十六夜 零の怪奇談

tanuki

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始まりの因果

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この物語はフィクションで有り、登場する出来事や場所、人物などは、一切詮索しないでいただきたい。

俺は、東京の出版社で旅行ライターをして生計を立てている。

特技は、怪奇譚…

の筈だったのだが…


俺、 十六夜 零 は、生まれた時から不思議な物が見えた。

後に妖精眼と言う、特殊な眼で有ると解るのだが

幼い頃は、現実と心霊現象との区別がまるで付かなかった…

その理由は色々ある。


俺の両親は、殆ど育児をしない人達だった。

産まれてしばらくは、母方の祖父母が俺を育ててくれたのだが

祖父母は、俺が5歳になる頃には揃って他界してしまった。

それでも育児をやりたくない両親は、俺が手の掛からない事を良い事に

5歳に成ったばかりの俺に自宅の鍵を預けて放置した。

俺はと言えば、

鬼籍に入った筈の祖父母に見守られながら何とか生き続けていた。

この頃の両親は、俺が祖父母との事や妖怪の話しをしても

まるで相手にせず。

仕事が忙しいと

直ぐに又出掛けてしまう状態が長い期間続いた。

祖父母はその事をとても悲しみ、あの世にも行かず俺と一緒にいてくれた。

俺が見えるのは、祖父母だけでは無く街中に佇む地縛霊や妖怪など

不思議で気味の悪い物まで当たり前の様に良く見えたので、

俺自身とても怖かったのだが、

それでも俺は、この頃の祖父母との生活は、とても楽しかった。

そして、小学生になる頃には、

やっと自分が見ている者達が普通は見え無いのだと理解し始めた


一般的に、

何処からが見えなくて何処からが見えるのかが子供の俺には判断が付かず

俺の言動を同級生達は、気味悪がり

悪質なイジメと仲間はずれの日々が続いた。

流石に、この頃になるとクラスでの奇行が原因で両親が頻繁に学校へ呼び出され

今更ながらに

俺が語る祖父母の話や妖怪などの話しを真面目に聞き始めたのだが

俺の狂言だと決めつけた両親は、まともに取り扱ってはくれなかった。

俺の狂言は、今まで放置していた事に原因が有ると決めつけた両親は、

どちらがどれだけ悪いと二人で罵り合い。

俺の事で毎日の様に喧嘩をしていた。


それから程なくして、両親は離婚した。

母親は、俺の親権を手に入れたが、

俺の奇行に痺れをきたしたのか

俺をよく殴る様になった。

そして…

離婚後半年で、俺を精神病院に入院させ

長い事、見舞いにも来なかった。


俺は、そんな事にもめげずに、精神科医の診断を受け続け

中学生になり養護施設に入った。

この頃の俺は、やつと普通の人達がどんな物が見えて、

どんな暮らしをするのかが理解出来る様になり

医者の前や一般人の前では、出来る限り普通を装って生活する事に決めて行動する様になった。

その間も、心霊現象は当たり前の様に俺を悩ませたが

中学3年の春休みに、俺に取って当時最大の事件が起きる……。



そう、あの日は3月だと言うのにやたらと暑い日で

俺は、施設の自室で読書をしていた。

そんな俺の所に一年振りに来客が…

母親が面会にやって来た。

ほぼ一年振りに顔を出した俺の実の母…

歳の割に、派手な化粧をして似合わないブランド物のスーツを羽織った姿

香水がとても嫌な匂いを発していた。

俺は、苦虫を噛み潰した様な思いを心に隠しながら

とても他人行儀に明るく挨拶を交わした。



いつもは、俺の背後にたたずみ楽しそうに様子を見ている祖父母の霊は

自分の娘の状況を悲しそうに見つめていた…

母親 「元気そうにやつてるのね。」

俺 「お陰様で。」

母親は、周りをやらしく見回して、

母親 「高い料金の施設なんだから当たり前か。」

俺 「……ま、まぁね。」

母親 「そうだ、あたし今度再婚する事に決めたの。」

「あたしも何時迄も独身て訳にはいかないしね。」

一瞬なんて言っていいか判らず戸惑ったのだが

とりあえず…


俺 「……お、おめでとう。」

と言って置く、


母親 「まぁ、だから今後はあたしの事は気にしないで。」

「あなたが成人する迄は、施設のお金は払って置くから。」

俺 「……あ、…ありがとう。」

この人は何を言っているんだ…


母親 「まぁ、あんたの父親に出させるんだけどね。」

俺 「…………………。」



今度、新しい男性と再婚すると言い出し

その上、俺の事は引き取れないので、このまま施設で暮らして欲しいと言う事か?

