258 / 484
第一部「ハルコン少年期」
33 姫君ステラ・コリンドの留学 その2_03
しおりを挟む
* *
「なるほどな、……ハルコン殿。貴殿は我がファイルド国を起点として、近隣諸国にまでその影響力を及ぼそうというワケかね?」
「仰るとおりです、陛下」
最近、ファイルド国王家直々の営業活動もあり、また仙薬エリクサーが良き「見本」となったことで、近隣諸国はこぞってファイルド国にロイヤルファミリーの子弟子女を「留学」という名目で送り込んでいる。
「彼らの大半は、おそらくこう認識しているはずだ。仙薬エリクサーを開発したファイルド国が、現在近隣諸国の中で一番『科学』の発展した優等国だ。今後、学問の中心地となりつつあるファイルド国で、数年の間最新の学問を学び、多くを吸収して、本国に持ち帰るぞ! とな」
「なるほど」
「だが今回、我はコリンド国のステラ第三皇女殿下にとって、『留学』はあくまで口実に過ぎないものと思っておる」
「ならば、殿下の本来の『目的』とは一体何なのでしょう?」
すると、国王陛下は「おや?」と一瞬驚いた表情を浮かべられた。
「ハルコン殿、……貴殿はせっかく『神の御使い』だというのに、……女性の『心』というものに、ちょいとばかし疎いんじゃないのかね?」
半ば呆れた調子でお話になる陛下。
「はぁ、……」
「今後、貴殿を狙う子女がますます増えると申しておる。『神の御使い』殿、その辺り、よぉ~く心してかかられよ!」
「……、気を付けます」
こちらの若干不服な気分のこもった返事に、「それとな、……我が娘についても、よろしく頼みましたぞ!」と付け加えて、ニヤリとお笑いになる陛下。
最近の陛下は、……もう全く真意を隠すつもりがないらしい。
ハルコンは、自身の前世が女性であったのに、陛下から女性の「心」に疎いと指摘され、内心腑に落ちなかったのだが、……。
その会談から数日後、……ハルコンは王族を始めとする関係者達と共に、隣国の姫君ステラ殿下をお迎えした晩餐会に出席していた。
ハルコンは、今や王立研究院の所長を務め、子爵位まで賜っている、いっぱしの貴族だ。
他のファイルド国側の者達と同様、ハルコンもまた注意深くステラ殿下の言動を見守ることにした。
すると、ステラ殿下は馬車の中で接した時と同様に、大変穏やかで落ち着いたご様子に見受けられた。
晩餐の席で、殿下ははきはきと年相応な様子で応対する一方、隣国の情報を軽々しくお話にはならない。
外交デビューで初々しさのある反面、なかなか交渉力のあるお方だとハルコンには思われた。
ラスキン国王陛下もお妃様も、これまで長年の間敵国であった国の姫君が愛らしいのに隙がないのを見て、率直にお褒めなさっている。
一方、シルファー先輩は張り付いた笑顔を全く崩さず、ご両親とステラ殿下とのやり取りをご覧になっていらっしゃる。
おそらく今後王立学校で、シルファー先輩とステラ殿下が「ご学友」になるのは決定事項だろう。
だから、先輩は今のウチからステラ殿下の人とナリをよぉ~く見定めようとお考えなのだろうと、ハルコンは思った。
「なるほどな、……ハルコン殿。貴殿は我がファイルド国を起点として、近隣諸国にまでその影響力を及ぼそうというワケかね?」
「仰るとおりです、陛下」
最近、ファイルド国王家直々の営業活動もあり、また仙薬エリクサーが良き「見本」となったことで、近隣諸国はこぞってファイルド国にロイヤルファミリーの子弟子女を「留学」という名目で送り込んでいる。
「彼らの大半は、おそらくこう認識しているはずだ。仙薬エリクサーを開発したファイルド国が、現在近隣諸国の中で一番『科学』の発展した優等国だ。今後、学問の中心地となりつつあるファイルド国で、数年の間最新の学問を学び、多くを吸収して、本国に持ち帰るぞ! とな」
「なるほど」
「だが今回、我はコリンド国のステラ第三皇女殿下にとって、『留学』はあくまで口実に過ぎないものと思っておる」
「ならば、殿下の本来の『目的』とは一体何なのでしょう?」
すると、国王陛下は「おや?」と一瞬驚いた表情を浮かべられた。
「ハルコン殿、……貴殿はせっかく『神の御使い』だというのに、……女性の『心』というものに、ちょいとばかし疎いんじゃないのかね?」
半ば呆れた調子でお話になる陛下。
「はぁ、……」
「今後、貴殿を狙う子女がますます増えると申しておる。『神の御使い』殿、その辺り、よぉ~く心してかかられよ!」
「……、気を付けます」
こちらの若干不服な気分のこもった返事に、「それとな、……我が娘についても、よろしく頼みましたぞ!」と付け加えて、ニヤリとお笑いになる陛下。
最近の陛下は、……もう全く真意を隠すつもりがないらしい。
ハルコンは、自身の前世が女性であったのに、陛下から女性の「心」に疎いと指摘され、内心腑に落ちなかったのだが、……。
その会談から数日後、……ハルコンは王族を始めとする関係者達と共に、隣国の姫君ステラ殿下をお迎えした晩餐会に出席していた。
ハルコンは、今や王立研究院の所長を務め、子爵位まで賜っている、いっぱしの貴族だ。
他のファイルド国側の者達と同様、ハルコンもまた注意深くステラ殿下の言動を見守ることにした。
すると、ステラ殿下は馬車の中で接した時と同様に、大変穏やかで落ち着いたご様子に見受けられた。
晩餐の席で、殿下ははきはきと年相応な様子で応対する一方、隣国の情報を軽々しくお話にはならない。
外交デビューで初々しさのある反面、なかなか交渉力のあるお方だとハルコンには思われた。
ラスキン国王陛下もお妃様も、これまで長年の間敵国であった国の姫君が愛らしいのに隙がないのを見て、率直にお褒めなさっている。
一方、シルファー先輩は張り付いた笑顔を全く崩さず、ご両親とステラ殿下とのやり取りをご覧になっていらっしゃる。
おそらく今後王立学校で、シルファー先輩とステラ殿下が「ご学友」になるのは決定事項だろう。
だから、先輩は今のウチからステラ殿下の人とナリをよぉ~く見定めようとお考えなのだろうと、ハルコンは思った。
126
あなたにおすすめの小説
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる