天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

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第一部「ハルコン少年期」

21 派閥と武闘大会_04

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「イィヤァァァーーーッッ!!」

「参ったぁーっ! 降参だっ、もう勘弁してくれーっ!!」

「「「「「「「「「「ウオオオォォォーーーッッ!!」」」」」」」」」」

 待ちに待った武闘大会が、……ついに火ぶたを切るように始まった。
 すると、観客の学生達は、大方の予想を超える事態をまざまざと見ることになる。

 何しろ弱小連合と揶揄されたセイントーク兄弟のサークルメンバー達が、次々と優勝候補を倒していくのだから。

 あの普段オドオドして弱っちぃヤツらが、まさか一矢報いるどころか勝ってしまうなんてっ!

 あぁっ、見ていてこちらまで勇気が湧いてくるっ! 

 もうアイツらのことバカにしないっ! これからアイツらのこと、一推しだっ!

 もう観客達のボルテージは、上がりまくり! 
 大会会場は、セイントーク兄弟の主催するサークルメンバーを称える声一色に染まっていった。

 サークルメンバー達は、自分達が主役として扱われることに、当初戸惑いを見せていたようだけど、……。

 でも、試合会場に群衆が雪崩れ込んできて、メンバー達の背中をバンバンと叩くものだから、やっと実感が沸いてきたようだね、とハルコンはニヤリと笑った。

「ウオオオォォォーーーッッ! 私達は優勝するぞぉーっ!!」

「「「「「「「「「「ウオオオォォォーーーッッ!!」」」」」」」」」」

 ハルコンの雄叫びに、メンバーも群衆も一緒になって、拳を天に向けて突き上げた。

 そもそも、兄達のサークルメンバーだけでなく、一般の学生達は皆、イメルダのサークルが怖かった。
 傲慢なイメルダ達に不満があっても、表立って苦言を呈することすらできず、日々悶々と過ごす生徒達が多かった。

 一方で、イメルダ達に反旗を翻すまではいかなくとも、一線を画している弱者連合。
 でも、多くの学生達はイメルダ達が怖くて、とても弱者連合に肩入れする勇気が持てずにいた。

 一応、学生達の不満のはけ口として、シルファー先輩が尽力してくれたそうだが、……。
 あいにく、彼女は王族特権を振りかざす人物ではないため、何か揉め事があっても完全な解決には至らなかった。

 学内に、そんな諦めムードが漂っている中、忽然とセイントーク兄弟の末弟が入学してきた。
 噂では、セイントーク産の様々な商品や料理、サービスを世に齎したといわれる、ハルコン・セイントーク。

 学生達は、今や弱者連合ではなくなったマルコム達のサークルの中心に、ハルコンを見た。

 へへへっ。思った以上に上手くいったみたい。ハルコンは、内心ほくそ笑む。
 
 それもそのはず、……サークルメンバー達に防御力重視のトレーニングを励ませ、非常に体力豊富な戦士達に仕立て上げてしまったからだ。

 とにかく相手の攻撃をひたすら受け流してやり過ごし、相手が攻め疲れたところを狙ってじっくりと反撃させる。

 そんな兵法の基本中の基本を、ハルコンはメンバー全てに実践させたのだ。

 まぁそんなことをやられてしまったら、相手は直ぐに気力を挫かれて根負けしてしまうに決まっている。

 地味だけど、非常に効果的かつクレバーなやり方かな。
 何しろ、手ぐすね引いて、相手の体力を確実に削いでゆけるのだから。

 ふふっ、メンバーだけでなく、兄達もミラも順当に勝ち進んでいるね。
 
 さて、……イメルダ達は、次にどう対応してくるのかな? 
 全く見ものだなぁと、……ハルコンは思わずクスクスと笑った。
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