262 / 595
第一部「ハルコン少年期」
33 姫君ステラ・コリンドの留学 その2_07
* *
ほぉう。なかなかやるじゃない。
ハルコンの目から見て、シルファー先輩とステラ殿下の将棋の対局は、とても目を見張るものだった。
その対局は、一見すると冷静さと温厚さを保ちつつ、その水面下では激しい戦闘が繰り広げられている、そんな印象を与える感じだ。
まさに一触即発。2人は実力伯仲の「ライバル同士!」と、呼んでいいだろう。
ハルコンは前世の晴子の頃、大学の研究室でメンター達とのコミュニケーションを兼ねて、一度に多人数を相手にする、多面差しの対局をよく行っていた。
その場所は喫煙室に隣接したベランダで、皆咥え煙草でバチバチと駒を打っていたものだった。
そんなヘビースモーカーの仲間達を相手に、晴子は笑顔を絶やすことなく対局に応じていた。
そのおかげでマルチタスクに磨きがかかるようになり、その後の研究生活に大いに役立ったと、ハルコンはふと思い出した。
ハルコンは、シルファー先輩と初めてお会いした頃からず~っと、世が世なら、先輩はまさに女傑と呼ばれる存在になるのではないかと思っていた。
並び立つものがいない人物のことを傑物と言い、それが女性なら女傑と呼ぶ。
すると、そんなシルファー先輩を相手に、薄く笑みを浮かべながら、堂々と渡り合っている少女がいて、……それが隣国の姫君、ステラ殿下だった。
あぁ、……このお二人は、今後いい関係になって下さるといいなぁと、ハルコンは心から思った。
傍らにはミラがいて、そんなお二人の対局を、顎に手をやって真面目な顔をして分析している。
「ねぇ~っ、ハルコン。ステラ殿下のニ四の金、あれって良手なの?」
へぇーっ。よく見ているなぁと、ハルコンはちょっとだけ感心した。
「うぅ~ん、どうだろ? 次に先輩が二六の歩、殿下の三五の桂馬ときたら、ここで局面が発生するでしょ? ちょっと悪手かもしれないなぁ」
「なるほど」
ミラはそう呟くと、ムムムと盤面を見ながら再び考え込んだ様子。
そして、ハルコンが分析してみせたとおり、シルファー先輩の優勢で進行していく。
いつしか、ビリヤードを終えた上級生達も対局の見学に加わり、腕組みをして考え込んだりしていた。
ノーマンもまた、マルコム兄やケイザン兄達と同様に難しい顔をして対局を見守っているのだが、……。
「ねぇねぇハルコン。ノーマンのヤツ、将棋のルールも知らないのに、ワカったふりをして難しい顔をしてるよ!」
そう言って、不愉快そうに口を尖らせながら、耳元で教えてくれるミラ。
「ふふふ、だねっ、ミラ」
思わず苦笑いを浮かべると、ミラも眉間に皺を寄せながら笑顔を作った。
「負けました、……」
ここで、ステラ殿下が敗北宣言をされると、シルファー先輩はホッとしたのか、「フィィーッ!」と長いため息をお吐きになった。
「殿下、なかなかいい勝負でしたわ」
そう仰って、笑顔で右手を差し出すと、ステラ殿下もニコリと汗ばんだ笑顔で握手された。
「シルファー様、将棋が我が国に伝わったのは先月のことですの。まだ覚え立てでしたが、相手になりましたでしょうか?」
「へぇぇーっ!? まだ初心者なのぉ!?」
思わず目を白黒させるシルファー先輩。
実は、……先輩はハルコンから毎週指導を受けており、もう2年になる。「先輩は、初段くらいの実力の持ち主ですね!」と、ハルコンは伝えていた。
額に冷や汗を浮かべられるシルファー先輩に、とても素直な笑顔で「はいっ!」と返事をされるステラ殿下だった。
ほぉう。なかなかやるじゃない。
ハルコンの目から見て、シルファー先輩とステラ殿下の将棋の対局は、とても目を見張るものだった。
その対局は、一見すると冷静さと温厚さを保ちつつ、その水面下では激しい戦闘が繰り広げられている、そんな印象を与える感じだ。
