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しゃんゆぅ

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「…ですから……で……」


後ろの方であの子の声が聞こえる。
休みだと言うのに上司から仕事の電話。
私と話す時より少し固くて低いトーンの声。
私の知らない声。

私より一つ年下だけど、しっかりして上司の覚えも良く、今は何か大きな仕事を任されたのだと沢山頑張っているすごい子なのだ。
今日は珍しくあの子のリクエストのカレーライスとポテトサラダを作りながら、私の頭にはもう何回よぎった過ったよぎったかもわからない「もし」が語り出す。

もし、もし
あの子が母親になったらどんな風になるのだろう。
仕事が出来てしっかりしてて、頭の良い彼女のことだからきっと子供の「なぜなに期」にはきっちり答えて、子供の知りたいことや学びたい事を教えられる賢くも優しい母になるのだろう。

いや、もしかしたら一番最初に辞書や図鑑の引き方や調べ方を教えて、一緒に知りたい事を探すのだろうか?
後輩を育てるのが上手なあの子の事だ、自分が居ない時にすぐ調べられて次の「なぜ」を見つけられるように。

知らないからと馬鹿にせず、くだらない事を聞くなと罵らず。
あの子は優しく伸びやかに子を愛すのだろう。

それはあの子にとって途方もない幸福になるだろう、と。
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