【箱庭(ラインクラフト)】~お荷物として幼馴染みに殺されかけた俺は転生の創造主の力で世界を創り変える、勿論復讐(ざまぁ)も忘れずに~

司真 緋水銀

文字の大きさ
17 / 76
第一章 箱使いの悪魔

#002.■復讐の始まり

しおりを挟む


「俺達はっ────………」

 
 突如、話し始めようとした兵士の言葉が途切れた。
 隣で聞いていた兵士は『それ』を見ても直ぐには状況を把握できずにいた。
 理解できたのは激しい振動と轟音と共に空から何かが降ってきた、という点のみであった。
 
 『箱』

 ごく簡単に言い表すならば……兵士は『箱』により押し潰され、下敷きとなり、発しようとしていた言葉と共にその場から姿を消したのだった。
 より正確に言うならば、既にこの世からも一欠片の肉片も残さずに消えているだろう。
 見るからに重量のありそうなコンクリートの塊はピタリと地面と接合していて少しの隙間も残していないのだから。

 残された兵士は時間を置いて徐々に事態を理解し始める。
 潰された兵士を捕らえていた氷は砕け、液体となり、青い氷からは決して産み出されない赤い色を交えて兵士の足元にまで流れ伝ってきていたのだから。

「うっ……うわあああああああああああああぁぁぁぁっ!!!?」

 血の気を失い、叫んでも既に何もかもが手遅れだった。
 マインは兵士の怯えた表情とは対称的にとても晴れやかそうに、そして多少の怒気を含んだ表情をして兵士に言った。

「あなた達が弄んだ少女には顔を潰された子もいたとか……本当に可哀想でなりません。ならばあなた方は全身を潰されて地獄へ行くべきだとマインもそう思います」
「はっ……話が違うぞ!! 俺らがやった事は認めるって言ったじゃねえか!! 大人しくしてりゃあ手は出さないって……!!」
「ええ、『マインは』手を出さないと言いました。何故ならマインはサポート……ソウル様の従順なる下僕……道具……召し遣い……マインなどがソウル様の【粛正】に手出しする事も口出しする事も畏れ多いというもの……全てはソウル様が決め、ソウル様が判じ、ソウル様が裁く事ですから。そうですよね? ソウル様」

 マインは惚気を含んだ表情をして箱の上部を見つめる。
 兵士を潰した箱の上に乗っていた悪魔はそれを受けて高らかに笑う。

「なはは、何度も言ってるだろマイン。マインは俺の奴隷じゃなくて相棒だ。自分の好きなように判断しろ」
「ソウル様……何てお優しい……マインはいつでも好きに判断しています。好きに判断した結果、ソウル様の道具になりたいと心からそう思っているのです。島にいた時から……いいえ、ソウル様に命を救われたあの日からそれだけはずっと変わりません」
「……まいったな……一般常識は一通り教えたはずなんだけど……これだけはずっと治らないんだよな……なんか『様』づけして呼ぶようになっちゃったし……せっかく島から出られたのにこんなところを見られたら本当に御主人と奴隷だと勘違いされる……早いところ何とかしないと」


 【転生の悪魔】……ソウルは困った顔をして頭を掻きながらそう呟く。
 マインはその件について話を逸らすかのように別の話題を持ちかけた。
 
「ところでソウル様、島で『シンザシス』を使い改良を重ねた【黒耀剣(ネビリム)『改』+99】の実験の程は如何でしたか?」
「なはは、大成功だ。鎧甲冑でも豆腐のようにすんなり斬れた、刃こぼれすら起こさない」
「ソウル様の努力と天才的な発想力と創作力の賜物ですね、マインも嬉しいです」

 二人は残された兵士など気にも留めていないように談笑したのちに思い出したかのように向き直った。

「──さて、あんまりあの子を箱に閉じ込めておくのも悪いし最後の実験といこう。マインはあの子のところに行ってくれ、さすがにマインにもこれは刺激が強いだろうし」
「畏まりました、ソウル様。お心遣い感謝致します。終わりましたらマインはまた沢山愛でて欲しいと願います、それでは」