まさに一触即発。2人は実力伯仲の「ライバル同士!」と、呼んでいいだろう。
ハルコンは前世の晴子の頃、大学の研究室でメンター達とのコミュニケーションを兼ねて、一度に多人数を相手にする、多面差しの対局をよく行っていた。
その場所は喫煙室に隣接したベランダで、皆咥え煙草でバチバチと駒を打っていたものだった。
そんなヘビースモーカーの仲間達を相手に、晴子は笑顔を絶やすことなく対局に応じていた。
そのおかげでマルチタスクに磨きがかかるようになり、その後の研究生活に大いに役立ったと、ハルコンはふと思い出した。
ハルコンは、シルファー先輩と初めてお会いした頃からず~っと、世が世なら、先輩はまさに女傑と呼ばれる存在になるのではないかと思っていた。
並び立つものがいない人物のことを傑物と言い、それが女性なら女傑と呼ぶ。
すると、そんなシルファー先輩を相手に、薄く笑みを浮かべながら、堂々と渡り合っている少女がいて、……それが隣国の姫君、ステラ殿下だった。
あぁ、……このお二人は、今後いい関係になって下さるといいなぁと、ハルコンは心から思った。
傍らにはミラがいて、そんなお二人の対局を、顎に手をやって真面目な顔をして分析している。
「ねぇ~っ、ハルコン。ステラ殿下のニ四の金、あれって良手なの?」
へぇーっ。よく見ているなぁと、ハルコンはちょっとだけ感心した。
「うぅ~ん、どうだろ? 次に先輩が二六の歩、殿下の三五の桂馬ときたら、ここで局面が発生するでしょ? ちょっと悪手かもしれないなぁ」
「なるほど」
ミラはそう呟くと、ムムムと盤面を見ながら再び考え込んだ様子。
そして、ハルコンが分析してみせたとおり、シルファー先輩の優勢で進行していく。
いつしか、ビリヤードを終えた上級生達も対局の見学に加わり、腕組みをして考え込んだりしていた。
ノーマンもまた、マルコム兄やケイザン兄達と同様に難しい顔をして対局を見守っているのだが、……。
「ねぇねぇハルコン。ノーマンのヤツ、将棋のルールも知らないのに、ワカったふりをして難しい顔をしてるよ!」
そう言って、不愉快そうに口を尖らせながら、耳元で教えてくれるミラ。
「ふふふ、だねっ、ミラ」
思わず苦笑いを浮かべると、ミラも眉間に皺を寄せながら笑顔を作った。
「負けました、……」
ここで、ステラ殿下が敗北宣言をされると、シルファー先輩はホッとしたのか、「フィィーッ!」と長いため息をお吐きになった。
「殿下、なかなかいい勝負でしたわ」
そう仰って、笑顔で右手を差し出すと、ステラ殿下もニコリと汗ばんだ笑顔で握手された。
「シルファー様、将棋が我が国に伝わったのは先月のことですの。まだ覚え立てでしたが、相手になりましたでしょうか?」
「へぇぇーっ!? まだ初心者なのぉ!?」
思わず目を白黒させるシルファー先輩。
実は、……先輩はハルコンから毎週指導を受けており、もう2年になる。「先輩は、初段くらいの実力の持ち主ですね!」と、ハルコンは伝えていた。
額に冷や汗を浮かべられるシルファー先輩に、とても素直な笑顔で「はいっ!」と返事をされるステラ殿下だった。
あなたにおすすめの小説
元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~
きよらかなこころ
ファンタジー
シンゴはある日、事故で死んだ。
どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。
転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。
弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました