……魔力を桁違いに内在し、詠唱時間が一秒にも満たない。前衛と変わらない攻撃速度を誇ることからついた二つ名は【飛翔の魔導師】。
しかし、裏では自身の認めた者以外の人間や種族を徹底的に蔑み……こき使い、あげくには魔法の実験台として殺害し秘密裏に処理していると噂されている。要は完全なる差別主義者だ。
(俺も……散々実験台にされてきたが……サクラがいたから殺されずに済んだ……ギルド内で行方不明になった者も多い……ミランダがやったんじゃないかって噂だが……証拠は残してないし仮にあっても貴族達が総出でもみ消すだろう)
「…………」
<おう、どうしたどうした? 魔法でも使いてぇのか? だが全然集中できてねぇじゃねえか>
イメージに雑念が入ったので魔法は形を成さずに発動失敗に終わる。しかし、今は復讐の念に駆られているので失敗に関してはどうでも良かった。
ハコザキはそんな俺を見抜いて声をかけたのだろう。
「……あの女……俺を突き落とす時に心底冷たい眼をしてやがった……まるで汚物を処理するみたいに………」
<なはは、見てたから知ってるっつーの。ありゃあお前さんを心底嫌ってたな>
「……あぁ。まぁそれを隠してなかった分……サクラよりかはいくらかマシかもしれないがそれでも許せない……」
<なはは、そうさそうさ。怒れ怒れ、お前さんにはその権利があるってもんよ。殺されかけたんだからな。ま、それはそうと……【箱庭(ラインクラフト)】はそんな面倒な事しなくても使えるぜ? バカかお前>
早く言えよと、思わず怒りの矛先がハコザキに向いた。
<仕方ねーな、教えてやんよ。『右手』でそこらへんの壁か床……触ってみろ>
ハコザキはまたそれだけ言って黙った。
(右手で壁か床に触る……?)
今までも床に手をつけてたけどその時は何も起きていない。もしかしたら、何かに触ったままブロックになれとか念じればそうなるとでも言いたいのだろうか。
そんな馬鹿な、と思いつつ俺は恐る恐る床に触れて念じてみた。
(ブロック……ブロック………)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………………
「!? 何だ!?」
床に触れて念じた途端、右手の周囲の床が地鳴りを響かせて揺れた。まるで俺の立つ位置にだけ地震でも起きているかのようだ。
そして、それとほぼ同時に周囲四方……俺を取り囲うように地面に直線の糸のような亀裂が入った。亀裂の入った真四角の地面はやがて俺を乗せたまま競り上がる。
何か嫌な予感がした俺は急いで競り上がる床から脱出する。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ポンッ!!!
地鳴りと共に持ち上がった四角形ブロックの床は、少し間の抜けた音を発しながら飛び出して脱出した俺のいる場所とは逆方向の地面に乗った。
床がブロックになり飛び出した部分は、まるでくり貫いたように四角形の穴が出来上がっていた。
「……な……な……何だこれ……」
<なはは、驚いたか? これが【箱庭(ラインクラフト)】だ。お前さんが『右手』で触った物はなんであろうとブロック化する。お前さんの『右手』ならば質量荷重関係なく……まるで発泡スチロールの如く持ち上がる、元の場所に嵌めれば元通りよ。さぁ、『荷物持ち』。世界を荷物と化し、創り変えやがれ!!>
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