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第86話 田舎の景色
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「こっちは小さな村がポツポツある感じなんだなぁ。いいねぇ、平和だなぁ」
「そうだな。この辺りは自然が多く、その果実や木材を収穫するために存在している村が多い。
それに、こうした自然の中だと家畜もよく育つからな。
無理に開拓せず、自然を生かした村づくり――それが、この辺の領地を治める貴族の方針らしい」
「なるほどねぇ。
割と、いい貴族の領地なのかもしれないな。
自然も豊かだし、空気も美味しいし……のどかで癒されるー」
王都を出発してしばらく走ると、周囲の景色は一気に色を変えた。
自然が広がり、小さな家々が点々と並び、牛や馬たちがのんびりと放牧されている。
なんとも穏やかな風景。こういう場所で、静かにのんびり暮らすのも悪くないな――
そんなことを、つい考えてしまう。
「主、そういえばさっきガーノスに何か紙をもらってなかったか?」
「え? あー……忘れてた。
これ、噂をかき集めて描いたシキナのデザインだってさ」
「えー! 見せてー!」
「これが……シキナ、ですか」
「幻想的だよなぁ。
妖精の住処に咲くって聞いても、納得できる気がする」
外の景色を眺めていると、クロに声をかけられ、
ガーノスさんから受け取っていた紙の存在を思い出した。
ポケットから取り出して広げると、そこに描かれていたのは、
日本で言うところのユリに似た形をした花だった。
この姿なら、もし咲いていればすぐに分かりそうだ。
「この花を妖精からもらえたら、ユキの母ちゃんに会えるんだよな?」
「そうだね。
どうやって対話するのかは分からないけど……
この花を譲ってもらえたら、きっと会えるはずだ」
「ユキ。ユアに会えたら、何を伝えたいのだ?」
「えっと……まずは、元気に育っていますって。
それから……母上の名前を、ちゃんと直接ご報告したいです。
あと、母上が契約していた精霊が、今も僕を護ってくれていますっていうことも……」
「そうか……あいつ、喜ぶだろうな」
花の絵をじっと見つめていたユキに、ロウキが静かに問いかける。
少し考えたあと、ユキは今の想いを一つずつ言葉にして、ふっと微笑んだ。
その笑顔を見たロウキは、何とも言えない表情を浮かべていた。
――叶えられるものなら、すぐにでも叶えてやりたい。
きっと、そう思っているんだろう。
だけど今回は、妖精たち次第という部分が大きい。
隠されている妖精の住処が、俺たちに見つかるのかも分からないし、
人間である俺に、心を許してくれるかどうかも分からない。
こういう時、妖精と仲良しの知り合いでもいればよかったんだけど……
さすがに、そんな都合のいい話はないよな。
そんなことを考えながら、
どうかこの花を譲ってもらえますように――と、祈るばかりだった。
◇
「お腹空いたーー!」
「もうすぐ出来るから、クロ運んでくれるー?」
「とっても美味しそうな匂いです!ヨシヒロ様!」
「だろう? これは絶対に美味いぞー!」
馬車を走らせること数時間。
あっという間に日が暮れ、空には星々が瞬き始めていた。
当然のようにお腹も空いてきたところで、
一度馬車を停め、今夜は青空ご飯にすることにした。
家でもよく外で食事はするけれど、
こうして旅先で、皆と囲む青空ご飯は格別だ。
そんなことを思いながら、持ってきていた調理道具を広げ、せっせと料理を始める。
するとすぐに、美味しそうな匂いが辺りに広がり、
早く食べさせろと言わんばかりに、皆の目が輝き始めた。
「主、今日のご飯はなーに?」
「まずは、レッドサーモンと玉ねぎときのこのホイル包み焼き!
俺が生成したバターと味噌で味付けしてあるから、絶対美味いぞー!
サーモンはほぐしてあるし、玉ねぎときのこは旨みをたっぷり吸ってる。
骨も取ってあるから、これをご飯の上にかけまーす!」
「あああっ! いい匂いーー!!」
「あとは、いつもの野菜スープ!
それと、デザートにルミグミのケーキを焼きました!
ミルが作ってくれたのを保存しておいて正解だったな。
さぁ、食べますよー!」
「はーーーいっ! いただきまーーす!」
今日のご飯は魚料理。
いつも肉料理が多いから、たまには魚で栄養を取らないと。
ルーナもいるし、シンゴも食べやすいだろうと思って決めた献立だ。
下ごしらえは家で済ませていたから、焼くだけ・温めるだけであっという間に完成。
皆で「いただきます」をして、それぞれ口に運んだ。
「んーーっ! 美味いっ!
やっぱり魚料理にして正解だったなぁ!」
「俺これ好きだ! 毎日でも食べたい!」
「あるじさま、とっても美味しいです!」
「うむ……悪くない。おかわりはあるのだろうな?」
「ヨシヒロ様!帰ったら皆にも食べてもらいましょう!」
スプーンですくって一口食べると、
きのこの旨みがふわりと広がり、サーモンの塩気がご飯と絡む。
思わず目を閉じてしまった。
やっぱり和風料理はいい。
夜風は涼しく、食事で温まった体を心地よく冷やしてくれる。
それだけで、ご飯の美味しさが倍増した気がした。
スープも野菜がゴロゴロ入っていて、味もしっかりしているから、いくらでも飲めそうだ。
ふと皆の顔を見ると、俺と同じような表情で、黙々と頬張っていて、
思わず、笑ってしまった。
――こういう時間こそが、本当の意味での「幸せ」なんだろうな。
そう、心から思えるひとときだった。
「マンマ! パッパ! ごはん、美味しいね!」
「ふふっ。そうね。
ちゃんと食べて偉いわよ、シンゴ」
ルーナが穏やかに微笑む横で、
シンゴは小さな翼をパタパタさせながら、運ばれてくるスプーンのご飯を一生懸命食べている。
もちろん、食べさせているのは俺だ。
自分のご飯を食べつつ、子供にも食べさせる。
これが、思った以上に大変だ。
俺の場合は、自分が一口食べて、次にシンゴへ――
その繰り返し。
世間では、子供に食べさせ終わったあと、
冷めきった料理を親が食べる、なんて話もよく聞くけど……
食事ひとつ取るのも、本当に大仕事なんだなと、しみじみ思った。
「あと2日か……
何事もなく、無事に到着できるといいけどな」
「大丈夫だって、主!
皆一緒なんだから、きっとうまくいくよ!」
「はは……そうだな。」
ぽつりと漏れた言葉。
深い意味があったわけじゃないけど、やっぱり漠然とした不安はある。
それを察したのか、クロがバシバシッと背中を叩き、
「皆いるから」とニカッと笑った。
――本当に、俺は皆がいなきゃとっくに潰れてたと思う。
だからこそ、今回はいつも以上に頑張ろう。
そう一人で気合を入れながら、
皆の願いが叶いますようにと、夜空を見上げてそっと祈った――
「そうだな。この辺りは自然が多く、その果実や木材を収穫するために存在している村が多い。
それに、こうした自然の中だと家畜もよく育つからな。
無理に開拓せず、自然を生かした村づくり――それが、この辺の領地を治める貴族の方針らしい」
「なるほどねぇ。
割と、いい貴族の領地なのかもしれないな。
自然も豊かだし、空気も美味しいし……のどかで癒されるー」
王都を出発してしばらく走ると、周囲の景色は一気に色を変えた。
自然が広がり、小さな家々が点々と並び、牛や馬たちがのんびりと放牧されている。
なんとも穏やかな風景。こういう場所で、静かにのんびり暮らすのも悪くないな――
そんなことを、つい考えてしまう。
「主、そういえばさっきガーノスに何か紙をもらってなかったか?」
「え? あー……忘れてた。
これ、噂をかき集めて描いたシキナのデザインだってさ」
「えー! 見せてー!」
「これが……シキナ、ですか」
「幻想的だよなぁ。
妖精の住処に咲くって聞いても、納得できる気がする」
外の景色を眺めていると、クロに声をかけられ、
ガーノスさんから受け取っていた紙の存在を思い出した。
ポケットから取り出して広げると、そこに描かれていたのは、
日本で言うところのユリに似た形をした花だった。
この姿なら、もし咲いていればすぐに分かりそうだ。
「この花を妖精からもらえたら、ユキの母ちゃんに会えるんだよな?」
「そうだね。
どうやって対話するのかは分からないけど……
この花を譲ってもらえたら、きっと会えるはずだ」
「ユキ。ユアに会えたら、何を伝えたいのだ?」
「えっと……まずは、元気に育っていますって。
それから……母上の名前を、ちゃんと直接ご報告したいです。
あと、母上が契約していた精霊が、今も僕を護ってくれていますっていうことも……」
「そうか……あいつ、喜ぶだろうな」
花の絵をじっと見つめていたユキに、ロウキが静かに問いかける。
少し考えたあと、ユキは今の想いを一つずつ言葉にして、ふっと微笑んだ。
その笑顔を見たロウキは、何とも言えない表情を浮かべていた。
――叶えられるものなら、すぐにでも叶えてやりたい。
きっと、そう思っているんだろう。
だけど今回は、妖精たち次第という部分が大きい。
隠されている妖精の住処が、俺たちに見つかるのかも分からないし、
人間である俺に、心を許してくれるかどうかも分からない。
こういう時、妖精と仲良しの知り合いでもいればよかったんだけど……
さすがに、そんな都合のいい話はないよな。
そんなことを考えながら、
どうかこの花を譲ってもらえますように――と、祈るばかりだった。
◇
「お腹空いたーー!」
「もうすぐ出来るから、クロ運んでくれるー?」
「とっても美味しそうな匂いです!ヨシヒロ様!」
「だろう? これは絶対に美味いぞー!」
馬車を走らせること数時間。
あっという間に日が暮れ、空には星々が瞬き始めていた。
当然のようにお腹も空いてきたところで、
一度馬車を停め、今夜は青空ご飯にすることにした。
家でもよく外で食事はするけれど、
こうして旅先で、皆と囲む青空ご飯は格別だ。
そんなことを思いながら、持ってきていた調理道具を広げ、せっせと料理を始める。
するとすぐに、美味しそうな匂いが辺りに広がり、
早く食べさせろと言わんばかりに、皆の目が輝き始めた。
「主、今日のご飯はなーに?」
「まずは、レッドサーモンと玉ねぎときのこのホイル包み焼き!
