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第一章 名無しさんの最強異世界冒険録
第十九話 数字遣いの男②
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「頼む!お、俺と正式に交際をしてほしい!」
「は、はぁ?」
いきなりそんな事言われても……
まさか男に告白されるとは…しかもこんなイケメンに。
まぁ…今の俺は女なんだから何もおかしくはないんだけど…。
「…えー…っと…いきなりすぎるし、ごめんなさい」ペコッ
そう、基本心は男だしこれでお願いしますなんて言った日には詐欺罪で訴えられてもおかしくない。
「それだ!」
「ひっ?!」
「男達と酒の呑み比べをしている時から見惚れていた!その心からは男に媚びていない感じ、腹に一物を含むような冷淡な眼差し、蠱惑な黒髪!その全てが俺の理想なんだ!た、頼む!せめてお友達から清い交際を!」
何この人すごく怖い。
男に迫られる女の人の恐怖がわかった気がした、俺もこうならないよう気をつけよう…
「お、落ち着いて。店の真ん中で恥ずかしいから…」
まだちらほらと周りには飲んでいる人達がいて、視線を集めていた。
「と、とりあえず外行こ!」
俺は男の手を引き店を後にした。
--------------
街の外れの一画には木々に囲まれた公園のような区画があり、俺達は空が白み始める中そこにある椅子に腰をおろす。
辺りに人影はまだなかった。
「え、えーと…とりあえず落ち着いてくれた?」
「………」カーッ…
顔が真っ赤だ、どうしたんだろ…
「だ、大丈夫?」
「す、すまない。こんなに強引に手を引かれたのも初めてで…」
勿体ない、そんなにイケメンなのに。
「や、やはり駄目なんだ、意中の女性だといつも通りにできないらしい……そこらの女には普通にできるのに…」
「えー…っと、あなたは一体何者なの?」
「俺の名は『一十佰仟(いちじゅうひゃくせん)』、流れの傭兵をしている…」
また凄い名前だ…しかも普通に名前を名乗った。
「えっと、名前…教えていいの?」
「別に構わない、隠してはいないし…き、キミにはちゃんと名乗りたい…だからだ…」
戦闘が仕事の傭兵なのに不都合とかないのかな?…よっぽど腕に自信があるのかな…
「ありがとう、私はナナ。よろしく」
「」ツー……
なんか泣きだした、凄く怖い。
「な、…名前を教えてくれる…のか?」
「べ、別に私も隠してないし…名乗ってくれたんだから返すのが普通でしょ…」
「………やはりキミは普通の女性とは違う…」
ドキッ
「俺が探し続けていた理想…俺の女神だ…」
女神はお前のじゃない、殴ってやろうか。
まぁそういう意味じゃないだろうけど。
この人…残念なイケメンだ。
顔はいいのに2.5枚目キャラだ。
「頼む、俺は15の時から10年間キミを捜し続けていたんだ…寄ってくる女には見向きもせず、仕事をしながらただキミだけを求めていた」
歯の浮くような台詞をよく自然に言えるものだ、しかも年下だったのか。
「んーと、どうしてそうまでして理想の女性を捜していたの?」
「勿論結婚をするためだ」
凄く普通!
「そ、そしてゆくゆくは…子供が欲しい…それだけだ…」
照れている、可愛い!
これが母性本能というやつか、俺男だけど。
「た、頼む!すぐに付き合えないならせめて友として側にいさせて欲しい!必ずキミを守るから!」
何からだろう。
しかし、友達なら別に…騙していていて気がひけるけど。
そうだ!
「一つ…御願いがあるんだけど、いいかな?」
俺は酒場の男達にしようとしていた御願いをこの男に頼む事にした。
「も、勿論!何でも言ってくれ!」
「私と一緒に、闘技大会に出てほしいんだ」
「…?闘技大会に?」
「うん、実は武道の経験のためこの街に来て大会に出ようと思ってたんだけど…来る途中お金を落としちゃって…参加費が払えなくて困ってたんだ…」
「成程!では俺が優勝賞金を今すぐ君に払おう!」
優勝賞金を!?
「そのくらいの小金なら持ち合わせている、大会など出ずとも君は賞金を手にできる」
いやいや!そうじゃない!
