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隣国の第二王子
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アクセリナと初めて出会ったのは、いくつの頃だったかなぁ。僕がまだ全然ちっちゃい頃、あちこち走り回っては父上や母上に叱られていた頃だと思う。
色んな国の偉い人が集まる交流会に、彼女は兄のヴィルフェルム第一王子と一緒にいた。
ひと目見て、他の王女や令嬢とは違うってすぐにわかった。背筋をぴんと伸ばして澄ました表情で、フレッグ国の国王夫妻が礼をするとすぐに揃って礼をする。僕とあまり歳は変わらないはずなのに、どんな相手にも怯まずに堂々としてる姿。惚れるなって方が無理でしょ!
僕の国では珍しい黒髪に、透き通ったヘーゼルの瞳。ちょっと目尻が下がっているのがまた良くて、僕はもうずっと、どきどきしっぱなしだった。
そのままふらふらとアクセリナに近づいて、思い切って言ったんだ。
「ねぇきみ、僕のお嫁さんになってよ」……って。
「お断りします」……即答だった。
この年代の子どもだったら普通は、驚いたり顔を赤くしたりするのに、そんなことも一切なく。ただ僕が間抜けに振られただけ。
でもさ、それで僕は益々燃えちゃったワケ。絶対欲しい! って思った。
最初こそ顔とか雰囲気とか、そういうところに惚れたんだけど。何度も何度も口説きに行くうちに、アクセリナしかいないな、って思うようになった。
僕の王位継承権は第二位。このままいけば「普通に」優秀な兄貴が、王位を継ぐことになるだろう。まぁ国にとってそれが一番いいのかもしれないけど。今のままの平穏な状態、ってのが。
でも僕はさ、それだけじゃ満足出来なくて。父上の通った道をなぞるだけの人生なんて絶対嫌だし。
どうせなら父上が出来なかったことをして、もっともっと国を発展させたい。そりゃあ色々諸々、大変だろうけど。時代は流れて変わっていくんだし、ずっと同じ体制のままでいるのも違うんじゃないかって思うわけ。
改革、って言い方は大袈裟かもしれないけど、父上とは違う方法で国を守って行きたい。そのために必要なのは一緒に戦ってくれるひと。まぁ、側近だとかそういうのも必要だけど、まずは伴侶でしょ。強くて頭が良くて、王族たる気概を持っている。そして何より、僕の好み。
もうね、絶対絶対、アクセリナちゃんをお嫁に欲しかった。僕の野望と下心のために!
でも彼女、しばらくしたら婚約しちゃってさ。酷くない? 僕ずっと口説いてたんだよ?
それなのにさぁ、どっかの公爵子息と婚約したって。相思相愛なんだって。さすがに傷ついたよね、ちょっと泣いたし。
もしかして僕の気持ち、ちっとも伝わってなかったのかなーとか思った。何でも、婚約相手はとても誠実で優しいやつで、僕と違って静かにまっすぐに想いを伝えるようなタイプなんだって。ヴィルフェルムから聞いた話しだけど。
僕だってまっすぐに気持ちを伝えてるつもりなんだけどなぁ。まぁちょっと? うるさい自覚はあるけど。
せっかくなら僕を僕のまま好きになってもらいたいし!
で、懲りない僕は結婚するまではセーフだろとか思って、アクセリナへの求婚を止めなかった。母上とかは止めたほうがいいって言ってたけど、諦めたくなかった。子どもの頃からの想いだから多少拗れちゃってるかもしれないけど、これだけ想いを向ける相手はこの先現れないだろうから。
そしたらさ。
ある日突然、アクセリナちゃんから手紙が来てさ。そりゃもうびっくりしたよ。初めてだもん、そんなこと!
「黙って顔を出せ」的なことしか書いてなかったけど手紙は手紙だし、スキップする勢いで訪ねて行った。
そしたら、そしたらよ。
僕との結婚の話だって。
失恋したから、僕のところに嫁いでもいいって思ってるって。
何だそれ、って思ったんだけど、多分顔は緩んでたと思う。だって僕がアクセリナと結婚出来る可能性って言ったら、本当に砂粒くらいしかないと思っていたから。
「あぁ。お前のことを好きになったわけではない。……が、特に嫌っているわけでもない。やかましい男だとは思うが」
アクセリナちゃんらしいよね。
「自棄になっている自覚はある。だからそのうち目が覚めるかもしない。……ゆえにこれが、最後の機会だ」
逃さないわけないよね。
本気だったんだから。本気でほしいって思ってたんだから。
僕の野望と、下心のために。
僕が王になるためにはアクセリナの力が必要で、僕が幸せになるためにはアクセリナちゃんが必要。
自棄でもいい。あとで我に返って後悔したっていい。僕はもう絶対に、アクセリナちゃんを離さない。
あとから「お義兄様」になったヴィルフェルム王子殿下に、ちょっと突っ込んだ話を聞いた。もちろん、アクセリナには内緒。
正直、聖女サマには感謝したし、「元」婚約者には何だそれって思っちゃった。
そんな男だったら、もっと強引に奪えばよかったかもしれないって。
選ばれておいて、何尻込みしてんだよ。僕はもうずっとお前に嫉妬してたんだぞ。彼女はずっとお前に恋をしてたのを知ってるから。僕のことなんか見向きもしなかったから。
――なんて。
今はもう、どうでもいい話!
だってアクセリナちゃんはもうすぐ、僕の妻になるんだ。僕の! 妻に!
ついこの間、「お前、私のことを本当に好きだったのか」なんて言われたけど、これからもっともっと、嫌ってほどわかってもらうつもりだし!
もちろん、「王妃」になっても。
これから先、今よりずっと大変だろうし、嫌なものも沢山見ることになるかもしれない。
国王を目指すって、そういうことだからね。きっとアクセリナも、理解した上で今、僕の隣りにいる。
ねぇ、元婚約者のきみ。
きみが強さを身につけてアクセリナを奪い返しに来たとしても、絶対返してやんないよ。
今さらなんだ。手遅れなんだ。
覚悟も、気概も、なにもかも。僕の方が彼女に相応しいんだって、言い切ってやる。
多分こういうところがアクセリナちゃんに嫌われる要因なんだろうけど、知ったことか!
僕は僕のまま、僕の力で、彼女の隣に立ち続けるんだから。
色んな国の偉い人が集まる交流会に、彼女は兄のヴィルフェルム第一王子と一緒にいた。
ひと目見て、他の王女や令嬢とは違うってすぐにわかった。背筋をぴんと伸ばして澄ました表情で、フレッグ国の国王夫妻が礼をするとすぐに揃って礼をする。僕とあまり歳は変わらないはずなのに、どんな相手にも怯まずに堂々としてる姿。惚れるなって方が無理でしょ!
僕の国では珍しい黒髪に、透き通ったヘーゼルの瞳。ちょっと目尻が下がっているのがまた良くて、僕はもうずっと、どきどきしっぱなしだった。
そのままふらふらとアクセリナに近づいて、思い切って言ったんだ。
「ねぇきみ、僕のお嫁さんになってよ」……って。
「お断りします」……即答だった。
この年代の子どもだったら普通は、驚いたり顔を赤くしたりするのに、そんなことも一切なく。ただ僕が間抜けに振られただけ。
でもさ、それで僕は益々燃えちゃったワケ。絶対欲しい! って思った。
最初こそ顔とか雰囲気とか、そういうところに惚れたんだけど。何度も何度も口説きに行くうちに、アクセリナしかいないな、って思うようになった。
僕の王位継承権は第二位。このままいけば「普通に」優秀な兄貴が、王位を継ぐことになるだろう。まぁ国にとってそれが一番いいのかもしれないけど。今のままの平穏な状態、ってのが。
でも僕はさ、それだけじゃ満足出来なくて。父上の通った道をなぞるだけの人生なんて絶対嫌だし。
どうせなら父上が出来なかったことをして、もっともっと国を発展させたい。そりゃあ色々諸々、大変だろうけど。時代は流れて変わっていくんだし、ずっと同じ体制のままでいるのも違うんじゃないかって思うわけ。
改革、って言い方は大袈裟かもしれないけど、父上とは違う方法で国を守って行きたい。そのために必要なのは一緒に戦ってくれるひと。まぁ、側近だとかそういうのも必要だけど、まずは伴侶でしょ。強くて頭が良くて、王族たる気概を持っている。そして何より、僕の好み。
もうね、絶対絶対、アクセリナちゃんをお嫁に欲しかった。僕の野望と下心のために!
