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さて、今日も今日とて探索と収集にいそしむとしよう。
今日の目的は古都の中心部にあるひときわ大きな建物である。便宜上”屋敷”と呼ぶことにするが、その立地と大きさから、いかにも他にはないお宝が眠っていそうなのだ。
さらにもう一つ気になることがある。それは今朝目が覚めてから仮拠点で全書を眺めていた時に現れた文章だ。
――――――――――
【エスカ式自動剣歩兵人形】を生成します
以下の物品を消費する必要があります
エスカ軍式軽兜 0%/100%
エスカ軍式軽鎧 100%/100%
エスカ軍式長剣 100%/100%
瘴気 1400%/100%
物品が不足しているため、生成を行えません
――――――――――
……これは欲しい。【エスカ式自動剣歩兵人形】なるものももちろん欲しいのだが、気になるのはわざわざ”剣歩兵”と書かれている点である。今までに手に入れているエスカ軍式の武器は剣と槍だ。
剣歩兵があるということは、”槍”歩兵があるのは必然だろう。そちらについても是非手に入れたい、否、手に入れなければならないと使命感にも似た思いが胸中で燃え上がる。
というわけで、今日は昨日にもまして探索にも気合が入る。
前回の探索では【エスカ軍式軽兜】の素材となるものは見つけることができなかったが、これは昨日の時点では武器のような棒状の物や明らかに人工物のような形のものを狙っていたためだろう。
なので、今日は一見岩や残骸にしか見えないものも片っ端から収集していくことにする。
その甲斐あって、数時間後に目的の屋敷にたどり着くころには、かなりの数の物品を収集することができた。
――――――――――
【エスカ軍式軽兜(劣化大)】
分類:防具・兜
等級:E
詳細:エスカ軍の基本支給装備。軽量で動きや視界を阻害しない構造になっている。風雨により激しく劣化している。
――――――――――
――――――――――
【エスカ軍式戦馬兜(劣化大)】
分類:防具・兜
等級:E
詳細:エスカ軍の戦馬用支給装備。風雨により激しく劣化している。
――――――――――
――――――――――
【エスカ軍式馬鞍(劣化大)】
分類:防具・鞍
等級:E
詳細:エスカ軍の戦馬用支給装備。一般的な鞍よりも重く安定感がある。風雨により激しく劣化している。
――――――――――
――――――――――
【エスカ軍式馬車(破損極大)】
分類:乗物・馬車
等級:E
詳細:エスカ軍の輸送用馬車。一般的な馬車より頑丈に作られている。破損が激しく、修繕はほぼ不可能。
――――――――――
――――――――――
【エスカ軍式皮水筒(破損極大)】
分類:道具・容器
等級:E
詳細:エスカ軍の基本支給装備。破損が激しく、修繕はほぼ不可能。
――――――――――
――――――――――
【エスカ軍式軽兜】
分類:防具・兜
等級:D-
詳細:エスカ軍の基本支給装備。軽量で動きや視界を阻害しない構造になっている。
――――――――――
上の五つは探索で手に入れたもの、【エスカ軍式軽兜】は生成したものだ。
そして、それによりとうとう【エスカ式自動剣歩兵人形】が生成可能となる。
――――――――――
【エスカ式自動剣歩兵人形】を生成します
以下の物品を消費する必要があります
エスカ軍式軽兜 100%/100%
エスカ軍式軽鎧 100%/100%
エスカ軍式長剣 100%/100%
瘴気 1400%/100%
生成を行いますか?【はい/いいえ】
――――――――――
迷わず【はい】に触れると、スケルトンを生成した時のように空間がねじれ、目の前に直立する甲冑が現れた。
――――――――――
【エスカ式自動剣歩兵人形】
分類:自動機装・戦人形
等級:D
権能:【自戦】
詳細:魂核を動力として稼働する魔導人形。エスカ軍式の歩兵装備を素体としており、エスカ軍剣歩兵と同様の戦力を持つ。
――――――――――
目の前に現れた甲冑をじっくりと観察してみる。背丈は兜の先端まで含めて二メートル弱というところだろうか。やはりというか、その全身は【エスカ軍式軽兜】と【エスカ軍式軽鎧】で構成されており、手には【エスカ軍式長剣】が一本握られている。
興味深いことに本来人間の身体があるべきところには何も存在しておらず、鎧や兜は何にも支えられていないはずなのにしっかりと直立している。試しに兜を外してみようと手を伸ばしてみたが、どういう原理か何かに固定されているかのようにいくら引けども微動だにしなかった。
次に【エスカ式自動剣歩兵人形】の性能を確かめるために、【スケルトン】を一体出して攻撃するように指示を出してみる。少しもったいないような気がするが、【スケルトン】は昨日と今日の探索ですでに七体確保済みだ。一体くらいならば必要経費だろう。
命令のすぐ後に、それまでピクリとも動かなかった【エスカ式自動剣歩兵人形】が、飛び掛かるようにして【スケルトン】に切りかかった。切られた【スケルトン】は一撃目で右腕をへし折られ地面にたたきつけられたが、それでも【エスカ式自動剣歩兵人形】は攻撃をやめず、結局やめるよう命令するまで【スケルトン】を攻撃し続けた。
後に残るのは粉々になってしまった【スケルトン】だった骨の欠片だ。このまま放っておくのももったいないので、これも全書で回収してみる。
――――――――――
【骨人形の破片】
分類:素材・触媒
詳細:骨人形を構成していた骨片。魔具の素材や魔法薬の触媒に使用可能。
――――――――――
どうやら【骨人形】は破片になってしまっても使い道があるらしい。【エスカ式自動剣歩兵人形】と違って、【骨人形】の用途はまだはっきりしていないが、集めておけば何かと便利そうだ。
とりあえず手に入れた物品の調査も終わり、新たに手に入れた戦力についても確認できた。仮拠点から全書にしまって持ってきていた食料と水で小休憩を行い、目的だった屋敷に入ってみるとしよう。
かつては立派な門が屋敷の前に立ちふさがっていたのだろうが、今はその残骸が柱にぶら下がっているだけだ。そのせいか、妙に物悲しい屋敷の敷地へと入っていく。
門をくぐると結構な広さの中庭のような場所につながっており、かつては緑あふれる場所であったことがうかがえた。まあ、今はその面影が残るのみだが……。
中庭の向こうに屋敷の本館への入り口があり、そこから建物に入ることができた。中はホールのような形になっており、ところどころ崩れてはいるが二階に上がれそうな階段がある。
中はやはり月日による劣化が激しくみられるが、元の造りがよかったからか、すぐに崩落するなどということはないだろう。安心して屋敷の中の探索を始めることができそうだ。
探索を始める前に、物は試しと【エスカ式自動剣歩兵人形】と【骨人形】にも辺りの探索をするよう指示を出してみたが、予想通りピクリとも動かなかった。【骨人形】は言わずもがな、【エスカ式自動剣歩兵人形】は戦闘以外の命令は一切受け付けないらしい。
なので、今回も一人で屋敷の中にある数々の部屋を片っ端から覗いていく。一階すべて探索し終わるのにおよそ一時間ほどかかっただろうか。
――――――――――
【庭師の衣装】
分類:衣服・衣装
等級:E
詳細:かつて庭師が身に着けていた衣装。
――――――――――
――――――――――
【錆びた剪定鋏】
分類:道具・園芸
等級:E
詳細:錆びて切れ味が落ちている剪定鋏。錆びを取り除けば十分使うことができる。
――――――――――
――――――――――
【錆びたシャベル】
分類:道具・園芸
等級:E
詳細:錆びてしまったシャベル。錆びてはいるが使用可能。
――――――――――
――――――――――
【折れたフォーク】
分類:道具・食器
等級:E
詳細:持ち手が折れてしまったフォーク。
――――――――――
――――――――――
【折れたナイフ】
分類:道具・食器
等級:E
詳細:持ち手が折れてしまったナイフ。
――――――――――
――――――――――
【破損した衣装棚】
分類:道具・家具
等級:E
詳細:破損し、隙間が空いている衣装棚。衣服の保管には適さない。
――――――――――
かかった時間の割には、成果はかなりいまいちである。もっとも状態のよかった部屋でも家具などの劣化が激しく、まともに手に入ったのはかつて庭師が使っていたらしい服と園芸道具がいくつかだけだった。
成果を改めて見てみると、そのわびしさにため息が出てくる。だが、そんな持ち主を慰めるかのように、全書に新たな文章が現れた。
――――――――――
【骨人形・庭師】を生成します
以下の物品を消費する必要があります
骨人形 400%/100%
庭師の衣装 100%/100%
道具・園芸 100%/100%
瘴気 1300%/100%
生成を行いますか?【はい/いいえ】
――――――――――
もはや条件反射のように【はい】に触れる。すると目の前に、先ほど手に入れた【庭師の衣装】と園芸道具を手に持った【スケルトン】が現れた。
見た感じでは生成で手に入れた【骨人形】が服を着ているだけなのだが、どうやら全書によるとこれはただの【骨人形】ではないらしい。
――――――――――
【骨人形・庭師】
分類:|外法遺骸(アンデッド)・骨体
等級:D
権能:【草弄】
詳細:魂核を動力として稼働する魔導人形。不完全だが、かつての庭師の技術を保持している。
――――――――――
色々と気になるところはあるが、要は庭師のようなことができるようだ。先ほどからいくつかの物品に書かれている”権能”という欄が気になるところだが、これはもう少し収集物が増えてから考えた方がわかりやすいだろう。
他に新しく生成できそうなものもないため、次は二階の探索に移る。
二階の部屋数は一階の半分ほどで、その分短い時間で探索は終わってしまった。また、その成果は一階よりも揮わず、服の一着すら見つからない。
だが、二階のもっとも奥まった部屋の一室で、かなり興味深いものを手に入れることができた。おそらくは家主の部屋だったのであろうその部屋は他の部屋と比べて広く、劣化の具合も浅いように見える。
その部屋の中央にはテーブルが置かれており、その上には一本の剣が静置されていた。あまり風も入ってこなかったからか、分厚い埃に覆われたそれを手に持とうとするが、あまりの重さにそもそも持ち上げるために全力を注がなくてはならないほどだ。
だが、そこは便利な全書を利用して、そこから剣を持ち上げることなく全書に収納する。
――――――――――
【エスカ軍式重大剣】
分類:武器・大剣
等級:D
権能:【重撃】
詳細:エスカ軍の支給装備。剛鉄鋼を主な素材として作られており、異様な重量を誇る。団長以上の者に支給された。
――――――――――
全書に記された文章を読んで、自然と口から笑い声が漏れる。説明を読む限り、これまで手に入れた武器とは一線を画した逸品であることは明らかだ。保管状況から見てもこれが珍しい武器であることは疑いの余地はないだろう。
思わぬ収穫に小躍りしながら部屋の中の探索を再開したところ、まだ形を保った本が一冊見つかった。下手に力を加えたら崩れてしまいそうなページをそっと捲ると、そこには見たこともない文字で文章が綴られている。しばらくその文字を眺めてみるが、やはり見覚えもない。これ以上解読する努力をしても無駄だろう。
――――――――――
【エスカ軍団長ガレウスの日誌】
分類:書籍・日誌
詳細:エスカ軍最後の軍団長となったガレウスの軍報日誌。最後のページにはエスカと共に散る覚悟と悲嘆の文章がつづられている。
――――――――――
中身が読めなくても、全書で収集すればちゃんと説明はつくらしい。文字が解読できればこの国に昔何が起きたかを把握できるかもしれないが、現状ではその方法もないので、時が来た時にまた改めて考えることにする。
この部屋には他にめぼしいものはないらしい。それはすなわち、この屋敷の探索が終わったということだ。
さて、これからどうするべきだろうか。まだ古都の探索を続ければ見つかるものはあるだろうが、さりとて現状を打破する一手が手に入るとも思えない。
倉庫で見つけた食料や水はあるが、それも永遠に持つわけではない。他に古都の中でで食料が見つかるとも思えないので、やはり探索の範囲を外に広げなくてはならないだろう。
何気なく屋敷の窓から外を眺める。見えるのは、さも当然のように空高く聳え立つ件の黒壁だ。やはりこの廃墟となった古都は【瘴気】で構成された壁によって完全に囲まれている。鳥のように空高く舞うことができれば、この壁を越えることもできるだろうが、自分の身体には残念ながら羽は生えていないし、飛行を可能にする物品が見つかったり生成できるようになるとも思えない。
強行突破するにしても、【瘴気】に触れた際のあの痛みを思い出す限り、身体は無事では済まないだろう。さて、どうしたものかと、無意識に全書の背表紙を指で叩きながら、ひとり頭をひねるのだった。
今日の目的は古都の中心部にあるひときわ大きな建物である。便宜上”屋敷”と呼ぶことにするが、その立地と大きさから、いかにも他にはないお宝が眠っていそうなのだ。
さらにもう一つ気になることがある。それは今朝目が覚めてから仮拠点で全書を眺めていた時に現れた文章だ。
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【エスカ式自動剣歩兵人形】を生成します
以下の物品を消費する必要があります
エスカ軍式軽兜 0%/100%
エスカ軍式軽鎧 100%/100%
エスカ軍式長剣 100%/100%
瘴気 1400%/100%
物品が不足しているため、生成を行えません
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……これは欲しい。【エスカ式自動剣歩兵人形】なるものももちろん欲しいのだが、気になるのはわざわざ”剣歩兵”と書かれている点である。今までに手に入れているエスカ軍式の武器は剣と槍だ。
剣歩兵があるということは、”槍”歩兵があるのは必然だろう。そちらについても是非手に入れたい、否、手に入れなければならないと使命感にも似た思いが胸中で燃え上がる。
というわけで、今日は昨日にもまして探索にも気合が入る。
前回の探索では【エスカ軍式軽兜】の素材となるものは見つけることができなかったが、これは昨日の時点では武器のような棒状の物や明らかに人工物のような形のものを狙っていたためだろう。
なので、今日は一見岩や残骸にしか見えないものも片っ端から収集していくことにする。
その甲斐あって、数時間後に目的の屋敷にたどり着くころには、かなりの数の物品を収集することができた。
――――――――――
【エスカ軍式軽兜(劣化大)】
分類:防具・兜
等級:E
詳細:エスカ軍の基本支給装備。軽量で動きや視界を阻害しない構造になっている。風雨により激しく劣化している。
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【エスカ軍式戦馬兜(劣化大)】
分類:防具・兜
等級:E
詳細:エスカ軍の戦馬用支給装備。風雨により激しく劣化している。
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【エスカ軍式馬鞍(劣化大)】
分類:防具・鞍
等級:E
詳細:エスカ軍の戦馬用支給装備。一般的な鞍よりも重く安定感がある。風雨により激しく劣化している。
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【エスカ軍式馬車(破損極大)】
分類:乗物・馬車
等級:E
詳細:エスカ軍の輸送用馬車。一般的な馬車より頑丈に作られている。破損が激しく、修繕はほぼ不可能。
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【エスカ軍式皮水筒(破損極大)】
分類:道具・容器
等級:E
詳細:エスカ軍の基本支給装備。破損が激しく、修繕はほぼ不可能。
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【エスカ軍式軽兜】
分類:防具・兜
等級:D-
詳細:エスカ軍の基本支給装備。軽量で動きや視界を阻害しない構造になっている。
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上の五つは探索で手に入れたもの、【エスカ軍式軽兜】は生成したものだ。
そして、それによりとうとう【エスカ式自動剣歩兵人形】が生成可能となる。
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【エスカ式自動剣歩兵人形】を生成します
以下の物品を消費する必要があります
エスカ軍式軽兜 100%/100%
エスカ軍式軽鎧 100%/100%
エスカ軍式長剣 100%/100%
瘴気 1400%/100%
生成を行いますか?【はい/いいえ】
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迷わず【はい】に触れると、スケルトンを生成した時のように空間がねじれ、目の前に直立する甲冑が現れた。
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【エスカ式自動剣歩兵人形】
分類:自動機装・戦人形
等級:D
権能:【自戦】
詳細:魂核を動力として稼働する魔導人形。エスカ軍式の歩兵装備を素体としており、エスカ軍剣歩兵と同様の戦力を持つ。
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目の前に現れた甲冑をじっくりと観察してみる。背丈は兜の先端まで含めて二メートル弱というところだろうか。やはりというか、その全身は【エスカ軍式軽兜】と【エスカ軍式軽鎧】で構成されており、手には【エスカ軍式長剣】が一本握られている。
興味深いことに本来人間の身体があるべきところには何も存在しておらず、鎧や兜は何にも支えられていないはずなのにしっかりと直立している。試しに兜を外してみようと手を伸ばしてみたが、どういう原理か何かに固定されているかのようにいくら引けども微動だにしなかった。
次に【エスカ式自動剣歩兵人形】の性能を確かめるために、【スケルトン】を一体出して攻撃するように指示を出してみる。少しもったいないような気がするが、【スケルトン】は昨日と今日の探索ですでに七体確保済みだ。一体くらいならば必要経費だろう。
命令のすぐ後に、それまでピクリとも動かなかった【エスカ式自動剣歩兵人形】が、飛び掛かるようにして【スケルトン】に切りかかった。切られた【スケルトン】は一撃目で右腕をへし折られ地面にたたきつけられたが、それでも【エスカ式自動剣歩兵人形】は攻撃をやめず、結局やめるよう命令するまで【スケルトン】を攻撃し続けた。
後に残るのは粉々になってしまった【スケルトン】だった骨の欠片だ。このまま放っておくのももったいないので、これも全書で回収してみる。
――――――――――
【骨人形の破片】
分類:素材・触媒
詳細:骨人形を構成していた骨片。魔具の素材や魔法薬の触媒に使用可能。
――――――――――
どうやら【骨人形】は破片になってしまっても使い道があるらしい。【エスカ式自動剣歩兵人形】と違って、【骨人形】の用途はまだはっきりしていないが、集めておけば何かと便利そうだ。
とりあえず手に入れた物品の調査も終わり、新たに手に入れた戦力についても確認できた。仮拠点から全書にしまって持ってきていた食料と水で小休憩を行い、目的だった屋敷に入ってみるとしよう。
かつては立派な門が屋敷の前に立ちふさがっていたのだろうが、今はその残骸が柱にぶら下がっているだけだ。そのせいか、妙に物悲しい屋敷の敷地へと入っていく。
門をくぐると結構な広さの中庭のような場所につながっており、かつては緑あふれる場所であったことがうかがえた。まあ、今はその面影が残るのみだが……。
中庭の向こうに屋敷の本館への入り口があり、そこから建物に入ることができた。中はホールのような形になっており、ところどころ崩れてはいるが二階に上がれそうな階段がある。
中はやはり月日による劣化が激しくみられるが、元の造りがよかったからか、すぐに崩落するなどということはないだろう。安心して屋敷の中の探索を始めることができそうだ。
探索を始める前に、物は試しと【エスカ式自動剣歩兵人形】と【骨人形】にも辺りの探索をするよう指示を出してみたが、予想通りピクリとも動かなかった。【骨人形】は言わずもがな、【エスカ式自動剣歩兵人形】は戦闘以外の命令は一切受け付けないらしい。
なので、今回も一人で屋敷の中にある数々の部屋を片っ端から覗いていく。一階すべて探索し終わるのにおよそ一時間ほどかかっただろうか。
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【庭師の衣装】
分類:衣服・衣装
等級:E
詳細:かつて庭師が身に着けていた衣装。
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【錆びた剪定鋏】
分類:道具・園芸
等級:E
詳細:錆びて切れ味が落ちている剪定鋏。錆びを取り除けば十分使うことができる。
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【錆びたシャベル】
分類:道具・園芸
等級:E
詳細:錆びてしまったシャベル。錆びてはいるが使用可能。
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【折れたフォーク】
分類:道具・食器
等級:E
詳細:持ち手が折れてしまったフォーク。
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【折れたナイフ】
分類:道具・食器
等級:E
詳細:持ち手が折れてしまったナイフ。
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【破損した衣装棚】
分類:道具・家具
等級:E
詳細:破損し、隙間が空いている衣装棚。衣服の保管には適さない。
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かかった時間の割には、成果はかなりいまいちである。もっとも状態のよかった部屋でも家具などの劣化が激しく、まともに手に入ったのはかつて庭師が使っていたらしい服と園芸道具がいくつかだけだった。
成果を改めて見てみると、そのわびしさにため息が出てくる。だが、そんな持ち主を慰めるかのように、全書に新たな文章が現れた。
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【骨人形・庭師】を生成します
以下の物品を消費する必要があります
骨人形 400%/100%
庭師の衣装 100%/100%
