天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

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第二部「ハルコン青年期」

47 フォリア山の夜宴_08

   *          *

 ハルコンは、深夜の宿営地の敷地内を、再び指揮車のところまで戻っていく。

 とりあえず、今のところ、特にこれといった騒ぎは起こっていない。
 真夜中に興奮して怒鳴り声を上げる者もいなければ、ふらふらと他の人の寝所に顔を出す者もいない。

 さすがはシルファー団長。まだ子供だけど、王族しているだけあって、下々の者が羽目を外すなんてこともないようだ。

 辺りには、宴が終わって数時間経つというのに、いまだに翼竜の肉を焦がした匂いや、脂のぎとっとした旨味成分たっぷりの匂いが充満していた。

「まぁ、……私の考え過ぎだったのかなぁ、……。明日も早いことだし、もう寝よう!」

 そうハルコンが、思わず独り言を漏らした、……丁度その時のことだ。

「「ウォォォ~~~~ッッンッ!!」」

 先ほど見張りを担当していたゴリネルとトラコが、天に向けて咆哮する。

 まさかっ!? 何かあったのかっ!?
 ハルコンは突然の緊急事態発生に、全神経が沸き立つのを感じた。

 次の瞬間、ハルコンの直ぐ脇を、疾風のように走り抜ける者が3名。

「えぇっ!?」

 慌てて、目でその後ろ姿を追うと、……。

 一人は、上半身裸の中年の一級剣士。
 一人は、寝間着姿の「半次郎」。
 もう一人は、普段着姿の元女盗賊だった。

「えっ、えぇ――っ!?」

 思わず大声を上げてしまったら、指揮車のドアが開いて、ミラがおそるおそる顔を出してきた。

「ハルコン、何があったの?」

 この非常時に、ご丁寧にも寝間着姿だ。ミラの後ろには、両殿下と女占い師の3人が、寝ぼけ眼(まなこ)でこちらの様子を窺っていた。

 ミラのヤツ、護衛もへったくれもあったものじゃないなぁと、こちらが思わず苦笑いを浮かべると、……。
 みるみるうちに、ミラの顔は真っ赤になった。

「ミラは、持ち場を離れないで! 両殿下の護衛をお願い!」

「ワカった。ハルコンはどうするの?」

 すると、弓矢を抱えて走る女エルフを見かけた。

「女エルフさん! 一体、何事ですっ!?」

「ハルコン様っ、ゴブリンの群れが襲来しました。中には、一際大きいホブゴブリンもいますっ!!」

 どうやら、ドラゴンステーキの匂いに誘われて、現れたのかもしれない。

 そして、全団員が一気に緊急警戒態勢に入ったのだろう。
 あっという間に、宿営地一帯が、蜂の巣をつついたように大騒ぎになっていった。
 
 警鐘が鳴り響く中、上半身裸の男達が、中年の一級剣士らが先んじて突っ込んでいったことを知るや、雄叫びを上げて、次々と後を追って暗闇の向こうに走っていってしまった。

「えっ!? えぇ――っ!?」

 マジかよっ!? あの人達、……。何の武器も持たずに、丸腰でいっちゃったよ。
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