でも彼女、しばらくしたら婚約しちゃってさ。酷くない? 僕ずっと口説いてたんだよ?
それなのにさぁ、どっかの公爵子息と婚約したって。相思相愛なんだって。さすがに傷ついたよね、ちょっと泣いたし。
もしかして僕の気持ち、ちっとも伝わってなかったのかなーとか思った。何でも、婚約相手はとても誠実で優しいやつで、僕と違って静かにまっすぐに想いを伝えるようなタイプなんだって。ヴィルフェルムから聞いた話しだけど。
僕だってまっすぐに気持ちを伝えてるつもりなんだけどなぁ。まぁちょっと? うるさい自覚はあるけど。
せっかくなら僕を僕のまま好きになってもらいたいし!
で、懲りない僕は結婚するまではセーフだろとか思って、アクセリナへの求婚を止めなかった。母上とかは止めたほうがいいって言ってたけど、諦めたくなかった。子どもの頃からの想いだから多少拗れちゃってるかもしれないけど、これだけ想いを向ける相手はこの先現れないだろうから。
そしたらさ。
ある日突然、アクセリナちゃんから手紙が来てさ。そりゃもうびっくりしたよ。初めてだもん、そんなこと!
「黙って顔を出せ」的なことしか書いてなかったけど手紙は手紙だし、スキップする勢いで訪ねて行った。
そしたら、そしたらよ。
僕との結婚の話だって。
失恋したから、僕のところに嫁いでもいいって思ってるって。
何だそれ、って思ったんだけど、多分顔は緩んでたと思う。だって僕がアクセリナと結婚出来る可能性って言ったら、本当に砂粒くらいしかないと思っていたから。
「あぁ。お前のことを好きになったわけではない。……が、特に嫌っているわけでもない。やかましい男だとは思うが」
アクセリナちゃんらしいよね。
「自棄になっている自覚はある。だからそのうち目が覚めるかもしない。……ゆえにこれが、最後の機会だ」
逃さないわけないよね。
本気だったんだから。本気でほしいって思ってたんだから。
僕の野望と、下心のために。
僕が王になるためにはアクセリナの力が必要で、僕が幸せになるためにはアクセリナちゃんが必要。
自棄でもいい。あとで我に返って後悔したっていい。僕はもう絶対に、アクセリナちゃんを離さない。
あとから「お義兄様」になったヴィルフェルム王子殿下に、ちょっと突っ込んだ話を聞いた。もちろん、アクセリナには内緒。
正直、聖女サマには感謝したし、「元」婚約者には何だそれって思っちゃった。
そんな男だったら、もっと強引に奪えばよかったかもしれないって。
選ばれておいて、何尻込みしてんだよ。僕はもうずっとお前に嫉妬してたんだぞ。彼女はずっとお前に恋をしてたのを知ってるから。僕のことなんか見向きもしなかったから。
――なんて。
今はもう、どうでもいい話!
だってアクセリナちゃんはもうすぐ、僕の妻になるんだ。僕の! 妻に!
ついこの間、「お前、私のことを本当に好きだったのか」なんて言われたけど、これからもっともっと、嫌ってほどわかってもらうつもりだし!
もちろん、「王妃」になっても。
これから先、今よりずっと大変だろうし、嫌なものも沢山見ることになるかもしれない。
国王を目指すって、そういうことだからね。きっとアクセリナも、理解した上で今、僕の隣りにいる。
ねぇ、元婚約者のきみ。
きみが強さを身につけてアクセリナを奪い返しに来たとしても、絶対返してやんないよ。
今さらなんだ。手遅れなんだ。
覚悟も、気概も、なにもかも。僕の方が彼女に相応しいんだって、言い切ってやる。
多分こういうところがアクセリナちゃんに嫌われる要因なんだろうけど、知ったことか!
僕は僕のまま、僕の力で、彼女の隣に立ち続けるんだから。
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