道具・園芸 100%/100%
瘴気 1300%/100%
生成を行いますか?【はい/いいえ】
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もはや条件反射のように【はい】に触れる。すると目の前に、先ほど手に入れた【庭師の衣装】と園芸道具を手に持った【スケルトン】が現れた。
見た感じでは生成で手に入れた【骨人形】が服を着ているだけなのだが、どうやら全書によるとこれはただの【骨人形】ではないらしい。
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【骨人形・庭師】
分類:|外法遺骸(アンデッド)・骨体
等級:D
権能:【草弄】
詳細:魂核を動力として稼働する魔導人形。不完全だが、かつての庭師の技術を保持している。
――――――――――
色々と気になるところはあるが、要は庭師のようなことができるようだ。先ほどからいくつかの物品に書かれている”権能”という欄が気になるところだが、これはもう少し収集物が増えてから考えた方がわかりやすいだろう。
他に新しく生成できそうなものもないため、次は二階の探索に移る。
二階の部屋数は一階の半分ほどで、その分短い時間で探索は終わってしまった。また、その成果は一階よりも揮わず、服の一着すら見つからない。
だが、二階のもっとも奥まった部屋の一室で、かなり興味深いものを手に入れることができた。おそらくは家主の部屋だったのであろうその部屋は他の部屋と比べて広く、劣化の具合も浅いように見える。
その部屋の中央にはテーブルが置かれており、その上には一本の剣が静置されていた。あまり風も入ってこなかったからか、分厚い埃に覆われたそれを手に持とうとするが、あまりの重さにそもそも持ち上げるために全力を注がなくてはならないほどだ。
だが、そこは便利な全書を利用して、そこから剣を持ち上げることなく全書に収納する。
――――――――――
【エスカ軍式重大剣】
分類:武器・大剣
等級:D
権能:【重撃】
詳細:エスカ軍の支給装備。剛鉄鋼を主な素材として作られており、異様な重量を誇る。団長以上の者に支給された。
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全書に記された文章を読んで、自然と口から笑い声が漏れる。説明を読む限り、これまで手に入れた武器とは一線を画した逸品であることは明らかだ。保管状況から見てもこれが珍しい武器であることは疑いの余地はないだろう。
思わぬ収穫に小躍りしながら部屋の中の探索を再開したところ、まだ形を保った本が一冊見つかった。下手に力を加えたら崩れてしまいそうなページをそっと捲ると、そこには見たこともない文字で文章が綴られている。しばらくその文字を眺めてみるが、やはり見覚えもない。これ以上解読する努力をしても無駄だろう。
――――――――――
【エスカ軍団長ガレウスの日誌】
分類:書籍・日誌
詳細:エスカ軍最後の軍団長となったガレウスの軍報日誌。最後のページにはエスカと共に散る覚悟と悲嘆の文章がつづられている。
――――――――――
中身が読めなくても、全書で収集すればちゃんと説明はつくらしい。文字が解読できればこの国に昔何が起きたかを把握できるかもしれないが、現状ではその方法もないので、時が来た時にまた改めて考えることにする。
この部屋には他にめぼしいものはないらしい。それはすなわち、この屋敷の探索が終わったということだ。
さて、これからどうするべきだろうか。まだ古都の探索を続ければ見つかるものはあるだろうが、さりとて現状を打破する一手が手に入るとも思えない。
倉庫で見つけた食料や水はあるが、それも永遠に持つわけではない。他に古都の中でで食料が見つかるとも思えないので、やはり探索の範囲を外に広げなくてはならないだろう。
何気なく屋敷の窓から外を眺める。見えるのは、さも当然のように空高く聳え立つ件の黒壁だ。やはりこの廃墟となった古都は【瘴気】で構成された壁によって完全に囲まれている。鳥のように空高く舞うことができれば、この壁を越えることもできるだろうが、自分の身体には残念ながら羽は生えていないし、飛行を可能にする物品が見つかったり生成できるようになるとも思えない。
強行突破するにしても、【瘴気】に触れた際のあの痛みを思い出す限り、身体は無事では済まないだろう。さて、どうしたものかと、無意識に全書の背表紙を指で叩きながら、ひとり頭をひねるのだった。
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