105 / 595
第一部「ハルコン少年期」
17 ミラの縁談_07
* *
シルファー第二王女殿下に招かれ、ハルコンとミラは王族専用の馬車に乗った。
ハルコンもミラも貴族の子供達だから、贅沢な内装の馬車にはこれまで何度も乗ったことがある。
確かに、今回の馬車は3頭立てで、容量も広いタイプだ。でも、客室の内装は極力簡素に仕上がっており、クッションのみに頼って長旅を凌いできたことが見受けられた。
「思ったよりも普通でしょ?」
「「そうですね」」
自然と、ハルコンとミラの言葉がハモる。
おそらく、ミラはハルコンがドワーフの親方に言って作らせた快適な馬車を知っているため、それと比較してしまったのだろう。
「私、聞いたんですよ。セイントーク領には、最新鋭の馬車があるって。私の乗るこの馬車は、もう15年落ちです。もしかすると、あまり快適ではないのかもしれませんね」
ハルコンとミラの心を見透かすように、殿下が微笑まれた。
「セイントーク領の工場で作っている馬車には、板バネという地面から伝わる車輪の振動を和らげる装置を使っています。そうすると、車酔いや乗り疲れがかなり改善されると思いますよ」
「へぇー。ハルコン様は随分、物知りでいらっしゃいますのね?」
さも興味深そうに、ハルコンの目の奥底まで覗き込むように見つめてこられる。
殿下は美人で意志的で、とにかく迫力がおありだ。彼女の物事に対する訴求力というか、執着力こそが、王族を王族たらしめるのではないかとハルコンは思った。
セイントーク邸に到着するまで、ハルコンとミラは殿下からあれこれと様々な質問攻めに遭っていた。
先程の戦闘の際の体捌きとか、ミラの棒捌きとか。2人が森で何をしていたのかとか。
ハルコンがどの質問にも正直に誠実に答えるため、気を良くされたシルファー殿下は、先程の襲撃の後にも拘わらず、終始リラックスしたご様子だ。
ハルコンも、殿下が楽しまれておられるので、内心ホッとした。
殿下は王族だけど圧迫感のない、むしろ気さくに接して下さるお方だ。
ミラも、当初王族相手とあってガチガチに緊張していたのだが、殿下のきめ細やかな心遣いに触れて、自然と笑みがこぼれていた。
途中、普請工事の終わった上水道の脇を通ることがあった。
「ハルコン様、いくつかお訊ねしてもよろしいですか?」
「はい、何なりと仰って下さい!」
ハルコンも笑顔で応じる。
「工事の関係者が、もう現場には誰も残っていないようですが、……。いくら何でも、工事の完成には、いささか早過ぎはしませんか?」
「まぁ、……そうですかね」
ハルコンは、殿下が探りを入れてきたのかなぁと直ぐに察した。なので、言葉は極力簡潔に、正確に話さなくちゃダメだと思った。
「もしかすると、もうセイントーク領の工事は終わっているのでしょうか?」
「はい。先月の末には」
ニッコリと答えるハルコン。
シルファー殿下は、ハルコンの言葉に嘘偽りがないことを悟ったのか、真面目な表情でひとつ頷かれた。
シルファー第二王女殿下に招かれ、ハルコンとミラは王族専用の馬車に乗った。
ハルコンもミラも貴族の子供達だから、贅沢な内装の馬車にはこれまで何度も乗ったことがある。
確かに、今回の馬車は3頭立てで、容量も広いタイプだ。でも、客室の内装は極力簡素に仕上がっており、クッションのみに頼って長旅を凌いできたことが見受けられた。
「思ったよりも普通でしょ?」
「「そうですね」」
自然と、ハルコンとミラの言葉がハモる。
おそらく、ミラはハルコンがドワーフの親方に言って作らせた快適な馬車を知っているため、それと比較してしまったのだろう。
「私、聞いたんですよ。セイントーク領には、最新鋭の馬車があるって。私の乗るこの馬車は、もう15年落ちです。もしかすると、あまり快適ではないのかもしれませんね」
ハルコンとミラの心を見透かすように、殿下が微笑まれた。
「セイントーク領の工場で作っている馬車には、板バネという地面から伝わる車輪の振動を和らげる装置を使っています。そうすると、車酔いや乗り疲れがかなり改善されると思いますよ」
「へぇー。ハルコン様は随分、物知りでいらっしゃいますのね?」
さも興味深そうに、ハルコンの目の奥底まで覗き込むように見つめてこられる。
殿下は美人で意志的で、とにかく迫力がおありだ。彼女の物事に対する訴求力というか、執着力こそが、王族を王族たらしめるのではないかとハルコンは思った。
セイントーク邸に到着するまで、ハルコンとミラは殿下からあれこれと様々な質問攻めに遭っていた。
先程の戦闘の際の体捌きとか、ミラの棒捌きとか。2人が森で何をしていたのかとか。
ハルコンがどの質問にも正直に誠実に答えるため、気を良くされたシルファー殿下は、先程の襲撃の後にも拘わらず、終始リラックスしたご様子だ。
ハルコンも、殿下が楽しまれておられるので、内心ホッとした。
殿下は王族だけど圧迫感のない、むしろ気さくに接して下さるお方だ。
ミラも、当初王族相手とあってガチガチに緊張していたのだが、殿下のきめ細やかな心遣いに触れて、自然と笑みがこぼれていた。
途中、普請工事の終わった上水道の脇を通ることがあった。
「ハルコン様、いくつかお訊ねしてもよろしいですか?」
「はい、何なりと仰って下さい!」
ハルコンも笑顔で応じる。
「工事の関係者が、もう現場には誰も残っていないようですが、……。いくら何でも、工事の完成には、いささか早過ぎはしませんか?」
「まぁ、……そうですかね」
ハルコンは、殿下が探りを入れてきたのかなぁと直ぐに察した。なので、言葉は極力簡潔に、正確に話さなくちゃダメだと思った。
「もしかすると、もうセイントーク領の工事は終わっているのでしょうか?」
「はい。先月の末には」
ニッコリと答えるハルコン。
シルファー殿下は、ハルコンの言葉に嘘偽りがないことを悟ったのか、真面目な表情でひとつ頷かれた。
あなたにおすすめの小説
元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~
きよらかなこころ
ファンタジー
シンゴはある日、事故で死んだ。
どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。
転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。
弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました