天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

文字の大きさ
45 / 595
第一部「ハルコン少年期」

08 高まる名声_06

   *          *

 あれから数年。平和な日常が続くようになった頃、隣領の状況を報告しに、一級剣士が定期的にセイントーク領に戻ってきている。

 本日もその日で、カイルズとソフィアは、一級剣士からシルウィット領の雰囲気や状況、ありとあらゆることを細かに聞いていた。

 特に問題なのは、物資、財政の件についてだ。
 どうやら当主ローレルの経営は何とか帳尻を合わせている現状で、部下達もさ程優秀ではないらしい。

 コネ採用で官吏に登用した近隣貴族の3男坊達が、とにかくまともに働かない。
 その様子を一級剣士の口から直接語られると、カイルズとソフィアは思わず眉を顰めた。

 ハルコンは、今回もまた一級剣士の思念に同調することで、両親の様子を探っている。

「最近だが、隣領で横流しが発覚した。その尻ぬぐいに他の官吏達が余計に働いている状況で、……我には、とても目も当てられない次第と言えるか」

「ふむ、……」

 一級剣士の言葉に、カイルズは頭を抱え込んでしまった。

「あなた、……」

 ソフィアも、心配そうにカイルズの肩にそっと手を触れた。

「さて、……カイルズ殿、貴殿は我に何を求められるか? まだ現状では、ローレル殿と一部の官吏達の頑張りのおかげで、シルウイット領の存続も危ぶまれる程ではないのだが、……」

「一級剣士殿には、引き続き要人警護と領の軍事の補佐をお願いしたい。私はローレル殿を信頼している。それだけ伝われば、申し分ないだろう」

「了解した、カイルズ殿」

 ここで、3人はいったん緊張の糸をほぐす。

「ところで、一級剣士殿。ローレル殿の娘がすくすくと成長して、とても可愛らしいと噂が立っているのだが、……」

 カイルズは、少しだけ笑みを交えて話しかけた。

「ほう。ミラ嬢のことであるな?」

「確かに」

 ここで、一級剣士は顎に手をやってニヤニヤとすると、

「ミラ嬢は、おそらく東方3領一の美女となろう。性格も明るく活発で、とても優しく素直な少女であるな。将来は、近隣の貴族家全てから婚姻の申し出を集めることは間違いないな」

「それは、とても素晴らしいですね」

 ソフィアも優しく微笑んだ。

「我々セイントーク家は、将来ハルコンとミラ嬢を結婚させてはどうかと考えている。そのためには、シルウィット家が万事安泰であって貰わないと困るのだ!」

「ほう。ハルコン殿をミラ嬢と、……なるほど、それは良いお考えだ!」

 ここで、一級剣士は我が意を得たりとばかりに、大いに頷いた。

「とにかく、早いウチに、一度ミラ嬢とは会ってみたいものだな」

 カイルズの言葉に、ソフィアも同じ考えなのか笑顔で頷いていた。

 ハルコンは思った。私はまだ4歳になったばかりだぞ。貴族家って、こんな幼児の段階で将来の相手を決められてしまうのかと。
 でも、一級剣士の思念に同調していると、彼もまたカイルズの案に大いに賛成している様子。

 なら、ハルコン自身の考えはどうだろう?
 すると、自ずと見えてくることがある。

 剣士にとても懐いているミラは、屋敷内を絶えず付いて回っていて、その愛らしさや一生懸命な様は、ハルコンの目から見ても、なかなか魅力的で素晴らしい少女に思われた。

 とりあえず、一度直接会ってみてから。先ずは友人からスタートかな? 
 そうハルコンは考えていた。
感想 7

あなたにおすすめの小説

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました