ずっと好きだった幼馴染が放課後に部活顧問の肉棒を咥えていて、僕はスマホで撮影した。

透衣絵ゐ

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第一章 放課後

放課後(2)

「違うの……! 違う。違うから。違うんだからねっ!」

 何かに取り憑かれたように、幼馴染が縋るような声を出す。
 明莉のブラウスはボタンがいくつも外れていて、胸元がはだけている。
 左肩には鎖骨の窪みを跨ぐように、白いブラジャーの肩紐も見える。

 さっきまで明莉は男の性器を咥えていた。
 今は気だるそうに垂れ下がった男根。
 なんでそんなことになっていたんだ――。頭が追いつかない。

 ほんの一瞬の出来事だったのに、僕の喉はカラカラだった。頭も沸騰している。
 何がどうなっているんだ?

 誰かがフェラチオをしているところなんて初めて見た。
 高校二年生の男子にもなれば、アダルトビデオやエロ漫画で得た知識はある。

 でも、なんで明莉が? なんでそれが明莉なんだよ!?

「――明翔くん。……これは、……違うんだよ?」
「……何が違うのさ――?」
「何って……、その、何……って」

 泣きそうに顔をしかめる明莉。

 なんで僕がいじめているみたいになっているんだ。
 泣きたいのはこっちなのに。

 状況は間違いなく、二人のただならない関係を物語っている。

 親密な関係。性的な関係。禁忌の関係。僕の知らなかった関係。

 二人は付き合っているのか?
 明莉と真白先生は恋人同士なのか?

 ――明莉と真白先生はエッチするような関係なのか?

 ずっと好きだった幼馴染を、この聖職者然とした優男に奪われていたのか?

 明莉は――僕じゃなくて、こんな物理教師のことが好きだったのか?

 思い描いていた淡い学園生活。君への告白に続く日々と、それから二人で過ごす受験生活。
 それは僕の心の中だけにあった未来絵図だった?
 明莉はこの男を選んでいて、その心は僕にはとっくの昔に無かった?
 僕はずっと好きだった幼馴染を、教師に寝取られていた?


「――明莉は……真白先生と……」
「――ん……」

 僕の質問とも何ともつかない呟きに、明莉が小さく喉を鳴らす。

 いや、この物理教師が強引に明莉にしゃぶらせていたという可能性もあるだろう。
 僕としては、寧ろ、その方がまだマシだ。

 もし、彼女が強制されていたのだとすれば、まだ僕は彼女を救う正義の味方になれる道があるじゃないか。
 偶然駆けつけた幼馴染が、教師による性的暴行の現場を押さえて少女を救い出す。
 幼馴染同士は結ばれて、晴れてハッピーエンドだ。

 その後のフェラチオシーンは、僕の部屋のベッドの上で構わない。
 愛に溢れた性行為を、君としようじゃないか。
 君がしゃぶりつく、太くて弾力ある肉棒は――僕のをあげるよ。

 いや、その世界線も、マシなんかじゃないな。
 そのシナリオじゃ、明莉が強引に性行為させられているのが前提じゃないか。
 明莉がその意思に反してだれかに犯されるみたいな世界線なんて、やっぱりごめんだ。
 
 ただ、どっちにしろ、今、僕のいるこの世界線は違うみたいだ。
 落ち着き無く動く幼馴染の視線は、正義の味方の僕に助けを求めるものではない。

 明莉はむしろ半歩だけ前に進んで立ちはだかる。
 真白先生から逃げ出して僕の方へと来るわけではなくて。
 彼女は後ろに立つ男を、庇おうとしているようでさえあった。 
 だから彼女は無理矢理犯されていたのではない、みたいだ。

 まるで、この状況を取り繕おうとしするように、いたいけな彼女は立ちはだかる。
 もはや取り繕える状況なんかどこにも無いのに。


「……とにかく、そのスマホ、下ろして……くれないかな? 明翔くん」
「あ……アァ」


 俯きがちに明莉から言われて、ようやく自分が動画を撮り続けていることを思い出した。
 彼女のはだけた胸元も、震えている頬も、その縋るような声も、僕はその全てを手元のスマホの中に記録し続けていた。

 明莉に言われて、スマホを持つ右手を下ろす。
 そもそも盗撮が目的ではないのだ。
 僕の撮影目的は、純然たる創作のための風景撮影だったのである。

 画面の赤いボタンを押して撮影を終了する。データは保存された。
 液晶をさらにタップすると確認画面が現れて、僕はもう一度OKボタンを押す。
 その後、スワイプしてアプリを落とした。


 理科実験室に、夕焼け前の暖色がカーテンの隙間から越し込んでいる。

 僕と明莉は、ただ沈黙を共有した。
 言葉を失った三人の間を幾ばくかの時間が流れる。

 明莉の後ろで物理教師がズボンを上げて、服を整える衣擦れの音だけが、薄明かりの理科実験室に響いている。僕は生唾を飲み込んだ。

 そのどうしようもない沈黙を破ったのは、明莉だった。


「――秋翔は、……何をしているの?」
「映像作品作るのに、素材の収録……だよ。言っていただろ。投稿作品作るんだって」
「うん。言ってた。でも――どうやって部屋に入ってきたの?」
「……いや、鍵、……普通に開いていたからさ」

 僕はそう言って一度半身振り向いて扉を指差して見せる。
 露骨に明莉は顔をしかめた。
 ――きっと鍵は掛かっているはずだったのだろう。

 僕は、そのまま後ろ手で扉を閉める。
 廊下から差し込んでいた白い光が遮断された。

 廊下を通る誰か別の生徒や教職員に、服をはだけた明莉の姿を見られるのは嫌だったし、見せてはいけないと思った。

 僕が明莉のことをずっと好きだったし、今だって好きなのは事実だ。
 だから彼女に恥ずかしい思いをさせたくはない。彼女のこの状況を他の人間に見せてはいけない。

 教職員に見られたら問題になるだろうし、生徒に見られて噂が広まれば彼女の高校生活が実質的に終わってしまう可能性だってある。

 僕しか見ていないなら、まだ僕だけの心の中に仕舞っておける。


 明莉が他人の肉棒を加えていたこんな胸糞悪い空間に、別に長居するつもりはない。

 でも、何もわからないままに、この状況から逃げ出せば、さっき見た映像は僕の頭の中で再生され続けて、自分の脳味噌がおかしくなってしまいそうなのは分かっていた。
 それに、このまま別れたら、明莉と気まずくなってずっと口さえ利けなくなる気がした。

 十年以上の付き合い。大切な幼馴染とこんなことで終わるなんてオチは嫌だった。

 だから僕はまだこの部屋に立ち、この状況に付き合うこと――向き合うことを選んだ。

 僕は逃げない。すでに彼女がこの優男の手に落ちているのだとしても、篠原明莉は僕の大切な幼馴染で、ずっと好きだった女の子なんだ。


 僕は左手で扉の脇を探る。たしかそのあたりに――あったはずだ。
 指先を動かして触覚で探り当てると、僕はスイッチを押し込んだ。

 頭上で「ジー……」と震える音が鳴ってから、いくつかの蛍光灯が順々に点灯していく。
 理科実験室の前半分が白く照らされる。薄暗かった視界は鮮明になる。

 はだけた胸元からはブラジャーの輪郭も見える。
 白く柔らかそうな胸の膨らみに至る裾野が、はっきりと観察された。触れるときっと柔らかくて、滑らかな白い肌。

 こんな状況なのに、僕は股間へと自分の血液が集まるのを感じた。
 
 白い蛍光灯の明かりが教室の前半分を照らす。
 今やはっきりとボブヘアの篠宮明莉と、――その背後に真白先生の姿が見えた。


「――真白先生、説明してもらえますか?」


 僕は真白先生のことが好きではない。

 まだ二〇代後半の真白先生は、甘いマスクと、柔らかい物腰で、女子に人気があった。
 授業は特段わかりやすいわけではないのに。 

 でも女子に好かれる反動で、男子からは煙たがられている。

 僕もいままでは 「何となく好きじゃない」程度だった。
 でも僕は今、この物理教師のことが本気で嫌いになりそうだ――。

 お前、一体、明莉に何させているんだよ!
 説明しろよ! その上で、明莉に守られようなんて、そんなの許されないだろ!
 説明しろよ! この腐れ物理教師が!
 生徒に手を出していたのかよ!
 僕の明莉に、お前は手を出していたのかよ!

 しかし真白先生は端正なマスクの上に掛けたメガネのブリッジを、中指の先で持ち上げて、開き直るように言った。

「――説明って、何をだい?」
「――はぁ?」

 僕は思わず顔をしかめた。
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