「そんなわけにいかないでしょ!話聞いてた?私は武道の経験を積みに来たの!」
「そ、そうか…すまない…」
「う、ううん、怒鳴ってごめん…だから一緒に出てもらえる人を探してるんだ」
「成程、出よう」
早い!
「い…いいの?」
「問題ない、レベルの低い大会など出るつもりはなかったがキミの為だ。キミを危険から守る」
ありがたいけど大丈夫。
「…ありがとう!必ず優勝してお金返すから!」ギュッ
俺は再び佰仟の手を握る。
「き、気にしなくていい…」
男の純情を弄んでいるようでいたたまれない。
終わったら佰仟にも真実を打ち明けよう、その後の判断は佰仟に任せる。
「開催は明日だよね?エントリーしに行こっ!」
俺達は一緒に闘技場へと向かった。
--------------
----------
「では確かに」
大会受付にて佰仟に一万ネムを払ってもらい、参加証明のナンバーのついたプレートを受け取る。
「開催は明日正午、選手は一時間前には受付を済ませてください。参加人数が多いので一回戦は参加者全員でバトルロイヤル方式、残った上位8組でトーナメントを行っていただきます」
二人のプレートには一番違いで107.108と書いてある。
100人以上もいるのか。
「なお、武器の使用は構いませんが安全を配慮したこちらが用意した武器を遣っていただきます。殺傷性のない樹皮を固めた物でできた大会特別製です」
ゴムみたいな物か、まぁ当たれば痛い程度で済むのはありがたい。
この世界に来てから痛い思いはした事ないけど。
「貴方…銃を遣うみたいだけど…大丈夫?」
「問題ない、俺の能力に合っているだけで殺傷性があろうがなかろうが関係ないからな」
自信満々だ、大会だと銃の場合はゴム弾とかになるのかな。
「なお、名前による能力を遣うのは構いませんが人を殺めてしまった場合、直ちに兵により身柄を拘束され裁判にかけられますのでお気をつけください。勿論失格となります」
むしろ心配するとしたらそっちかな…
力をどれくらいセーブすればいいか見極めないと。
「以上、質問等なければこれらの規約に同意のサインを。ナンバープレートの数字で構いません」
俺達は規約に同意し、闘技場を後にする。
「ありがとね、佰仟。私頑張るから」
「が…頑張らなくても……俺がいるから平気だ」
「佰仟は大会が始まるまでどうするの?」
「そ、そうだな…特にする事はないが…」
「じゃあさ、佰仟が私に望む事今言っていいよ」
「!?」
「お金の事は別にして私の我が儘聞いてくれたんだもん、それくらいは今するよ。友達として、だけど」
そう、騙している事も申し訳ないし。
せめて真実を打ち明けるまでの間、理想の女性として何か御礼くらいはしなくては。
「……で、では…」ドキドキ
「……うん」
「お、俺とデートをしてほしい!」
「うん、わかった。行こ」
「い、いいのか?」
「うん?勿論」
ピュアすぎてドキドキしてきた。
女の子の恋愛ってこーいうものなのかな。。。
そして俺達は街へ繰り出したのだった。
--------------
---------
-----
…
「………」
「……そーいう事情で遅れました、ごめん」
「ナナさん、こちらが?」
時刻は夕暮れ。
デートの最中今日泊まる事の無い事情を話し、本当に申し訳ないがもう一泊分の料金を佰仟に出してもらう事になった。
ちなみに部屋は当然一番最安値の部屋まで下げたのだが…
その事情でアイの事を話さないわけにもいかず、二人を面通しする事にしてしまった。
「そ、そう!話した友達のエルフの子!」
「…そうか…初めまして。ナナさんの友人となったしがない傭兵だ、ナナさんの友人であれば俺にとっても友人だ。以後お見知りおきを」
「……え、あ、うん。よろしく」
アイは何か複雑な表情をしている。
「えーと、ナナ…ちょっとこっちに来て」
「う、うん」
どうしたんだろう、何か怒っているのかな?
俺達は佰仟から少し離れ小声で話す。
「ねぇ、ちょっと…アタシはどんな立ち位置にいればいいのよ?」
「どんなって?」
「……好きな人が女性になって女性のあなたを好きになった男と鉢合わされる気持ちよ」
ごもっとも。
「ま…まぁまた恋敵を連れてこられるよりはいいんだけど…………よく考えたらあれも恋敵……なの…?」
ややこしかった。
しかし理解が早くて助かる、女神のところで一応事前にアイに女性の姿を見せておいてよかった。
「ま、まぁ宿の世話をしてくれるんだから友人って事でいいんじゃないかな?」
「…まぁ、そうだけど。何か複雑よ…頼むからあれを好きになったとか言わないでよね…」
それは絶対ない、母性がくすぐられているとしても。
「ん……そういえば…」
佰仟が何か思い出したようで私達に声をかけた。
「うん?どうしたの?」
「キミはエルフだったな…ならばリーフレインという騎士を知っているか?」
「え?アタシのお姉ちゃんだけど知ってるの?」
「何?妹なのか…いや、会った事はないがエルフ最強の騎士と言われているからな。いずれ手合わせしてみたいと思っていただけだ」
「止めておいた方がいいわよ、アンタ死んじゃうから」
「…………」
佰仟は何か考え込んでいる。
「…どうしたの?」
「すまない、ナナさん。手持ちはここに置いておくから自由に使ってくれ、少し用事ができた」
「え?あ、うん」
ザッ ザッ ザッ
そして佰仟は重厚な足音を鳴らしながら宿を出ていった。
「何なのかしら?」
「……」
何か真剣な顔つきだったから気になるな。
しかしプライベートな事もあるだろう、詮索はよくない。
「ね、ねぇ…ナナシには今日戻らないの?」モジモジ…
「え、あーうん。大会には女の子として出場するしこの身体に少し慣れたいからさ」
「………そう」しゅん…
「少し体動かしたいから相手になってよ」
「……もぅ、わかったわよ」
--------------
----------
◇ 『記憶の記録』
〈裏路地〉
一十佰仟は路地裏へ入る。
そこは昨日、研究所の女と邂逅した場所だった。
ザッ ザッ ザッ…
「………」
「あら?結局来たのね。一日可愛い女の子とデートしていた癖にもう浮気?」クス…
「勘違いするな、話を聞きに来ただけだ」
「そう、まぁいいわ。貴方闘技大会に出場するのね?」
「関係の無い話をしに来たのではない、今すぐ殺すぞ」
「つれないわね…それに関係なくはないわ。話は大会で優勝してもらってからにしようかしら」
「何?」
「貴方の力を証明してからって事よ、残念ながらこちらとしても貴方が信用に値するか計りかねているからね」
「まどろっこしいな、貴様を殺せば証明になるか?」
「ふふ、殺せれば、ね。わたくし達研究所からも二人出場するわ、あの子らにやられるようじゃ貴方を勧誘するのは少し考えるかもね…」ふふ…
「……」
バンッ!
佰仟は女に銃を放つ
が
女の姿は幻影で、もうそこに姿は無かった。
「…っち、逃げたか…」
--------------
〈街の入口門、外側〉
サァァァァァァァァァァッ………
「もう……ナナシったら用があるから少し待っててって…どこ行ったのかしら…」
アイはナナの戦闘訓練の相手をするため町の外の平原にいた。
途中まではナナと一緒だったが、急に用を済ませてくるとナナは言い外門の手前で待ち合わせる事になった。
「よう、嬢ちゃん。こんな夜に待ち合わせか?」
外回りをしていたこの町の兵士に声をかけられる。
「えぇ…まぁ、そんなところよ…」
「大会がある事もあって色んな種族が集まってる、賑わいに便乗する盗賊も多いから気をつけろよ」
「えぇ、そうするわ………ん?」
「…ん?」
「…平原の方から誰か来たわよ」
「こんな夜に?旅人か何かか…」
ザンッ!!
「……え?」
気づけば今話していた兵士の
鎧甲冑が宙を舞っていた
より正確に言えば
首から上の兜だけが。
ゴロンッ……ドサッ!
中身は入ったままで。
首を離した胴体も無論その場…アイの目の前で崩れ落ち倒れた。
「ひ………っ……………っ!」キッ
おののく前にまずやる事がある、とアイは感情を押し殺す。
攻撃の起点を闇夜の中から探す事だ。
しかし、それは
前から歩いてくる人物の仕業だと
その人物の独り言のような台詞ですぐに判明した。
「あぁ~…我慢できなかったぁぁ…ぎゃひひっ…でも…まぁ~標的じゃないからい~だろぉぉ…だったらぁ~もう一人くらぃぃ~…殺っても大丈夫だろぉぉぉぉっ!殺してぇぇぇぇぇっ!」
「は、はぁ?」
いきなりそんな事言われても……
まさか男に告白されるとは…しかもこんなイケメンに。
まぁ…今の俺は女なんだから何もおかしくはないんだけど…。
「…えー…っと…いきなりすぎるし、ごめんなさい」ペコッ
そう、基本心は男だしこれでお願いしますなんて言った日には詐欺罪で訴えられてもおかしくない。
「それだ!」
「ひっ?!」
「男達と酒の呑み比べをしている時から見惚れていた!その心からは男に媚びていない感じ、腹に一物を含むような冷淡な眼差し、蠱惑な黒髪!その全てが俺の理想なんだ!た、頼む!せめてお友達から清い交際を!」
何この人すごく怖い。
男に迫られる女の人の恐怖がわかった気がした、俺もこうならないよう気をつけよう…
「お、落ち着いて。店の真ん中で恥ずかしいから…」
まだちらほらと周りには飲んでいる人達がいて、視線を集めていた。
「と、とりあえず外行こ!」
俺は男の手を引き店を後にした。
--------------
街の外れの一画には木々に囲まれた公園のような区画があり、俺達は空が白み始める中そこにある椅子に腰をおろす。
辺りに人影はまだなかった。
「え、えーと…とりあえず落ち着いてくれた?」
「………」カーッ…
顔が真っ赤だ、どうしたんだろ…
「だ、大丈夫?」
「す、すまない。こんなに強引に手を引かれたのも初めてで…」
勿体ない、そんなにイケメンなのに。
「や、やはり駄目なんだ、意中の女性だといつも通りにできないらしい……そこらの女には普通にできるのに…」
「えー…っと、あなたは一体何者なの?」
「俺の名は『一十佰仟(いちじゅうひゃくせん)』、流れの傭兵をしている…」
また凄い名前だ…しかも普通に名前を名乗った。
「えっと、名前…教えていいの?」
「別に構わない、隠してはいないし…き、キミにはちゃんと名乗りたい…だからだ…」
戦闘が仕事の傭兵なのに不都合とかないのかな?…よっぽど腕に自信があるのかな…
「ありがとう、私はナナ。よろしく」
「」ツー……
なんか泣きだした、凄く怖い。
「な、…名前を教えてくれる…のか?」
「べ、別に私も隠してないし…名乗ってくれたんだから返すのが普通でしょ…」
「………やはりキミは普通の女性とは違う…」
ドキッ
「俺が探し続けていた理想…俺の女神だ…」
女神はお前のじゃない、殴ってやろうか。
まぁそういう意味じゃないだろうけど。
この人…残念なイケメンだ。
顔はいいのに2.5枚目キャラだ。
「頼む、俺は15の時から10年間キミを捜し続けていたんだ…寄ってくる女には見向きもせず、仕事をしながらただキミだけを求めていた」
歯の浮くような台詞をよく自然に言えるものだ、しかも年下だったのか。
「んーと、どうしてそうまでして理想の女性を捜していたの?」
「勿論結婚をするためだ」
凄く普通!
「そ、そしてゆくゆくは…子供が欲しい…それだけだ…」
照れている、可愛い!
これが母性本能というやつか、俺男だけど。
「た、頼む!すぐに付き合えないならせめて友として側にいさせて欲しい!必ずキミを守るから!」
何からだろう。
しかし、友達なら別に…騙していていて気がひけるけど。
そうだ!
「一つ…御願いがあるんだけど、いいかな?」
俺は酒場の男達にしようとしていた御願いをこの男に頼む事にした。
「も、勿論!何でも言ってくれ!」
「私と一緒に、闘技大会に出てほしいんだ」
「…?闘技大会に?」
「うん、実は武道の経験のためこの街に来て大会に出ようと思ってたんだけど…来る途中お金を落としちゃって…参加費が払えなくて困ってたんだ…」
「成程!では俺が優勝賞金を今すぐ君に払おう!」
優勝賞金を!?
「そのくらいの小金なら持ち合わせている、大会など出ずとも君は賞金を手にできる」
いやいや!そうじゃない!
「そんなわけにいかないでしょ!話聞いてた?私は武道の経験を積みに来たの!」
「そ、そうか…すまない…」
「う、ううん、怒鳴ってごめん…だから一緒に出てもらえる人を探してるんだ」
「成程、出よう」
早い!
「い…いいの?」
「問題ない、レベルの低い大会など出るつもりはなかったがキミの為だ。キミを危険から守る」
ありがたいけど大丈夫。
「…ありがとう!必ず優勝してお金返すから!」ギュッ
俺は再び佰仟の手を握る。
「き、気にしなくていい…」
男の純情を弄んでいるようでいたたまれない。
終わったら佰仟にも真実を打ち明けよう、その後の判断は佰仟に任せる。
「開催は明日だよね?エントリーしに行こっ!」
俺達は一緒に闘技場へと向かった。
--------------
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「では確かに」
大会受付にて佰仟に一万ネムを払ってもらい、参加証明のナンバーのついたプレートを受け取る。
「開催は明日正午、選手は一時間前には受付を済ませてください。参加人数が多いので一回戦は参加者全員でバトルロイヤル方式、残った上位8組でトーナメントを行っていただきます」
二人のプレートには一番違いで107.108と書いてある。
100人以上もいるのか。
「なお、武器の使用は構いませんが安全を配慮したこちらが用意した武器を遣っていただきます。殺傷性のない樹皮を固めた物でできた大会特別製です」
ゴムみたいな物か、まぁ当たれば痛い程度で済むのはありがたい。
この世界に来てから痛い思いはした事ないけど。
「貴方…銃を遣うみたいだけど…大丈夫?」
「問題ない、俺の能力に合っているだけで殺傷性があろうがなかろうが関係ないからな」
自信満々だ、大会だと銃の場合はゴム弾とかになるのかな。
「なお、名前による能力を遣うのは構いませんが人を殺めてしまった場合、直ちに兵により身柄を拘束され裁判にかけられますのでお気をつけください。勿論失格となります」
むしろ心配するとしたらそっちかな…
力をどれくらいセーブすればいいか見極めないと。
「以上、質問等なければこれらの規約に同意のサインを。ナンバープレートの数字で構いません」
俺達は規約に同意し、闘技場を後にする。
「ありがとね、佰仟。私頑張るから」
「が…頑張らなくても……俺がいるから平気だ」
「佰仟は大会が始まるまでどうするの?」
「そ、そうだな…特にする事はないが…」
「じゃあさ、佰仟が私に望む事今言っていいよ」
「!?」
「お金の事は別にして私の我が儘聞いてくれたんだもん、それくらいは今するよ。友達として、だけど」
そう、騙している事も申し訳ないし。
せめて真実を打ち明けるまでの間、理想の女性として何か御礼くらいはしなくては。
「……で、では…」ドキドキ
「……うん」
「お、俺とデートをしてほしい!」
「うん、わかった。行こ」
「い、いいのか?」
「うん?勿論」
ピュアすぎてドキドキしてきた。
女の子の恋愛ってこーいうものなのかな。。。
そして俺達は街へ繰り出したのだった。
--------------
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…
「………」
「……そーいう事情で遅れました、ごめん」
「ナナさん、こちらが?」
時刻は夕暮れ。
デートの最中今日泊まる事の無い事情を話し、本当に申し訳ないがもう一泊分の料金を佰仟に出してもらう事になった。
ちなみに部屋は当然一番最安値の部屋まで下げたのだが…
その事情でアイの事を話さないわけにもいかず、二人を面通しする事にしてしまった。
「そ、そう!話した友達のエルフの子!」
「…そうか…初めまして。ナナさんの友人となったしがない傭兵だ、ナナさんの友人であれば俺にとっても友人だ。以後お見知りおきを」
「……え、あ、うん。よろしく」
アイは何か複雑な表情をしている。
「えーと、ナナ…ちょっとこっちに来て」
「う、うん」
どうしたんだろう、何か怒っているのかな?
俺達は佰仟から少し離れ小声で話す。
「ねぇ、ちょっと…アタシはどんな立ち位置にいればいいのよ?」
「どんなって?」
「……好きな人が女性になって女性のあなたを好きになった男と鉢合わされる気持ちよ」
ごもっとも。
「ま…まぁまた恋敵を連れてこられるよりはいいんだけど…………よく考えたらあれも恋敵……なの…?」
ややこしかった。
しかし理解が早くて助かる、女神のところで一応事前にアイに女性の姿を見せておいてよかった。
「ま、まぁ宿の世話をしてくれるんだから友人って事でいいんじゃないかな?」
「…まぁ、そうだけど。何か複雑よ…頼むからあれを好きになったとか言わないでよね…」
それは絶対ない、母性がくすぐられているとしても。
「ん……そういえば…」
佰仟が何か思い出したようで私達に声をかけた。
「うん?どうしたの?」
「キミはエルフだったな…ならばリーフレインという騎士を知っているか?」
「え?アタシのお姉ちゃんだけど知ってるの?」
「何?妹なのか…いや、会った事はないがエルフ最強の騎士と言われているからな。いずれ手合わせしてみたいと思っていただけだ」
「止めておいた方がいいわよ、アンタ死んじゃうから」
「…………」
佰仟は何か考え込んでいる。
「…どうしたの?」
「すまない、ナナさん。手持ちはここに置いておくから自由に使ってくれ、少し用事ができた」
「え?あ、うん」
ザッ ザッ ザッ
そして佰仟は重厚な足音を鳴らしながら宿を出ていった。
「何なのかしら?」
「……」
何か真剣な顔つきだったから気になるな。
しかしプライベートな事もあるだろう、詮索はよくない。
「ね、ねぇ…ナナシには今日戻らないの?」モジモジ…
「え、あーうん。大会には女の子として出場するしこの身体に少し慣れたいからさ」
「………そう」しゅん…
「少し体動かしたいから相手になってよ」
「……もぅ、わかったわよ」
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◇ 『記憶の記録』
〈裏路地〉
一十佰仟は路地裏へ入る。
そこは昨日、研究所の女と邂逅した場所だった。
ザッ ザッ ザッ…
「………」
「あら?結局来たのね。一日可愛い女の子とデートしていた癖にもう浮気?」クス…
「勘違いするな、話を聞きに来ただけだ」
「そう、まぁいいわ。貴方闘技大会に出場するのね?」
「関係の無い話をしに来たのではない、今すぐ殺すぞ」
「つれないわね…それに関係なくはないわ。話は大会で優勝してもらってからにしようかしら」
「何?」
「貴方の力を証明してからって事よ、残念ながらこちらとしても貴方が信用に値するか計りかねているからね」
「まどろっこしいな、貴様を殺せば証明になるか?」
「ふふ、殺せれば、ね。わたくし達研究所からも二人出場するわ、あの子らにやられるようじゃ貴方を勧誘するのは少し考えるかもね…」ふふ…
「……」
バンッ!
佰仟は女に銃を放つ
が
女の姿は幻影で、もうそこに姿は無かった。
「…っち、逃げたか…」
--------------
〈街の入口門、外側〉
サァァァァァァァァァァッ………
「もう……ナナシったら用があるから少し待っててって…どこ行ったのかしら…」
アイはナナの戦闘訓練の相手をするため町の外の平原にいた。
途中まではナナと一緒だったが、急に用を済ませてくるとナナは言い外門の手前で待ち合わせる事になった。
「よう、嬢ちゃん。こんな夜に待ち合わせか?」
外回りをしていたこの町の兵士に声をかけられる。
「えぇ…まぁ、そんなところよ…」
「大会がある事もあって色んな種族が集まってる、賑わいに便乗する盗賊も多いから気をつけろよ」
「えぇ、そうするわ………ん?」
「…ん?」
「…平原の方から誰か来たわよ」
「こんな夜に?旅人か何かか…」
ザンッ!!
「……え?」
気づけば今話していた兵士の
鎧甲冑が宙を舞っていた
より正確に言えば
首から上の兜だけが。
ゴロンッ……ドサッ!
中身は入ったままで。
首を離した胴体も無論その場…アイの目の前で崩れ落ち倒れた。
「ひ………っ……………っ!」キッ
おののく前にまずやる事がある、とアイは感情を押し殺す。
攻撃の起点を闇夜の中から探す事だ。
しかし、それは
前から歩いてくる人物の仕業だと
その人物の独り言のような台詞ですぐに判明した。
「あぁ~…我慢できなかったぁぁ…ぎゃひひっ…でも…まぁ~標的じゃないからい~だろぉぉ…だったらぁ~もう一人くらぃぃ~…殺っても大丈夫だろぉぉぉぉっ!殺してぇぇぇぇぇっ!」
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