天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

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第一部「ハルコン少年期」

24 ハルコンの名声_07

   *          *

 ハルコンがフゥーッとため息を吐くと、ドアをノックする音がする。
 鍵をかけていなかったので、そのままドアがスゥ―ッと開いた。

「良かったのかい? ハルコン?」

「えぇ、……まぁ」

 長身の寮長が、心配そうにハルコンに訊ねてきた。

「あいにくだが、このことを黙っているワケにはいかない。王宮に報告させて貰うが、それで構わないね?」

「えぇ、もちろんです。お手数をおかけします」

 寮長は部屋を後にした。おそらく、夜分にも拘らず、これから報告にいくのだろう。
 ハルコンは何だかどっと疲れが出てきて、思わずコロンとベッドに横になる。

 でも、本番はこれからだ。

「ヨシッ!」

 気合を入れて呟くと、ハルコンはとあるNPCの女性にアクセスを開始する。
 思念を同調させ、視野を共有すると、そこはノーマンの向かっている王都のロスシルド邸の一室だった。

 今、ハルコンがアクセスしている女性は、前世の最後、転生のための「7枚のチケット」を行使する際、女神様が用意して下さった6人のNPCの最後の一人だ。

 彼女は、弓使いの女エルフ。早馬を駆り、潜伏しながら敵を暗殺する特殊工作員。
 何だか、美容院の待合室に数十冊も置いてある、稀代のスナイパーみたいな人物だね。

 実を言うと、前世の自分が暗殺されたこともあり、なるべくなら関わりたくないNPCだ。

 でも、ロスシルド領には、相変わらず殺し屋のNPCが待機している(13 異世界チートの及ぶ範囲で_04を参照のこと)し、いつ牙を剥くかワカらない。

 ならば、こちら側からも対処できる人を送って、情報を共有しようとハルコンは思った。

 当時、弓使いの女エルフは、隣国コリンドとの国境付近にて、野盗を狩る生活をしていた。

 密貿易が盛んだったこともあり、多くの商人達が襲われていた。
 女エルフは、その野盗の大物を弓で遠距離射撃して倒してみせたことで、ジョルナム・ロスシルドから直接スカウトされるに至った。

 現在、女エルフは王都のロスシルド邸にて、要人警護の主任をしている。

 すると、夜中にも拘らず、大汗をかき、肩で息をしながら当主の長男ノーマンが屋敷の詰め所に駆け込んできた。

 ビンゴ! やっぱりここにきたねっ!
 ハルコンは、女エルフに思念を同調させながら、ノーマンとのやり取りを監視する。

「どうされましたか、ノーマン様? こんな夜更けに?」

「女エルフッ! 至急頼みがあるっ! この箱の中に仙薬エリクサーが入っているっ! 早馬を乗り継いで、隣国コリンドの宮殿まで、これを届けてくれっ!」

「仙薬エリクサー、……ですか?」

 女エルフは、何も知らないふりをして訊ねた。
 だが、先程こちらから女エルフ宛に「天啓」を送っている。

『ノーマンに仙薬エリクサーを渡したから、隣国まで運んで貰えますか?』と。

「そうだ、女エルフッ! オマエの超人的な能力なら、3日の徹夜など余裕だろ!? いいかっ、急を要するんだっ! 我がロスシルド領存亡のためにも、頼むっ!!」

 そう言って、必死になって頭を下げるノーマン。

「ワカりました。至急馬を手配し、私がこれからお届けに上がります」

「すまないっ! 恩に着るっ!」

 再び深々と頭を下げるノーマン。

 その後直ぐに女エルフは部下達に手配させ、自分は皮鎧を身に纏った。
 そんな彼女に、ハルコンはすかさず念話を送った。

『すみません。急に忙しくさせてしまいましたね?』

「いえ。ハルコン様のためを思えば、私の行いなど些末なものに過ぎません」

『ありがとうございます。中年の商人(6人のNPCの一人)さんにも連絡しておきますので、継馬は彼の事業所で行って下さい!』

「何から何まで、お心遣い大変感謝いたします」

 女エルフはそう告げると、早々に用意された馬に跨り、夜闇を猛スピードで駆けていった。
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