天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

文字の大きさ
46 / 595
第一部「ハルコン少年期」

08 高まる名声_07

   *          *

「あぁっ、……ワシは、美味い酒が飲みたいんじゃぁ、……」

 一級鍛冶士のドワーフの親方が、心の底から強くて美味い酒が飲みたいと呟いていた。
 ハルコンは親方に思念を同調させていると、その心からの呟きに、正直同情した。

 親方には、セイントーク家は普段から世話になっているしなぁ。
 たまには恩を返さなくちゃ、……だよね。

 そう思ったら、ハルコンはさっそく前世の知識を駆使して、酒精を取り出すための銅製の蒸留器の製造アイデアを、親方の頭の中に「天啓」として放り込んでやった。

「うぉぉっぉぉぉっっ!! アルコールと水の沸点の違いを利用して、酒精を根こそぎ集めちまうのかよっ!! 全く、その発想はなかったぜっ!!」

 親方は、目の色を変えて蒸留器の製造に着手した。
 それは新しい発明や発想を前にした好奇心から、……だけではなく、むしろ自分自身強い酒精の美酒に溺れたい、楽しみたいという欲望の為せるワザ。

 呷るように、強くて美味い酒を飲みたい! 
 そんな渇望にも似た何かに心が支配され、まるで熱病患者のように魘されながら、親方は三日三晩徹夜で励んだおかげで、ついに蒸留器一号が完成した。

「よしっ! これでワインを蒸留して、酒精強化ワイン(ブランデー擬きのこと)を作っちまおうっ!!」

 親方は目を血走らせながら、内部のタンクにワインを注ぎ、下部に点火した。
 それから待つこと十数分。

 親方だけでなく、ハルコンもワクワクした気持ちで、沸点に達したアルコールが管を通ってポチョンポチョンと雫を垂らして蒸留される様子を、目を皿にして見つめていた。

 前世の晴子は、結構飲酒を嗜んでいた。そのため、この世界の生ぬるい気の抜けたようなワインには、ほとほと飽き飽きしていたのだ。

 もちろん、私自身が飲酒しているワケではないよ。NPC達に思念を同調させることで、アルコールを嗜んでいただけだよ。
 お酒は20歳を過ぎてから。もちろん、ちゃんと守っているからね。

 親方は、酒精の溜まったビーカーを、まるで宝物にでも触れるように丁重に扱うと、使い慣れたコップに注ぎ、口をつけた。

「美味いっ! 美味過ぎるっ!!」

 酒精も強くまろやかだけれど、でもどこか緊張感のある味わい。これだよこれっ!

 この世界において、蒸留器なんて代物は、親方の工房にしか存在しない。
 しばらくぶりの美味い酒に、親方もハルコンも思わずガッツポーズ。

 それから数日後、親方は工房を訪れたカイルズにさっそく飲ませてみた。

「ふぉっ!?」

 更にカイルズは目の色を変えて、こう主張する。

「これは、門外不出にするっ!」

「えぇ~っ! 何故ですかいっ!? カイルズの旦那ぁーっ!?」

 思わず、不平を漏らす親方だが。

「セイントーク領の産品は、最近耳目を集め過ぎるキライがある。しばらくの間、様子を見ておいた方がいいだろう。目を付けられたら、厄介だしな!」
 
 確かに、カイルズの言っていることは、概ね正しい。

「だが、……納得いかねぇ、……」

 そう呻いた後、漸く親方は頷くのであった。
感想 7

あなたにおすすめの小説

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました