従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々

ソラリアル

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第68話 あの人の能力と自分の能力

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「もう怒らないでくださいよー」

「これが怒らずにいられるか!本当にお前は……」

「でも、乗り心地はいいでしょう?
それに、俺の知ってる人以外は通れないように、
記憶も組み込んでありますから大丈夫です!」

「はぁ……何が大丈夫なんだよ……
もう行く前から疲れたわ。
馬車を動かす役を、アーロンのとこから連れてきてもらってて本当に良かったぜ。
他の奴には任せられなかったからな……」

「ははは……
あ、そういえば馬車を動かしてくれてる人って、
アーロンさんにお願いしてたんですね。
突然現れたからびっくりしました。でも、すごく無口な人ですよね?」


馬車に乗り込み、ガーノスさんの怒声が響く中、
いつの間にか現れていた、鎧をまとった兵士。
普通の兵士というよりも、装備がやけに豪華で、明らかにお金がかかっている。
なるほど、アーロンさんから借りてきた兵士だと聞いて納得した。

一言も喋らないのは、そういう教育なのかな――なんて思っていたら、
ガーノスさんがとんでもないことを口にした。


「あれはアーロンが作った“人造体”と呼ばれる人形だ。
いつもアーロンにくっ付いてるクロノスも、そうだぞ?」

「え?! でも、あの人……喋ってましたよ?!」

「クロノスには、アーロンと仲良くなった精霊が宿ったらしくてな。
そのせいで喋るようになったんだと。
だが、通常の人造体は意思を持って動くが、喋りはしねぇ。
そもそも、人造体を作れるのはあいつ一人だけだ。
意思を持つ動く人形なんて、見たことねぇよ」

「ほえー……
すっごいスキルですね。それじゃあ、兵隊作り放題じゃないですか」

「そう思うだろ? だが、あいつは自国の警備に使ってるだけだ」

「あー……アーロンさんらしいですねー」


兵士さんの正体が“人造体”だと知り、俺は素直に驚いた。
人を作れるスキルなんて、使い方次第では恐ろしいことになる。

でも――
アーロンさんなら、そんなことはしない。
だからこそ、この力を持っているのがアーロンさんで良かったんだろうな、と思えた。

すると、頭の中でエマがそっと補足してくる。


【……検索しました。
そのスキルは、転生時に得たSSSスキルの一つです】

「あ……あ。あー、なるほど……」

【転生者特有の、規格外のSSSスキルです。
しかし、この世界には他にも転生者はいますが、
アーロン陛下やマスターほど規格外なスキルを得た者は、過去にいません。
ですから――
色々と“おかしい”のですよ、マスターは】

「なんと……酷いエマ……」


エマの説明で、アーロン国王の人造体生成が転生スキルだと分かり、納得する。
ただし、「おかしい」と淡々と言われたのは、ちょっと心に刺さった。
最近、ロウキに似てきたんじゃないだろうか、このAI……
なんて思いつつ、次にアーロンさんと会ったら、転生時のスキルについてもう少し話を聞いてみたいな、と思った。


「ところで、これから行く研究施設って、放置された施設なんですか?」

「ああ、まだ詳しく話してなかったな。
あそこは元々、マルセル・ヴェルミスっていう男爵の領地でな。
魔法研究のために施設を建てたが、成果が出ずに手放した場所だ」

「じゃあ、今は誰のものでもない?」

「一応、売却予定だったがな。
ヴェルミス男爵はあまり良い噂を聞かねぇから、買い手がつかずに放置されてたらしい。
それが最近、中で何かが動いてるとか、妙な声が聞こえるって話が出てきてな。
近くの街の連中から噂が上がってきた。」