俺が生成したバターと味噌で味付けしてあるから、絶対美味いぞー!
サーモンはほぐしてあるし、玉ねぎときのこは旨みをたっぷり吸ってる。
骨も取ってあるから、これをご飯の上にかけまーす!」
「あああっ! いい匂いーー!!」
「あとは、いつもの野菜スープ!
それと、デザートにルミグミのケーキを焼きました!
ミルが作ってくれたのを保存しておいて正解だったな。
さぁ、食べますよー!」
「はーーーいっ! いただきまーーす!」
今日のご飯は魚料理。
いつも肉料理が多いから、たまには魚で栄養を取らないと。
ルーナもいるし、シンゴも食べやすいだろうと思って決めた献立だ。
下ごしらえは家で済ませていたから、焼くだけ・温めるだけであっという間に完成。
皆で「いただきます」をして、それぞれ口に運んだ。
「んーーっ! 美味いっ!
やっぱり魚料理にして正解だったなぁ!」
「俺これ好きだ! 毎日でも食べたい!」
「あるじさま、とっても美味しいです!」
「うむ……悪くない。おかわりはあるのだろうな?」
「ヨシヒロ様!帰ったら皆にも食べてもらいましょう!」
スプーンですくって一口食べると、
きのこの旨みがふわりと広がり、サーモンの塩気がご飯と絡む。
思わず目を閉じてしまった。
やっぱり和風料理はいい。
夜風は涼しく、食事で温まった体を心地よく冷やしてくれる。
それだけで、ご飯の美味しさが倍増した気がした。
スープも野菜がゴロゴロ入っていて、味もしっかりしているから、いくらでも飲めそうだ。
ふと皆の顔を見ると、俺と同じような表情で、黙々と頬張っていて、
思わず、笑ってしまった。
――こういう時間こそが、本当の意味での「幸せ」なんだろうな。
そう、心から思えるひとときだった。
「マンマ! パッパ! ごはん、美味しいね!」
「ふふっ。そうね。
ちゃんと食べて偉いわよ、シンゴ」
ルーナが穏やかに微笑む横で、
シンゴは小さな翼をパタパタさせながら、運ばれてくるスプーンのご飯を一生懸命食べている。
もちろん、食べさせているのは俺だ。
自分のご飯を食べつつ、子供にも食べさせる。
これが、思った以上に大変だ。
俺の場合は、自分が一口食べて、次にシンゴへ――
その繰り返し。
世間では、子供に食べさせ終わったあと、
冷めきった料理を親が食べる、なんて話もよく聞くけど……
食事ひとつ取るのも、本当に大仕事なんだなと、しみじみ思った。
「あと2日か……
何事もなく、無事に到着できるといいけどな」
「大丈夫だって、主!
皆一緒なんだから、きっとうまくいくよ!」
「はは……そうだな。」
ぽつりと漏れた言葉。
深い意味があったわけじゃないけど、やっぱり漠然とした不安はある。
それを察したのか、クロがバシバシッと背中を叩き、
「皆いるから」とニカッと笑った。
――本当に、俺は皆がいなきゃとっくに潰れてたと思う。
だからこそ、今回はいつも以上に頑張ろう。
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皆の願いが叶いますようにと、夜空を見上げてそっと祈った――
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