天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

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第一部「ハルコン少年期」

13 異世界チートの及ぶ範囲で_05

   *          *

 ハルコンは、中年の商店主のNPCの思念に同調させると、商談で訪れたロスシルド邸でのやり取りをつぶさに観察した。
 ロスシルド家と商店主、その両者のやり取りは、大変生々しかった。

 当主のジョルナムは、王都からの勅令で普請を言い渡されたことに、大変立腹していた。
 その腹いせに、人夫をロスシルド領内だけで粗方押さえてしまえば、残り2領に嫌がらせができると算段していたように思われる言動がいくつもあった。

 だが、蓋を開けてみると、セイントーク領から齎された新技術と獣人達のネットワークが構築されたことで、工事は3領とも達成できそうな状況に変化してしまった。

「何かがおかしい。今までとはまるで違うぞ! これは一体どうしたと言うんだ!?」

 興奮したジョルナムに、商店主のNPCは冷静にこう告げた。

「ひとえに技術革新と獣人ネットワークですな。今後のことを鑑みるに、ロスシルド領は、セイントーク領と改めて友誼を結ぶべきかと」

「はっ、何を言っている? 今更友誼を結び直せだと? 我が領は歴史のある名門貴族だぞ! 経済貴族や平民の成り上がりどもに、今更どのツラを下げて接すればいい? 見くびるなよ、商人風情が!」

「えぇ、ご尤もでございます」

 地元最大の商店主の控えめな態度に、ジョルナムも一度ヒートダウンした。

「まぁ確かにな。隣領から持ち込まれた娯楽遊具リバーシを、私はとても気に入っている。シンプルだが、実に奥が深い。よくぞこんな代物を思い付いたものだ。だがな、私はとても腹立たしく思っている。何故なら、価格が非常に安いからだ!」

「ここ最近、セイントーク領で開発された商品の数々は、どれも大変安価ですからな。領民の負担にならず、その生活を豊かにすることを目的とした商品と言えるでしょう」

「それが、私には非常に気に食わない。故に、ロスシルド領ではできるだけ関税を高くして、領民の手に渡りにくくしているのだよ」

 それは、領内産業維持という名目によるのだそうで。
 このやり取りを見ていたハルコンは、思わず眉をひそめた。

 いやぁ、こんなのって詭弁でしょ!?
 大体、セイントーク領産のものは、ロスシルド領の競合商品ではないからね。

 とにかく、ロスシルド領の人々の許に、なかなかセイントーク領の恩恵は届かない。
 ハルコンは、思念を同調させた中年商人の目を通して、歯痒い気持ちでじっと見つめていた。
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