名無しの最強異世界性活

司真 緋水銀

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第一章 名無しさんの最強異世界冒険録

第七話 女神と破壊神

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「【名無しの権兵衛】様?大丈夫ですか?」
「あ…あぁ、うん。大丈夫です」

二人の神様に顔を覗かれ、俺は焦点の合わなかった視界を元に戻す。
小さな小屋…窓の外は暗く…微かに雲と星の光が見える。
あれからそんなに時間は経っていないのか…?それとも時間は跳んでいるのか…

「ここは…どこなんですか?」
「イートリストという大陸にある平原です。そこにあった空小屋を借りています、一応私の能力『神の女部屋』で下界とは隔離されていますのでご安心下さい」

イートリスト……確かヒュミのいた孤島に一番近い大陸の名前だ…。
つまり…神様が不思議な力で俺をここへ一瞬で移動させたってわけか。
移動手段が解決したのはありがたかったが…もう少しタイミングを考えてほしかったなくそぅ…せっかく良い雰囲気だったのに。

ヒュミは大丈夫だろうか…あの暗殺者達には念を押したけど…また別の刺客が来ないとも限らない。
それに俺は目の前から一瞬で消えた事になっているだろうから余計な心配事を抱えさせてしまったかもしれない。
女神様に話を聞いたらまた孤島へ向かってみようか。

むにゅっ

「かははは、どうしたどうした上司様難しい顔して。いいシーンで飛ばされたから怒ってんのか?俺が続きしてやろうか?」

赤毛色したワイルドで野性味溢れるけど…怖いくらい綺麗な破壊神様が俺に肩組みする。
顔近い近い!豊満な胸が体に思い切り当たっている。

「ちょっ!ちょっと破壊神さん!失礼ですよ!私と名無し様に!私が最初に名無し様を選んだんですー!」

そう言って女神様は破壊神様から俺を剥ぎ取り自分の胸俺の顔を抱き寄せた。
破壊神様もそうだったけど女神様も相当いい匂いがする。
そして何より柔らかい。
豊満な胸だ。
初のモテ期が到来した語彙力の無い俺が言える感想はそれくらいのものだった。

「かはは、わかってるよ。そろそろ説明してやれよ」
「…そうですね、では【名無しの権兵衛】様。私の胸でお聞きしますか?普通に座ってお話ししますか?」
「いや…何だその選択…聞きづれぇだろ…」

一向に構わないが俺のこれからに関わる大切な話だ。
俺は名残惜しく椅子を選択し、真面目に話を聞くことにした。

--------------

「では…改めまして…私はこの世界における【神】の名を授かりし十二人の一人、【女神】と申します」
「同じく【神】の名を貰った十二人の一人【破壊神】だ。宜しくな」
「はい、えーと…俺は【名無しの権兵衛】ってことでいいんですよね?」
「はい、貴方様は【名無しの権兵衛】様としてこの世界に喚ばれました。呼んだのは私ですが」
「何故【名無しの権兵衛】なんですか?」
「かはは、お前が自分でつけた名前じゃねえか」
「ちょっと破壊神さん!お前なんて失礼です!」

俺がつけた?
あ………そういえばアバターの名前に付けたんだっけ?
そしてその名前で俺は異世界転移転生した…そういう認識でいいのかな?

「あぁ、そうさ。あのゲームは元々うちの『遊びの神』が造り上げた代物でな。地球の文明に潜り込んでちょちょいと販売させてもらったわけだ」
「……一体…何のために…ですか?」
「他の世界…文明における皆様の命名の『発想』とその想いを…私達は知る必要があったからです」

地球での名付けの…『発想』?

「私達のこの世界…未だに名はありませんが、この世界では体験されてご存知の通り…名前に能力が宿ります。その能力は千種万様…人による文明が築かれてから二千年の間に爆発的に『発想』と進化を遂げてきました」
「あぁ、それはもう俺達にも把握できねぇほどに、な。」
「人々の名前による『発想』は限界を知らず…限度さえも越えようとしているのです」

「……よくわかりませんが…名前の限度って?どんな名前だろうとそれは別に構わないと思いますけど…」

「まぁ、地球ではそうだっただろうな。だがよ…この世界ではそうじゃねぇ。例えば…悪意を持った人間がガキをつくってそいつに世界を滅ぼせるような名前を名付けようとしているとしよう」
「勿論、神である私達はある程度の危険な文字は排除し名付けに使えないようにしています。しかし……」
「…………簡単に世界を滅ぼせるような…悲しい子供が生まれてしまう…その『発想』の力を止められない、って事ですか…?」
「…そうです。人間の『発想』の力はもう既に神にも止められなくなってきています。元々私達は【神】の名を宿した時点で人間達の世界に手を出す事はできないのですが…」
「そこで、だ。他の世界の文明からその『発想』力とその力を宿した人間を選定して…ここへ喚んだ。その栄えある最初の人間が…【名無しの権兵衛】…あんたってわけさ」

「…何故、俺なんですか?」

「勿論、その名前と想いの発想に圧倒的な潜在性を感じたからさ。俺達の世界で名前に【名無し】なんてつけるやつはまずいねぇ。たとえ酔狂なやつでもな」

確かに名前が力になるのであれば…【名無し】なんて名はリスクが大きすぎる名前だろう。
名前なのに『名』が『無』い。
蓋を開けてみればキスするだけで相手の文字を貰えるなんてチート能力だったけど。

「私は違いますよ!どんな名前であろうと私は貴方様の名付けの想い…優しさに惹かれたんです!」

俺が【名無しの権兵衛】に名付けた想い。
それは…自分自身に重ねた想い、【名無しの権兵衛】と揶揄されていた自分への。
『世界に俺…名無しの権兵衛さんがちゃんと認識されるように』

「能力は『文字』と『組み合わせ』、そして『想い』で決まる。どんな想いを込めたかそれは知らねぇが…あんたの名付けと想いには他とは違う強さがあった。だからあんたに来てもらって試させてもらったわけさ」

…力を試す為にあの孤島に行かされていきなりあんなバトルをさせられたってワケか…

「…申し訳ありません。でもそれで貴方様の名前に対する想いとその強さを改めて知る事ができました。……………怒ってますか?」
「んー……まぁ…混乱はしてますけど…別に怒ってはいませんよ。そのおかげで一人…助ける事ができたんですから。…それで?俺は一体これから何をしたらいいんですか?」

まぁ…今の話の流れからすると大体わかるけど。

「あんたにはこの世界の神となってこの世界の統治をしてもらいてぇのさ。全ての名を獲得し俺らの上を行く『絶対にして唯一神』になり、そしてこの世界を平定させてほしい」
「貴方様の他者を傷つけず、他者の名を獲得できる…その素晴らしき能力と貴方様のお人柄は私達以上の存在になるのに…ひいてはこの世界をお任せするのに相応しいのです」

……やっぱりか。
冗談みたいな話に冗談みたいな能力、冗談みたいな神様からの頼み事…異世界転移転生においてついてまわる。

勿論、新たな名前を受け取った時同様に…今度の答えもすぐに決まっていた。


「お断りします」



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