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11 トラヴィス伯爵邸にて_04
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馬車や人が多く行き交う領都の街中を、斎木さんはゆっくりと車両を進めていく。
すると、……。
深緑色の国防色にカラーリングしたパジェロの周りを、物珍しさもあってか、街の人々がぐるりと取り囲んでしまった。
彼ら彼女らは、口々にヤムントの現地語で何事か叫んだり、窓ガラスに手形を付けたり、鉄板のボディをバンと叩いたりする者もいた。
「何だか、……。人がいっぱいいるんですねぇ?」
私(英子)が率直に思ったまま、斎木さんにそう言ったところ、……。
「えぇ、……。全くです!」
斎木さんは少し苛立ったのか、それとも現地人の安全を確保するためなのか、……。
クラクションを立て続けに鳴らすと、周りの人々は「わっ!」といって距離を取る。
「何か物見高い人が、多いんですかねぇ」
「えぇ。現地では、日本車がオーバーテクノロジーで珍しいですからな!」
そうこうしていると、どんどん人が集まってくる。
「また囲まれちゃいましたね?」
「ふぃ~~っ。一体何なんだ、アイツら、……」
何だか、斎木さんにしては珍しく眉間に皺を寄せているなぁ。
英子は彼のその表情に、少しだけヒヤッとした気持ちになった。
すると、……。
斎木は人々に車両が取り囲まれることのないよう、クラクションを今度は長押しして威嚇(いかく)すると、……。
再び人々が離れたところを見計らって、ギアを2速に入れて車両を急発進させた。
そのままスルスルと3速、4速とギアを上げていって、時速50キロくらいに達した辺りで、漸く斎木はいつもの笑顔に戻った。
車窓を眺めると、商店や工務店、様々な住宅が軒を連ねて並んでいる。
その風景は、東欧の田舎町の長閑(のどか)な風景にもどこか似ていて、……。
でも、時代がかった感じでもなく、これが現在進行形で人々の生活が営まれている街並みなのだ。
腕時計を見ると、そろそろ夕方に迫っていて、……。日が段々と陰り始めると、建物の影の色が濃くなっていった。
「英子さん、……。そろそろ宿に到着します。浴槽のある部屋を取っておきましたから、今晩はゆっくり休んで下さい」
「はい」
その宿の前に到着すると、制服を着た宿のボーイが近づいてきて、斎木側の運転席の窓を軽くノックした。
斎木が電動窓を開けても、相手は特に驚いた表情をしていない。
ふぅ~ん。見慣れているのかなぁと英子は思った。
「いつものヤードは空いてるかね?」
「はい。サイキ様の運転でお願い致します」
「OK!」
その後、斎木は車両を徐行させてから、高級そうな馬車が数台収納されている屋根付きの駐車場に移動させた。
そのまま2人で車を降りると、先ほどのボーイがヤードの開閉扉をガラガラと閉じた。
「英子さん、ここの食事はとても美味いと評判なんです。楽しみにして頂けると、ありがたいですな!」
そう言って、斎木はニコリと笑った。
馬車や人が多く行き交う領都の街中を、斎木さんはゆっくりと車両を進めていく。
すると、……。
深緑色の国防色にカラーリングしたパジェロの周りを、物珍しさもあってか、街の人々がぐるりと取り囲んでしまった。
彼ら彼女らは、口々にヤムントの現地語で何事か叫んだり、窓ガラスに手形を付けたり、鉄板のボディをバンと叩いたりする者もいた。
「何だか、……。人がいっぱいいるんですねぇ?」
私(英子)が率直に思ったまま、斎木さんにそう言ったところ、……。
「えぇ、……。全くです!」
斎木さんは少し苛立ったのか、それとも現地人の安全を確保するためなのか、……。
クラクションを立て続けに鳴らすと、周りの人々は「わっ!」といって距離を取る。
「何か物見高い人が、多いんですかねぇ」
「えぇ。現地では、日本車がオーバーテクノロジーで珍しいですからな!」
そうこうしていると、どんどん人が集まってくる。
「また囲まれちゃいましたね?」
「ふぃ~~っ。一体何なんだ、アイツら、……」
何だか、斎木さんにしては珍しく眉間に皺を寄せているなぁ。
英子は彼のその表情に、少しだけヒヤッとした気持ちになった。
すると、……。
斎木は人々に車両が取り囲まれることのないよう、クラクションを今度は長押しして威嚇(いかく)すると、……。
再び人々が離れたところを見計らって、ギアを2速に入れて車両を急発進させた。
そのままスルスルと3速、4速とギアを上げていって、時速50キロくらいに達した辺りで、漸く斎木はいつもの笑顔に戻った。
車窓を眺めると、商店や工務店、様々な住宅が軒を連ねて並んでいる。
その風景は、東欧の田舎町の長閑(のどか)な風景にもどこか似ていて、……。
でも、時代がかった感じでもなく、これが現在進行形で人々の生活が営まれている街並みなのだ。
腕時計を見ると、そろそろ夕方に迫っていて、……。日が段々と陰り始めると、建物の影の色が濃くなっていった。
「英子さん、……。そろそろ宿に到着します。浴槽のある部屋を取っておきましたから、今晩はゆっくり休んで下さい」
「はい」
その宿の前に到着すると、制服を着た宿のボーイが近づいてきて、斎木側の運転席の窓を軽くノックした。
斎木が電動窓を開けても、相手は特に驚いた表情をしていない。
ふぅ~ん。見慣れているのかなぁと英子は思った。
「いつものヤードは空いてるかね?」
「はい。サイキ様の運転でお願い致します」
「OK!」
その後、斎木は車両を徐行させてから、高級そうな馬車が数台収納されている屋根付きの駐車場に移動させた。
そのまま2人で車を降りると、先ほどのボーイがヤードの開閉扉をガラガラと閉じた。
「英子さん、ここの食事はとても美味いと評判なんです。楽しみにして頂けると、ありがたいですな!」
そう言って、斎木はニコリと笑った。
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