天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

文字の大きさ
17 / 484
第一部「ハルコン少年期」

04 ハルコンと中年の一級剣士_01

しおりを挟む
 さて、どうしようかな?
 見た目は赤子、頭脳は大人のハルコンは、ふと考えた。

 とりあえず、有能なNPCが6人もいるんだけどさ、……。
 父カイルズに会わせるのなら、最初は誰が一番適任だろう? 

 実用性ならドワーフの鍛冶士の親方、意外性で言えば、一級剣士か女盗賊なんだよなぁ。

 すると、奥の方で、母ソフィアと姉サリナが話を続けている。

「サリナ、……お父様は、来週王都から戻ってこられるわよ。良かったわね!」

「はいっ。嬉しいですっ、お母様っ!」

 ニッコリと笑い合う母と姉の様子から、ハルコンは父カイルズが家族から随分好かれているんだなぁと、思わず心がほっこりした。

 なるほど、……来週か。

「お父様が戻られたら、春までこちらでお過ごしなさるのよ。良かったわね、たっぷり甘えなさいな」

「はいっ、お母さまっ」

 ふむふむ。つまり、春先までセイントーク領に滞在するということか。

 現在、ファイルド国各地に散らばる6人のNPC達。さすがに、全員を父に面会させるのもなぁ。

 ハルコンは、とりあえずNPC達の思念に同調を試みる。実は、この2週間で、随分上手くこなせるようになってきているのだ。

 すると、……昼間っから寝ている者もいれば、徒歩の者もいる。乗合馬車に乗る者もいる。
 雪深い森林をゆくエルフもいれば、大店の商人は自家用の馬車で何処かに向かっていたりもする。
 
 鐙のない鞍だけの馬に器用に跨る女盗賊。手下の強面の男達を従えて、雪原を進んでいる。
 
 もちろん、NPC達にも今の生活があるしなぁ。こちらの都合でムリヤリ呼びつけるのも、さすがにどうかと思った。
 
 なので、ハルコンが「天啓」と呼ぶスキル、伝えたい要件をNPC達の頭の中に、さっそく放り込んでみた。

 カイルズ・セイントークに会ってみたら、きっと面白いことになると思うよ、とね。

 すると、中年の一級剣士が食いついたように、ニヤリと笑った。
 他の5人は、一瞬閃いたような顔をしていたが、直ぐに今取り組んでいる作業に戻ってしまった。

 ビンゴッ! 中年の一級剣士っ! キミに決まりだっ!

 ハルコンは、これまで6人のNPC達をじっくりと観察してきたので、凡その性格も把握済み。基本、いずれのNPC達も、その技量は非常に高く有能だということ。

 精神も落ち着いていて無駄がなく、周囲からも一目置かれており、なかなか魅力的な人物達だと言っていい。

 とりわけ中年の一級剣士は、ハルコンにとってまさに理想的だった。
 先ず長身のイケメンだということ。そして、行動や態度、声もかなりのイケメンで、思わずゾクッとすることもしばしばだった。
 
 まぁ普通に考えて、この一級剣士、相当な傑物だよっ!
 
 でも、そんな一級剣士がアポなしでカイルズに会見を求めて、無事お目通りは叶うのだろうか?
 そもそも、父カイルズは如何なる人物だろうか?

 それは、母に抱きかかえられて屋敷内を見て思ったことなのだが、……整然とした屋敷の佇まいとか、よく訓練された家臣達の様子から、いくらでも推察することができる。

 父は、相当な人格者でかなりのやり手だ。おそらく、ここぞのチャンスを決して見逃さない性質に違いない。
 
 これからしばらくの間、私は家族の世話になる。
 なら、ぜひ有能なNPC達を、父にどんどん取り立てて貰おうかな?
 そうすれば、必ずセイントーク領に莫大な利益を齎すことになるのだろうし。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...