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第二章 命名研究機関との戦い
第四十一話 嘘
しおりを挟む「はぁっ!!」
ズバッ!
「ぐあっ!くっ、くそっ…!」
「貴様、口ほどにも無いにも程があるな」
リーフはオークの看守長を圧倒していた。
オークの大降りな攻撃は一撃一撃が相当に重そうなものであったが、閃光と呼ばれるエルフにはかすりもせず、逆にリーフの攻撃は僅か二太刀で30を越える傷を与えていた。
「貴様には色々と聞く事がある、身体がバラバラになる前に降参する事だな」ギロッ
「……っ!!わかった!まいった!まいったよ!」
「……は?」
「う、噂のエルフがこんな強ぇなんて思わなかったんだよ!悪かった!何でも話すから許してくれぇっ!」
「……」
スッ
リーフは剣を下ろす、しかし油断したわけではない。
演技の可能性もある、いつでも閃光速度で動けるようにする。
「ならば答えてもらおう、この場所はどこだ?」
「か、海底研究所だよ、イートリストとアストレアの大陸に挟まれたイーア海の中央にある」
やはりそうか、リーフは質問を続ける。
「貴様らはここで何の研究をしている?無論、裏で、だ」
「そ、それは知らねぇ!正確に言うと俺ぁ研究員じゃねぇんだ、雇われで看守の管理をしてるだけだから研究とかは一切知らされてねぇんだよ!」
それはそうだろうな、とリーフは納得する。
こんな明らかな末端がそんな事を知るはずもない、しかしそれならばこの男を使って知れる事などたかが知れている。
「ならば、ここの構造くらいは知っているだろう、案内……」
…ガクン!
「!?」
突然身体の力が抜けるリーフは立ち眩みのようなものを起こす。
(馬鹿な……油断などしていない!この場には私とこいつ以外の人の気配はない…第三者の攻撃ではない…ではこいつか?動作の一切を封じていたのに?現にこいつは微塵も怪しい動作をしていなかったのに!?一体……何をされた!?)
「……ふぅ~危ねぇ危ねぇ、この能力は効き始めるのに時間がかかるのが難点なんだよなぁ、しかも一定距離まで近づかないと効かねーしよぉ?」
(何だ!?私は何をされた!?)
「……っ?くっ……うんっ…」
身体の力が抜けたかと思えば、今度は全身に倦怠感が訪れる。
そして、次には身体中に更なる違和感を感じる。
「へへへ、どうした?何かあったのかよ?」
オークはリーフに手を伸ばす。
「さっ…やめっ…触るな…」
顔や身体が紅潮していくのを感じる。
それはリーフにとって初めての経験だった。
オークはそんな言葉には耳をくれず、リーフの肌に触れた。
ピトッ
「やっ!ああああああああっん!!?」
ビクッ ビクッ
「俺の名前教えてやろうか?『アフロディズィアク』。能力は催淫、俺の身体から出る臭いには媚薬と同じ効果がある、さぁ、楽しい時間の始まりだ」ニヤ
--------------
◇
「……話をしようって言うならまず仲間を返してもらう、それからだ」
「えー、何の事かわからないなぁ」
目の前の子供は無邪気にとぼける。
「無駄話はしない、できないっていうなら子供でも殺すまでだ」
俺はまた脅しをする。
「でも再生してくれるんでしょ?そうしないと気が咎めるもんね?優しいお兄さん?」
……どういう事だ?
まだ倒れた兵士達には再生の力は使ってない。
俺に再生の能力があるのをどこで見られた?
研究所員の前で使った事があるとすれば、切裂ティアラップの少女のみだと思うが……
『さらわれた時、俺達の中にいる誰かの声を聞いた気がする』
信じてもいない、気にもとめていなかった言葉が頭をよぎる。
いいや、そんなわけはない。
きっとどこかで見られていただけだ。
「そんな顔しないでよ、あの二人なら用が済んだら返すからさ」
「……何を企んでいるんだ?」
「単なる実験だよ、世界にはまだまだ色んな名前の人がいるんだ、研究者としてはこの名前による能力をどうしても解明してみたいじゃない。似たような名前で似たような能力の人はいるけど、完全に同じ名前、そして同じ能力は未だに確認できていない、こんなの研究に携わる身としては惹かれて当然のテーマだよっ」
「……だから、人拐いをして実験台にしてるでございますか?」
「だって皆名前を明かすわけないし、非協力的でしょ?だったら無理矢理身体をいじったりして解明するしかないじゃん」
「…………狂っているでございます」
「知らないの?研究者ってのは皆どこか狂ってるやつしかなれないんだよっ」
「………」
この少年の真意が読めない。
言葉だけじゃなく、心でさえも。
さっきからスキルを使っているのだが、まるで闇を覗いているような静寂。何も聞こえてこない。
「まだ心を読んでもらっちゃ困るなぁ~まぁ一応それをさせないようにある能力で蓋をしてるから読めないだろうけどね、こころちゃんが研究所に在籍していた時から」
能力による妨害か。
しかし、さっきからひっかかる。
『まだ、お呼びじゃない』『まだ心を読んでもらっちゃ困る』
一体この少年は何を考えている?
「ここの所属で貴方に敵うとしたらあの人くらいかなぁ、とりあえず牢に行かれたら困るから足止めさせてもらうね、僕が勝てるとは思わないし用事があるから…じゃあ不思議ちゃん、後宜しくね」
そう言って、少年は自分の胸を触り瞬時に消える。
ブリッジ…『橋』『架け橋』…自分を何処かへ転移させたようだ。
バッ!
ドドドドドドドドドドドドドドド………
じゃ~んっ!
「はぁ~い、ワンダフルミラクルガール不思議ちゃんの登場なんだよっ!勝負なんだよっ!」
変な効果音と共に、突然どこからともなく桃色の髪をした少女が現れた。
奇抜な…魔法少女のような格好をした少女は呼び名の通り不思議としか言い様がなかった。
それはその後すぐに突入した戦いですぐに示された。
--------------
◇
<港町シー・クレット>
「直ぐに船を出して、これは国からからの命令よ」
「ひ、姫様っ!?は、はいわかりやした!」
港町シー・クレットでは次の大陸に渡るため、夜間の出航交渉を佰仟達が行っていた。
無茶な要求であるため、交渉は難航していたが一国の姫が顔を見せた事によりあっさりと出航準備は整った。
「ではでは、あたくしは都に戻るわ。くれぐれも気をつけて」
「あぁ、すまない、助かった」
バサッ!
ルールは竜に乗り、夜空へと飛び立っていった。
(だけどけど…何故わざわざ船で行くのかしら?仲間の一人に移動手段を持つ便利な能力の持ち主がいるのに…)
--------------
「では、俺達三人は先に船で行くぞ」
「出航であります」
「………」
「ごめんにゃ!用事を済ませたらすぐに向かうよぅ!」
(こころん、頼むにゃ!皆には黙ってて!)
「………」
佰仟、殺、こころを乗せた船は暗い海へと出航する。
港にはエレとアイが残っていた。
「エレさん、アタシ達だけ残ってどうするの?急に用事に付き合ってって言ってたけど……」
アイはエレに何も聞かされておらず、困惑していた。
エレメントは出航直前に全員に自分とアイは用事を済ませてから行くと嘘をつき、皆に先に行くように促していた。
無論、心を読んだ古心はそれにすぐに気づいてはいたが…何も言わず…三人は正規ルートからの突入、援護を果たすべく先へ向かったのだった。
残されたアイは何の事かわからず、エレに質問する。
「……アイちゃん、今すぐ研究所に乗り込むにゃよ」
「……えっ!?」
「ナナシには嘘をついてたにゃ、私の力はそんなにやわじゃないよ。海だって水にゃ、操れる。本当はナナシに任せようと思ったけど……リーちゃんが酷い目に合う予感がしてならないんだ。だから私達も海底から乗り込むにゃ!」
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