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第二章 楽園クラフトと最初の標的
#039.防衛戦②~vs略奪者(ピリジャー)
しおりを挟む辺りにまるで家畜の断末魔のような音が木霊する。地球では開戦の合図ーー法螺貝というものの音で戦意を高めていたとか。それに似た音らしい。
ここオーバーワールドでのこの音は魔獣【略奪者(ピリジャー)】の鳴き声だ。一定時間ごとに音を発する生態として知られている。
(ゲージが徐々に増加していく……? 一体なんの合図なんだ……? まぁそれよりも、だ。まずはピリジャーに紛れている厄介な魔獣の方を始末しよう)
土魔術を使い、ピリジャーに位置を悟られないように移動しながらある魔獣を目視により発見する。【ヴィンディゲーター】という人型を模した鰐(わに)のような魔獣だ。どちらかといえばその貌は竜と人のハーフーー【竜人】に近い。
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vs【ヴィンディゲーター】★★★★★★☆☆☆☆
・鎧を纏い、斧を持つ竜人の貌をした魔獣。移動速度が素早く、斧による強力な攻撃を繰り出す。推奨討伐ランクは『金』以上。
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(あの斧を一撃でも喰らうと致命傷になる、鎧や鱗の硬度も高くまるで重装兵。それでいて盗賊剣士のような速さを持つっつーんだからな)
半年前くらいの俺だったら見つからないよう逃げ惑うしかなかっただろう、魔術や弓スキル、高い攻撃力がなければ敵いようがない相手だった。
だが、今はそれが叶うありとあらゆる手段を持っている。選択をしているような場合ではないものの、俺は使い慣れていない魔術による経験を積むために魔術のみの攻撃で撃破を試みる。
土の事象(せいれい)にできる限りのマナを送る、すると一年前までは使用不可能だった様々な術式魔法陣が記憶に流れ込んできた。
(最上位(SSS)の魔術も使用できる……っ、俺に溢れるこのマナの源泉はどこから湧いてくるんだ……っ?)
内から涌き出る膨大なマナ総量に高揚する俺は、共に溢れる疑問を棚上げして攻撃を開始した。
【エンテンス・カタストロフ(大地檄晨)】
両の手を地に置いた刹那ーー大地は揺れた。
その魔術は力を見せつけるかのように、ありとあらゆる総てを喰らうかの如く、震える。
視認していたヴィンディゲーターは一瞬の間に舞い上がったーー氷柱を逆さにしたような形を創った大地に真下から鎧もろとも貫かれ……息つく間もなく絶命した。
まるで鴃(もず)の早贄を思わせる光景を創り出す。
「……なはは、驚きだ。まぁ感想は後にしよう、次は【ウィッチ】だ」
いつの間にか目一杯になっていたゲージを気にしながら、次の標的を目視する。
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vs【ウィッチ】★★★★★★☆☆☆☆
・あらゆる魔術を扱う人型魔獣。魔女のような帽子を目深に被り、耐久性のあるローブを着ている。魔術に毒性を持たせたり、魔術に交えて様々な弱体(デバフ)効果を持つ薬瓶(ポーション)を投げつけてくる。自身は支援(バフ)効果のある薬を飲んでいるために状況により弱点が変化する。治癒術も扱うために逃げられると厄介。
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(ウィッチには気づかれる前に遠隔攻撃するのが有効だが、個体によって魔術の相性(ぞくせい)が変わる。一度攻撃をして仕留め損なえば隠れられて回復される。長丁場になりかねないな……ミランダのように複合魔術でも使えればいいんだが……)
複合魔術とは【火風】【雷光】のように二種以上の事象を組み合わせた魔術だ。たとえ一つの相性(ぞくせい)の抵抗値を持っていても複合魔術であれば通常と同じダメージを与えられる。
だが、使用難易度は格段と高くなる。事象自体の相性を加味しなければならないうえに、それらをいなしコントロールする術が必要だ。
(……今の俺なら可能か? 失敗すれば大幅に時間をロスするがーーいや)
できないと思っていたらいつまで経っても『あいつら』の喉元に牙を突き立てることなんてできやしない。
不可能なことも可能にしなければならない。
考えている時間の方が無駄だ、と俺は魔想する。
(イメージは【火】と【光】ーー瞬時にして貫通させる魔術が欲しいーー)
【複合魔術 ヴォルテクス・ハイレーザー】
想いは実を結び、ウィッチに向けた掌からは火と光を融合させた【熱線】が放たれる。
いとも簡単に出現したそれは光速でウィッチの頭部を貫き、その生命を終わらせた。延長線上にあった大木をも貫通した火光線は動線全ての自然を焼きながら空へと消える。
「………は、はは。こんな魔術が使えんならゴーレムにだって策を労して戦う必要なかったかもな……」
そもそもが光や土魔術でウィッチの相性事象を調べることだって可能だったかもしれない。全てが片付いた後になって試行錯誤するのは戦闘経験と発想力の少なさ故だろう、更に効率良く戦うためにはやはりもっと経験が必要不可欠だ。
とにかくこの一帯に残っているのはこれでピリジャーのみ、石ランクとはいえど訓練は受けた奴等なんだから大丈夫だろう。
レッドストン鉱山の時と同じように、緑色の球体オーブが集い経験値が加算される。更に、ウィッチやヴィンディゲーターから珍しい物がドロップした。
「……本? これは……『エンチャントブック』か」
それらをインベントリに収納した俺は別方角の入口付近からの戦闘音を耳にした。
(マイン達の方は大丈夫だろうか、略奪者の波状攻撃はどこから来るかわからない。向かってみよう)
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