天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

文字の大きさ
89 / 583
第一部「ハルコン少年期」

15 民が救われるのなら、それでいい_03

   *          *

「ふむ。こうすれば、結果こうなって上手くいく。そのように予めワカっているような……まぁ、そういう者を我々は『賢者』とでも呼ぶべきかね?」

 王ラスキンが、率直にカイルズに訊ねてくる。宰相もじっと見てくる。

「そのような『賢者』がおられましたら、私めも隠居して、領でゆったり過ごせるのですが」

「なるほど! そうだろう、そうだろう!」

 王はそう言って宰相とお互いに顔を見合わせると、楽しそうに笑った。
 すると、宰相が女占い師の方にちらりと目をやると、

「まぁ、確かに『賢者』と言えば、一人だけ私にも心当たりがあるのだが。如何せん、まだまだ子供のようだ。あなたは、御存じですかな、女占い師殿?」

 王と宰相は、父への追及を止める気はないらしい。

 ハルコンが女占い師の視点で見ると、父カイルズが余計な事喋ってくれるなよぉ、といった表情でこちらを軽く睨んでいるのが窺えた。

 王と宰相は「賢者」の出現を心待ちにしているのか、期待に溢れた顔をされている。

「私からは何とも。占うこともできますが、如何なさいますか?」

 女占い師は、暗にこう言っているのだ。これ以上踏み込むと、カイルズの手札をムリヤリ奪うことにもなりかねませんよ、と。

 すると、王と宰相が「「まぁ、そうだろうなぁ」」とぼやいて、一度話はそこで止まった。
 ハルコンは、本日もまた父カイルズが矢面に立たされてしまい、正直申しワケないなぁと思った。

 ここで、カイルズがおもむろにこう話し出した。

「私は、これまでの政策が己の力のみで成し得た等とは微塵も思っておりません。様々な政策や社会基盤の整備、産業の促進、新商品の開発、……。あくまで民があってこそ、それらは実現して参りました。全てはラスキン国王陛下の下での統治と采配により、民が心を平らにして励んだ結果だと考えております」

「なるほど、カイルズはそのように捉えておるのか?」

「はい。善政を布く陛下のご配慮と、国民皆の努力、皆の協力、皆の創意工夫あってこそ初めて人々の生活は改善されるとの認識でおります」

「そうか、そうか、……。ならば訊ねたい。カイルズはロスシルドについて、どう考えておる? どうだろう、正直に答えて貰えるかね?」

 現状、ロスシルド領では、セイントーク領産品の模造品が大量に作られていること。
 だが、これまでカイルズはあえて権利を訴えようとはせず、沈黙を保ったままだ。

 すると、王は更に言葉を重ねて、こう訊ねてきた。

「カイルズよ! オマエが常々唱えている『民の生活が第一』は、なかなか感心できる考え方だ。だが、ロスシルドに苦情を一切言わないのも、どうかと思うぞ?」

 憂慮された表情で、カイルズに諭すように話しかける王ラスキン。

 ハルコンは、その問いに父がどう答えるのか、じっと見守った。
感想 7

あなたにおすすめの小説

姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?

果 一@【弓使い】2巻刊行決定!!
ファンタジー
 リクスには、最強の姉がいる。  王国最強と唄われる勇者で、英雄学校の生徒会長。  類い希なる才能と美貌を持つ姉の威光を笠に着て、リクスはとある野望を遂行していた。 『ビバ☆姉さんのスネをかじって生きよう計画!』    何を隠そうリクスは、引きこもりのタダ飯喰らいを人生の目標とする、極めて怠惰な少年だったのだ。  そんな弟に嫌気がさした姉エルザは、ある日リクスに告げる。 「私の通う英雄学校の編入試験、リクスちゃんの名前で登録しておいたからぁ」  その時を境に、リクスの人生は大きく変化する。  英雄学校で様々な事件に巻き込まれ、誰もが舌を巻くほどの強さが露わになって――?  これは、怠惰でろくでなしで、でもちょっぴり心優しい少年が、姉を越える英雄へと駆け上がっていく物語。  ※本作はカクヨム・ノベルアップ+・ネオページでも公開しています。カクヨム・ノベルアップ+でのタイトルは『姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~』となります。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

虐げられた前王の子に転生しましたが、マイペースに規格外でいきます!

竜鳴躍
ファンタジー
気が付いたら転生していました。 でも王族なのに、離宮に閉じ込められたまま。学校も行けず、家庭教師もつけてもらえず、世話もされず。社交にも出られず。 何故なら、今の王様は急逝した先代の陛下……僕の父の弟だから。 王様夫婦には王子様がいて、その子が次期王太子として学校も行って、社交もしている。 僕は邪魔なんだよね。分かってる。 先代の王の子を大切に育てたけど、体が弱い出来損ないだからそのまま自分の子が跡を継ぎますってしたいんだよね。 そんなに頑張らなくても僕、王位なんていらないのに~。 だって、いつも誰かに見られていて、自分の好きなことできないんでしょ。 僕は僕の好きなことをやって生きていきたい。 従兄弟の王太子襲名の式典の日に、殺されちゃうことになったから、国を出ることにした僕。 だけど、みんな知らなかったんだ。 僕がいなくなったら困るってこと…。 帰ってきてくれって言われても、今更無理です。 2026.03.30 内容紹介一部修正

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて