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君の始まりは今日からだから
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「すげえ!これなんてやつ!?」
「え…?仁それどういう…」
「どうやったらこんなこと出来るんだ!」
大興奮でキラキラと、無邪気な笑顔を見せる仁に無慈悲にも時東さんは笑顔で答える。
「うん、ドラム叩いたらできるよ」
「いや、それはそうなんだけどさ時東さん」
しまった、思わず俺が突っ込みをいれてしまった。
尊敬すべき大先輩なのに…。
「いや、俺が持ってるドラムはこんなんじゃねえ、こんなこと出来ねえ。
もっとださくて、うるさいだけだ」
そういった仁に、時東さんは今日初めて笑顔を消して無表情になる。
俺は一瞬心臓が止まりそうになったけど、時東さんはしばらく逡巡した後またいつもの笑顔に戻った。
なんだったんだろう…。
「ふふ、僕だって初めはもっとださかったよ。
毎日毎日、血がにじむくらい練習し続けて、誰にも負けないくらいやってきたつもり。
あ、まあ楽器演奏は競争じゃないから実際は勝ち負けなんてないんだけどね。
それでもまだ僕は自分の演奏に納得がいってないよ。だからこれからもっと練習し続けていくよ」
「こんなに叩けるのに、まだ練習するんスか?なんでなんすか」
「練習は辛いし、大変なこともあるけど、それでも音楽って楽しいからさ」
その言葉に仁は、ハッとしたようだった。
何かに気付いたような、音楽の楽しさを知った顔をしていた。
「俺も…俺もこの楽器叩けるようになりたいス」
「いやだから君ドラマーでしょって」
「時東さん、これには深いわけがあるので…」
俺がやんわりと突っ込みと静止を入れる。
馬鹿正直にバラエティのカメラの前で実はドラム一切叩けないレベルの初心者なんですこの人!と言うわけにはいくまい。
「正直言って僕安心したよ」
「え?時東さん、それってどういう…」
「テレビで見ていた宇吹くんって本当にやる気なさそうで、今までの人生でドラム触ったことないだろってくらいの初心者じみた動きをしてて、なめくさった態度見せてくるから僕本当にはらわた煮えくりかえってたんだけど」
「すんません…」
思わず仁が謝る。
口調は優しいけれど時東さんの言葉の棘がグサグサ刺さっているみたいだ。
「けど君は今日僕の演奏を聴いて感動してくれた、なにかを感じ取ってくれた。
君はちゃんと音楽を心で聞ける人なんだね。
そんな君ならきっと大丈夫だと思うよ。」
「音楽を…心で…スか」
「ふふ、哲学的過ぎたかな?でもきっとわかると思うよ君になら」
「ハイ…」
二人のやり取りをずっと捉えていたカメラの背後に立っているプロデューサーが、思わずぐっとガッツポーズを決めている。
確かにこれはすごくいい絵だなと思う。
天才ドラマーの演奏を聴いて、心を動かされた腐っていた青年。
彼の物語は動き始めた…そんな感じだ。
うん、仁にとっていい薬になっただろう。
「さ、じゃあ今日は今さっき俺がやった演奏を二人にやってもらうからね」
「24時間かけても無理です!」
俺が思わず口を出すと、横から仁が熱く飛び出てくる。
「そんなんやってみなきゃわかんねーだろーが!」
どうやら本当に火が付いたみたいだった。
ので、一応俺は釘をさしておく。
「仁、ドラムのやる気を出してくれたのはいいけど、時東さんのこの演奏は十数年続けてきた努力の結果できるようになったものだから、一日そこらで習得できるもんじゃないんだよ。」
「…そうか、それもそうか」
お?意外と素直だ。
もっと突っかかってくるかと思ったんだけど、どうやらこれは本気で仁が変わってくれそうな…そんな気がした。
「え…?仁それどういう…」
「どうやったらこんなこと出来るんだ!」
大興奮でキラキラと、無邪気な笑顔を見せる仁に無慈悲にも時東さんは笑顔で答える。
「うん、ドラム叩いたらできるよ」
「いや、それはそうなんだけどさ時東さん」
しまった、思わず俺が突っ込みをいれてしまった。
尊敬すべき大先輩なのに…。
「いや、俺が持ってるドラムはこんなんじゃねえ、こんなこと出来ねえ。
もっとださくて、うるさいだけだ」
そういった仁に、時東さんは今日初めて笑顔を消して無表情になる。
俺は一瞬心臓が止まりそうになったけど、時東さんはしばらく逡巡した後またいつもの笑顔に戻った。
なんだったんだろう…。
「ふふ、僕だって初めはもっとださかったよ。
毎日毎日、血がにじむくらい練習し続けて、誰にも負けないくらいやってきたつもり。
あ、まあ楽器演奏は競争じゃないから実際は勝ち負けなんてないんだけどね。
それでもまだ僕は自分の演奏に納得がいってないよ。だからこれからもっと練習し続けていくよ」
「こんなに叩けるのに、まだ練習するんスか?なんでなんすか」
「練習は辛いし、大変なこともあるけど、それでも音楽って楽しいからさ」
その言葉に仁は、ハッとしたようだった。
何かに気付いたような、音楽の楽しさを知った顔をしていた。
「俺も…俺もこの楽器叩けるようになりたいス」
「いやだから君ドラマーでしょって」
「時東さん、これには深いわけがあるので…」
俺がやんわりと突っ込みと静止を入れる。
馬鹿正直にバラエティのカメラの前で実はドラム一切叩けないレベルの初心者なんですこの人!と言うわけにはいくまい。
「正直言って僕安心したよ」
「え?時東さん、それってどういう…」
「テレビで見ていた宇吹くんって本当にやる気なさそうで、今までの人生でドラム触ったことないだろってくらいの初心者じみた動きをしてて、なめくさった態度見せてくるから僕本当にはらわた煮えくりかえってたんだけど」
「すんません…」
思わず仁が謝る。
口調は優しいけれど時東さんの言葉の棘がグサグサ刺さっているみたいだ。
「けど君は今日僕の演奏を聴いて感動してくれた、なにかを感じ取ってくれた。
君はちゃんと音楽を心で聞ける人なんだね。
そんな君ならきっと大丈夫だと思うよ。」
「音楽を…心で…スか」
「ふふ、哲学的過ぎたかな?でもきっとわかると思うよ君になら」
「ハイ…」
二人のやり取りをずっと捉えていたカメラの背後に立っているプロデューサーが、思わずぐっとガッツポーズを決めている。
確かにこれはすごくいい絵だなと思う。
天才ドラマーの演奏を聴いて、心を動かされた腐っていた青年。
彼の物語は動き始めた…そんな感じだ。
うん、仁にとっていい薬になっただろう。
「さ、じゃあ今日は今さっき俺がやった演奏を二人にやってもらうからね」
「24時間かけても無理です!」
俺が思わず口を出すと、横から仁が熱く飛び出てくる。
「そんなんやってみなきゃわかんねーだろーが!」
どうやら本当に火が付いたみたいだった。
ので、一応俺は釘をさしておく。
「仁、ドラムのやる気を出してくれたのはいいけど、時東さんのこの演奏は十数年続けてきた努力の結果できるようになったものだから、一日そこらで習得できるもんじゃないんだよ。」
「…そうか、それもそうか」
お?意外と素直だ。
もっと突っかかってくるかと思ったんだけど、どうやらこれは本気で仁が変わってくれそうな…そんな気がした。
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