まるで他人事の様に語る母親…

俺は、母親の言葉を事実上の縁切り宣言と感じながら

何故、今更そんな事を俺に言ってくるのか判らず

とてもイライラしながら口を閉じていた。

まるで蝋人形の様に……



その時、突然部屋が揺れた。

窓ガラスにヒビが入り家具がガタガタと揺れた。

母親は叫びながら頭を押さえ苦しみ出した。

俺は、とっさに背後を振り返る。

そこに見たのは、普段は温厚で優しい祖父母が激怒し、

鬼の形相で母親を睨み付ける姿だった。

俺 「ど、どうしよう…じつちゃん、ばつちゃん…」

祖父母の霊は怒っていた。

自分の子供に対しての怒り、

孫の零への対応への悲しみ、

この10年以上の年月で感じた怒り全てを放出していた。

俺は、祖父母の声を聞くことが出来たが

祖父母に俺の声は届かない。

コレは他の幽霊や妖怪などでも同じで、

いつだってそれらとは会話が成立しなかった。

俺は、激しく憤り人間以外の何かに変わろうとしている祖父母の姿が

とにかく無性に悲しかった。

自分の事で怒り、悲しむ姿が…

鬼のそれに変わってゆく姿が…

いつしか俺は、大声で助けを呼んで叫んでいた。

精神疾患の有る未成年をあずかる施設だけに

直ぐに看護師達が駆けつけて来たが、

何故か入った瞬間に看護師達の動きが止まり、頭を押さえてうずくまり。

バタバタと床に倒れてしまった。

床には、数名の看護師と実の母親が這いつくばり

それぞれが頭を押さえて苦しんでいる。


全身から不吉なオーラを纏いながら鬼化してしまった祖父母。

何とか祖父母を止めようと俺は、

怒り狂う祖父母と母親の間に立ち塞がり

俺 「やめてくれよ、じつちゃん、ばっちゃん‼︎」

「こんな奴の為に、なにやってんだょ!」

「じつちゃん❗️ばっちゃん❗️正気に戻ってくれよ❗️」

「俺の声は何で届かないんだ!」

「何で!何で!何で‼︎」


鬼化した祖父母の霊魂はいくら俺が止めても鎮まらない…

俺の声は、霊魂に届かない。

絶望に歪む俺の心。



そんな時、廊下から誰かが入って来た。

真っ赤なゴスロリ調のドレスに蛍光ピンクのロングヘアー

見上げる程の長身の女?

ブーツをコツコツ響かせながら俺の個室に入って来た。

信長 「何とか間に合ったっ❤️」

その人は、自身の前に何かのお札を掲げて祖父母の前まで近づき

祖父母の額に優しくお札を貼り付けた。

それまで荒ぶっていた祖父母は、

お札の力なのか、途端に静かになり

穏やかな顔に戻った。

俺は、まるで夢でも見ているみたいに、ポカンとしていた。

信長 「十六夜 零 君でいいのかなぁ❤️」

俺は、訳が判らずとにかく頭を縦に振り頷いた。

施設の自室は、グチャグチャに散乱していた。

後から来た看護師達の手で、母親と倒れた看護師達は

施設内の医療施設に搬送された。

俺は、自室のベットの上。

何故か先程のゴスロリお姉さんの膝枕で体を横たえていた。

信長 「あなたのお爺さんとお祖母さんに頼まれたの。」

俺 「どうやって?二人は既に霊魂の筈だし…」

振り返ると祖父母は、穏やかな顔で俺を見ている。

信長 「本当は、あたし霊魂のお願い事は聞かない主義なのだけれど。」

「あなたの力になって欲しいと懇願されてねぇ❤️」

俺 「力になる?」

信長 「多分、二人とも限界が近いって分かっていたのょ」

俺 「限界?」

信長 「人間が死んで、何時迄もこの世にとどまる事は禁忌なの」

「あまり長く居るとバチが当たる。」

俺 「バチって…。」

信長 「人では無くなるのよ。」

俺 「そ、そんな…」

信長 「あなたも見たでしょ」

「怒りや悲しみを抑えられなくなる。」

「そして、鬼と化すの…」

俺 「………。」

信長 「お爺さんとお祖母さんは、貴方の眼の事を心配しているわ」

「そして、自分達が居なくなった後の事も…。」

俺 「貴方は一体……。」

信長 「わたしは、呪術師。名前は小野田 信長。」

俺 「呪術師。」

信長 「わたし、貴方のお爺さん、お祖母さんと約束したのょ❤️」

「二人の代わりに、貴方の力になるって❤️」

俺は、何がなんだか判らずただ信長と言う女性の顔を見詰めた。

[当時、俺は信長を女性だと勘違いしていた。]

俺は、この時初めて小野田 信長を目に焼き付ける。

俺の眼は特殊で、信長をしっかり見た途端、信長の背後に、

鬼の様な形相で睨む、神様が見えた。

この頃はまだ知識が乏しくてそれが何なのか判らず…

信長の姿形と背後の神様のアンバランスさに度肝を抜かれ、

言葉を無くした。



信長 「さぁ、もうお別れの時だわ…零くん、お爺さんとお祖母さんにお別れの言葉を。」

俺 「…な、何言ってんだよ。」

途端に狼狽える俺…


信長 「詳しい説明は、後でしてあげる…」

「今は、お二人に感謝を伝えて上げて…」

俺 「だって、そんな事言ったて…俺…,」

戸惑う俺の側に、ゆっくりと祖父母が近づいて来て

祖父母が俺を抱きしめてくれる。

俺は、まるで子供の様に泣きながら首を横に振って

嫌だ、嫌だ、嫌だと駄々をこねた。

俺を抱きしめていた祖父母は、優しく笑いながら

小さな光の粒に変わり始める。

俺 「嫌だ、嫌だよ、じいちゃん、ばあちゃん…行かないで…くれよ。」

「俺、俺、一人きりになっちゃうじゃないか…」

俺は、光の粒になり消えていく祖父母を必死でかき集めようと

手を広げてかき集めた…


消えていく光りが最後に優しく瞬いた。

  
泣き崩れる俺を信長がしっかりと抱きしめてくれた。


俺は、この日の事を絶対に忘れない。


この日以後、

直ぐに、俺は施設を退所した。

そして、しばらくの間、信長のお世話になる事となる。

自分が精神疾患では無く、人とは違う特殊な眼の持ち主で有る事や

霊魂などの対処法、

妖怪や悪霊などとの関わり方。

神仏などの考え方などなど。

学校や病院では教えてくれなかった事をしっかりと叩き込んでくれた。

のだが…


今、俺は信長の師匠。

と名乗る人物の前で意識を失い倒れている。

信長と二人、霊山の山小屋に着いて 

白髪の丁髷に甚平姿の老人に挨拶を交わし

山小屋の囲炉裏に当たっていると何故かとても眠くなり

俺は、二人の横で意識を手放した。

コレはきっと老人の術か何かなのだろう。

俺は、やっと意識を取り戻しかけていた。


老人 「なるほどのう~、コレが始まりの因果か。」

信長 「嫌だぁ~、この頃のわたし若いわぁ❤️」

老人 「さてさて、十六夜 零の因果率まだまだ続きが有りそうだわぃ。」

「そもそも、この眼だけでも充分厄介な物なのに…。」

「さらに、因果を覗いて見るかいなぁ。」

老人は、また俺の額に手を当て、何やら唱え出す。

俺は、取り戻しかけた意識を再び手放し、

深い深い闇の中に落ちて行った……


       つづく
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