天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

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第一部「ハルコン少年期」

36 王立学校祭 その3_15

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   *          *

 その後の特設の壇上は、まさにステラ殿下のための「表舞台」だったね。

 殿下直々のご指導の下、両サークルの生え抜きの美少女達と共同で、隣国コリンドの「恋の舞踊」が行われたのだから、……。

 殿下の美しいステップにターン。見る者を魅了する全てが、ここに集約されているって感じかな。

 会場は大いに盛り上がるし、美味しいところは全てステラ殿下が持っていってしまわれた感じなのかなぁ。

 最終的には、会場の参加者全員で踊り始めたんだよ。
 老いも若きも、大人も子供も、……。

 シルファー先輩やミラも、私の兄姉達やロスシルド姉弟まで、それにキャスパー殿下までその輪に加わったんだからね。
 両サークルの合同演武大会は、無事大成功かな。

 だけどさ、……今回の「恋の舞踊」って、本当はステラ殿下から私への求愛のダンスだったんだって。
 そんなの、後から笑顔で教えてくれるんだもん、……大いに慌てさせられたよ。

   *          *

「まぁ、……こんなもんかな」

 ハルコンはそう独り呟きながら、腕組みをしてひとつ頷く。

 兄達のサークル主催の演武大会が無事終わって、3連休の最終日。
 朝の陽光が窓から差し込む、ハルコンの居室兼研究室の部屋。

 ハルコンは、その研究用の長机に、300ピースのジグソーパズルを5点並べてから、じっと見た後、……「これでOK!」と呟いて、改めてうんうんと頷いた。
 
 今回の王立学校祭にて、参加者達の人気投票で大賞を取ったサークル、もしくはクラスに贈呈される景品。その依頼を、ハルコンはシルファー先輩から受けていた。

「ほらぁっ、先日見せてくれた、あのバラバラなピースを組み立てるゲーム! ジグソーパズルだっけ? あれのことを委員長に話したらさ、じゃぁ景品にしようって話になったの!!」

「そう仰っても、あれって、……まだ発売前で、試作品の段階なんですよね」

「そこを何とかっ!! ダメェ?」

 そう仰って、ギュッと目を瞑って両手を合わせるシルファー先輩。それから、……あざとく舌をぺろりと出して、小首を傾げてみせて下さった。

「……、はぁ~い。ワカりましたぁ」

 思い立ったら、有無を言わさぬのがシルファー流。絶対、断れないよぉ。

 そんな具合に話がトントンと進み、ハルコンはごく短時間のウチに、パズルづくりに励んで、何とか間に合わせることができたのだ。

「コン、コン、コン」

 すると、玄関ドアをノックする音がする。

「はぁ~い。どうぞぉ!」

 その返事を待たず、ミラとステラ殿下、殿下の侍女の3人が居室に入ってきた。

「ごめんなさぁ~いっ、ハルコン。あんまり手伝えなくてぇ!」

「いや、いいよ。ミラは姉様のサークルに参加していたから忙しかっただろ? なのに昨晩は手伝ってくれて、……こちらこそ礼が言いたいくらいさ!」

「ふふっ。ならいいけど」

 ニッコリと微笑み返すミラに、ハルコンも思わず笑みがこぼれる。

「私も、昨晩はお手伝いいたしましたわよ?」

「はい、……殿下も、というよりルーラさんが、ですよね?」

「まっ、まぁそうですけど」

 昨晩のステラ殿下は、ジグソーパズルづくりに興味津々で、その作製にハサミを使うことにも強い関心を示していた。

 実は、……まだ隣国コリンドにはハサミがないらしい。
 帰国次第、向こうでも普及させると意気込みながら、殿下はハサミをお手にしたのだけれど、……。

 とにかく時間がない。ならばと、恐れ多くも手伝って頂いたところ、ハルコンの想定以上に不器用なご様子の殿下だった。

「ステラ殿下はここにお座りになって、見学なさって下さいね!」

「はぁ~い」

 不服そうにご返事をされる殿下だったけど、ケガをさせるワケにはいかなかったしね。

 結局、殿下の作業は侍女のルーラさんが引き受けてくれて、殿下は好奇心いっぱいのご様子で、それを眺めていらっしゃったワケだ。

   *          *

 今年度も、王立学校祭は無事閉幕した。
 3日間の宴の後、学生達は再び元の学生生活に戻っていく。

 しばらくして学期末の試験も終わり、季節が初夏を迎えると、2カ月の夏休み期間に突入した。

 その一方で、フラワーインフルエンザがファイルド国周辺各国にて着々と進行していた。そして、……突然変異したインフルエンザが、次々と鳥達を襲い始めていた。
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