 マインはそう言って箱に囲まれた少女の元へ向かう。
 ソウルはマインが離れた事を確認し、残された身動きすらとれずにいた兵士を見下ろしたまま会話を始めた。

「お前には色々と聞きたい事があるんだ、死んだ二人はあまりにも呆気なく殺しちゃったからな……失敗したよ。もう少し苦しみを与えてやるべきだったのに」
「あっ……あいつはっ……どうなったんだ……? 何をしやがった!?」
「もう一人の兵士の事か? それならここにいるよ、ほら」

 ソウルは箱の上から何かを兵士の目前に投げる。
 兵士の足元に溜まる赤い水にバシャリと飛沫をあげながら重みのありそうな物体が転がってきた。

 それは──兵士の被る鉢型兜だった。
 
 それを見た兵士は戦慄する、ただの兜『だけ』であればそこまで重みのある音を出さない。
 中に何かが入っている、兜の中に何かが。

「斬れ味が良すぎた、人間相手に使うのは初めてだったからな。剣の性能実験としては成功だったが、お前らを苦しめる目的としては失敗だった。……だから、今度は失敗しないようにしないと」

 すぐにその中身を察し、その言葉を聞いた兵士は懇願する。
 潰されたあいつや、首を切り離されたこいつの事は最早どうでもいい──どうにかして見逃してもらわなければ殺される、と居直って。

「たっ頼むっ!! 助けてくれ! 俺はこいつらに付き合わされただけで直接手を下した事は一度だってない!! いつも見張り役で何をしていたかなんて知らなかったしやりたくなんてなかった!! だからっ……!」

 ソウルはその懇願に反応し、耳を傾ける。
 そして箱から降りて兵士の目前に行き、哀れみの眼を向けた。

「……そうか、お前『も』……一年前の俺みたいに事実を知らされないまま付き合わされたのか。ただお荷物として何も知らないまま」

 ソウルが何を言っているのか兵士には全く理解できなかったが、それでも会話が通じる事にいくらか安堵する。
 言うまでもなく嘘偽りに溢れた言葉であったが……懐柔できるとそう踏んで。
 同情を引けば生き延びれる、そう感じた兵士に一筋の希望という形の光が射し込んだ。

 しかし、それはそれまでで一番の思い違いであった事に兵士は気づかない。

 最後の最後まで、兵士は理解していなかった。
 それをソウルが次に発した言葉と表情を見た時には──


「だったらてめぇが一番罪深い、止められなかったてめぇが。ただ知ることすらできなかっただけのてめぇが」

 
 ──もう、遅すぎた。
 
 『クラフト』

 そう、ソウルが呟くと兵士はより一層身動きが取れなくなる。
 それもその筈だった、今度は脚だけではなく……頭部以外の全てが『何か』に覆われてしまったから。
 その『何か』を兵士は自身で確認する事はできない。
 首を動かす事も、兜につくバイザーを動かす事も自分ではできない兵士にとって現状を知る手段は外部からの情報を得る以外にはない。

 しかし思考する事はできる、そして、自分が何をされたのか想像する事も。
 兵士はすぐに直感する。
 不可思議な『箱』の術を使う男、微動だにできない自分、そこから導き出される答えは想像するに容易であった。

 兵士は『壁』に埋め込まれたのだ、無機質で真っ黒な何でできているのかも判然しない『壁箱』に。

「頭だけ出てりゃあ痛みや恐怖を感じたり叫んだり喚いたりする事はできるだろう。これでちったぁてめぇらに弄ばれて殺された女の子達の感情が理解できるかもな……さぁて、てめぇらに溜められた鬱憤の憂さ晴らしに付き合えよ」

 ソウルは兵士の兜のバイザーを上げる。
 兜の中には恐怖に満ちた顔をした中年の男が、まるで処刑人にすがるように、訴えるような目付きをしていたがソウルには最早そんな事どうでも良かった。
 こいつらが奴隷の少女にしてきた事を返すだけなのだから。

 きっと殺された少女達も……すがるように兵士達に懇願した筈なのだから。

 ソウルは剥き出しとなった兵士の顔に漆黒の剣の切っ先を向ける。


「──さぁ、復讐の始まりだ」

 

 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

処理中です...