天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

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第一部「ハルコン少年期」

37 研究所の長い一日_11

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「先ずは、……これだけ収めてくれないかね?」

 アルメリアの大富豪の男はそう言って、とある国内IT関連企業の有価証券の目録を示してきた。

「これは、……?」

 晴子の主任教授が、極めて怪訝そうに訊ね返す。

「半年後に、……我々の見立てでは、こちらが10億にも20億にもなると思っている。挨拶代わりとして、とりあえず、これを貰っておけ!」

 傍らから、山岡教授が笑顔でそう告げてくる。
 その口調は主任教授とは旧知の仲だけあって、どこか気さくで、とても友好的だ。
 
 今回の件、……それは一歩間違えれば、インサイダー取引とも取られかねない申し出だ。

 だが、その辺りの話、これ程の経済界の大物が行った場合には、日本の規制当局も黙認せざるを得ないのだろうと晴子は思った。

 まぁ、……かくも名の知れた人物にこれだけの対応をして貰ったら、並の男ならコロッとイってしまうところだろう。

「失礼とは思いますが、お訊ねします。我々の研究室は、現在晴子クンの『アイウィルメクチン』を開発することに注力しているところです。その開発に対し、今後助力して頂けるという認識でよろしいのでしょうか?」

「もちろんだとも!」

 満面の笑顔で、大富豪はサムズアップしてきた。

「なら、……拝見いたしましょう!」

 主任教授は、震える手で目録を受け取ると、富豪は気さくそうにニコリと笑った。
 その様子を見て、山岡教授も嬉しそうにひとつ頷いている。

 そりゃぁそうだろう。この山岡教授というお人は、とっくのとうに、大金にコロッとイってしまっているのだろうから、……。

 だが、そんな爬虫類のような男達の笑顔に、晴子は邪悪さを強く覚えた。

 晴子は、そんな風景が世界中のアカデミズムの各所で繰り返し行われてきて、今回もそのひとつなのかもしれないと思ったら、何だかやり切れない気分になった。

 主任教授は、その目録を隅から隅まで目を皿のようにして通し読みすると、「ふぅ~~っ」と、深く長いため息を漏らした。

 その態度から、この目録が正規ルートからは外れているとはいえ、正式なものとして流通可能な証書なのだと、晴子も理解した。

 それから主任教授は、……興奮を隠せない目の色でじっと見てきた。

「晴子クン、……キミならばどうするかね?」

 主任教授のその目は、……突然の棚ボタに、明らかにいつもの調子を失っていたのだが、……。
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