「……嫌な予感しかしませんね」

「だろ? 噂かもしれねぇが、魔獣を違法改造してるんじゃねぇかって話が、王都にまで届いた。
それがたまたま騎士団の耳に入って、俺たちに調査依頼が来たってわけだ」

「でも、なんで王国の騎士団が直接行かないんですか?」

「この手の調査は、まず冒険者ギルドが請け負う決まりなんだ。
腕の立つ奴らが多いからな。
それで、状況次第で国が動く――そんな流れだ」

「あー……なるほど」


話を聞けば聞くほど、嫌な予感は強まっていく。
放置されていた研究施設。
魔獣の違法改造の噂。

ただの噂ならいい。
だけど、もし本当だったら――
絶対に許せない。

胸の奥が、じわりと熱くなった。


「もし……違法改造された魔獣がいた場合って……」

「最悪の場合は、駆除だろうな。
制御不能なら、生かしておけねぇ」

「……ですよね。」

「だからこそ、お前たちに頼もうと思ったんだ。
もしかしたら、どうにかできるかもしれねぇってな」

「……どうにか、したいですよね……」

「人間は懲らしめてもいいのか?」

「クロがやると殺しちゃうから、
ガーノスさんの指示されたことだけやろうね?」

「チェッ!」

「まぁ……確かにな。
お前たちが本気を出せば、人間なんてすぐ死ぬ。
その場その場で俺が判断する。だから、勝手に動くなよ」

「任せろ! 俺たちは強いからな!」


違法改造された魔獣がいれば、最悪、命を奪わなければならない。
理屈では分かっていても、実際にそう言われると、胸が重くなる。
だからこそ――
そうならないように、俺にできることがあるなら、全力でやりたい。

今回は、魔獣だけじゃなく、人間とも向き合う依頼になるかもしれない。
それが嫌で、怖くて、気が重い。
それでも――
一匹でも多くの命を救いたい。

その想いだけが、俺の背中を強く押していた――









「初めて来る場所ばかりですけど、やっぱり王都以外にも、小さな村とかたくさんあるんですね」

「まぁな。
本当に小さな村から、小規模の町、割と大きな街までいろいろあるぜ。
それぞれ爵位持ちの貴族が領地として治めていて、それらをまとめて管理してるのが王都ってわけだ」

「異世界ですねぇ……なるほどー……」


快適に走る馬車の窓から外を眺めていると、
俺が今まで見たこともないほど、家々が立ち並んでいるのが目に入った。

知らないだけで、この土地には本当に多くの人たちが暮らしている。
この一帯が誰の領地なのかは分からないけど、
広がる景色は、どこを切り取っても“異世界らしさ”に満ちていた。


「でもな、ヨシヒロの領地ほど自由気ままな場所はねぇけどな。
貴族ってやつは、良い奴もいるが、大抵は野心家で傲慢な連中が多い。
そこに住むのが嫌になって、王都まで出てくる領民も多いって聞くぞ」

「よくある話ですねー……
俺の領地には、この子たちしかいませんから。
そう考えたら、安心安全ですよ」

「まぁ、魔王城だけどな。」

「言わないで! 魔王城なんて言わないで!」


ガーノスさんは「ヨシヒロの領地ほど自由な場所はない」と言いながら、
最後に「魔王城だけどな」と豪快に笑った。

魔王城なんて名前、付けた覚えはない。
勝手に国が「魔王がいる」、「魔王は冒険者をしてくれている」とか言い出しただけなのに!

そんな心の叫びを押し殺しながら、
俺は再び窓の外へと視線を戻し、初めて見る景色を静かに楽しんでいた。
すると、ふと冒険者たちの旅の食事事情が気になり、ガーノスさんに聞いてみた。


「ガーノスさん。
冒険者の人たちって、長旅の時はご飯とか持ってきてるんですか?」

「ああ。短い旅なら、パンと干し肉が定番だな。
あとはドライフルーツ。
現地で肉や魚を調達して調理することも、よくある」

「えー! ガーノス可哀想だぞ、主!」

「まぁ……普通はそうなんだと思うよ?」

「ガーノスさん。
今日からのご飯では、干し肉は必要ありません。
美味しいご飯を提供しますので、安心してください。」

「おれも、つくったよ。」

「あ? またアイテムボックスか? もう驚かねぇぞ!」


興味本位で聞いただけだったけど、
返ってきた答えは、想像通りの冒険者らしい内容だった。

それを聞いたクロは、露骨に同情の目を向け、
ユキはすかさず「これからは大丈夫です」と微笑み、
ミルは「自分も作ってるよ」とさりげなくアピールする。

それを見たガーノスさんは、呆れたように肩をすくめた。


「どうせまた、お前の力なんだろ?」


……いやいや、正確には俺のじゃないんだよな。
元々は、あの家の家主だった、偉大な魔法使いさんの遺産なんだけど。
それでも――
ガーノスさんに、美味しい食事を楽しんでもらえたらいいな。
そんな気持ちが、自然と胸に浮かんでいた。


「お昼、楽しみにしててくださいね!」

「へいへい。楽しみにしとくよ。」


そう言って笑うと、ガーノスさんは大きくため息を吐きながらも、苦笑していた。
そのうち、こういうことにも慣れるだろう。
ロウキたちにも、すっかり慣れて、今では友達みたいになっているし。
そう思いながら、ふうっと一息つく。

それにしても、ここから目的地までは、あと4、5日。
何事もなく、無事に辿り着ければいいけど……

そんなことを考えながら、
俺は少しだけ横になり、これからの旅路に思いを巡らせていた――
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