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エピローグ
エピローグ
「はい! あーしの絶景スポット――屋上へようこそ~!」
森美樹は鍵を回して扉を開け放つと、まだ風の吹くまだ寒い屋上へと飛び出した。
ポケットに両手を突っ込んだまま、水上が「よっ!」とジャンプしてそれに続く。
「――秋翔くん、大丈夫?」
「うん、まぁ、いけるいける」
松葉杖をコンクリートの上に突くと、それに体重を預けて、僕は屋上へと降り立った。
もう一方の上腕を明莉が支えてくれる。
土曜日の事件から二日が過ぎて火曜日。僕らは放課後の屋上へと繰り出していた。
僕が森さんに頼んだのだ。
明莉と二人で話がしたいから屋上を開けてほしい――って。
森さんは「いーよー、イシシ」と笑顔で快諾してくれた。
彼女もそろそろ水上を連れていこうと思っていたらしくて、放課後の屋上へと四人で向かうことになった。
以前、森さんと来て以来、二度目の屋上だ。
柵で囲まれたコンクリートの上からは僕らが住む小さな街の姿が一望出来た。
遠くに遊園地の観覧車、中央駅前のビル群、駅前のショッピングモール。
僕らの青春はこの小さな街の中で揺れている。
「――すごい綺麗な景色ね。初めて来た。森さんって何者?」
「偶然鍵を拾ったみたいだよ。……あ、これは秘密ね。もちろん真白先生にも」
「もちろん。秋翔くんも小石川先生に言わないようにね」
「――言わないよ!」
僕らは少し強い風に吹かれながら屋上の端に並ぶ柵へと近づいていく。
水上と森さんは二人で別方向の景色を求めて歩いていった。
柵に松葉杖を立て掛けて、肘を突くと、グランドを走り回る運動部の生徒たちの姿見えた。それはとても青春な光景に思えた。
「――秋翔くん」
「なに?」
明莉も柵に肘を突いた。そして語りかける。
隣を見るといつもの明莉の横顔で、綺麗なボブヘアが風に揺れていた。
「――えっと、お疲れ様?」
「何それ? 適当だなぁ、明莉は」
「だって、なんて言葉で表現したらいいのか、全然わかんないんだもん。――本当にいろいろありすぎて」
「そうだな――、いろいろありすぎたよな」
僕らはそう言って、西の空に浮かぶ太陽を眺めた。
明莉と真白先生の性行為を理科実験室で目撃したのが三週間前。
本当はすべてが去年の盗作事件から地続きに繋がっていたのだけれど。
いずれにせよこの三週間は濃密すぎた。
※
あの日――土曜日に僕が意識を失ってからの話をしよう。
僕は右太腿から大量出血し、真白先生は腹部からさらに多くの血を流し、二人とも意識を失った。
土曜日なのに小石川先生と保健委員の木戸美里香が駆けつけてくれて、僕らには応急処置が施された。
僕は実際には死に至るほどの傷ではなかったのだけれど、真白先生については、応急処置無しでは本当に命を落としていた可能性が大きかったという。
明莉が呼んでくれていた救急車が到着し、僕と真白先生は病院へと運ばれた。
病院につくと二人ともすぐ処置がなされた。僕の傷は入院するほどでも無くて縫合手術の後に包帯でぐるぐる巻きにされ後、後は松葉杖を渡されて自宅安静を命じられた。
一方、真白先生の状況は深刻で、内蔵にも傷が付いていて、最低一週間程度の入院が求められた。夕方になって意識を取り戻した真白先生は、苦痛に顔を歪めながらも苦笑いを浮かべていた。
「生徒に手を出した教師に天罰でも落ちたのかな?」
そんな笑いようのない冗談を口にしていた。
当然、僕らは微妙な空気を作っただけで、全く笑わなかった。
僕らが病院へと運び込まれて一時間も経たない内に次々と関係者が飛び込んできた。
明莉と小石川先生が連絡して、僕の母親――悠木奈那と、校長先生と教頭先生がやってきた。校長先生と教頭先生は学園で起きた殺人未遂事件に狼狽しているようだった。
そんな二人を僕の母さんは容赦なく叱り飛ばしていた。一人息子が学校で大量出血の傷を負ったのだ。母さんの心配はもっともなことかもしれない。
ただ母さんの剣幕に迫力がありすぎて、校長先生と教頭先生のみならず病室全体が震え上がっていた。あまりの怒声にナースステーションから看護師長さんがやってきて、母さんを宥めていた。
校長先生が「奈那さん、申し訳ない」と下の名前で母さんを呼んだのが気になったけれど、終始母さんのペースだった。PTA活動などで、思っていたよりも親しい感じの交流が教職員とあったのかもしれない。
ちょっとやり過ぎかなとは思ったけれど、母親が自分のことを本気で心配してくれる様子を見るのは――悪くなかった。
小石川先生に連れてこられた香奈恵さんは真白先生のベッド脇で放心状態になっていた。
明莉はずっと僕に寄り添ってくれた。
その他の入院に必要なものの買い物などについては、保健委員の木戸さんがてきぱきと対応してくれた。別に血の繋がりも交友関係もないのに、彼女は小石川先生と共に笑顔で動いてくれた。正直かなり助かった。
小石川先生によると木戸さんは看護師志望らしい。
将来、立派な看護師になるのは間違いないだろうなぁ、となんとなく思った。
昼下りに警察がやってきて事情聴取をしたのだけれど、僕らは無理筋だとは思いながら「不注意による事故」という主張を繰り返した。
真白先生はまだ目を覚ましていなかったけれど、彼は必ずその落としどころを希望するだろうと思った。――なんだかんだで僕と真白先生の思考回路はよく似ているのだ。明莉もその落とし所に納得してくれた。
警察は完全に訝しんでいたが、被害者を含めて現場にいた関係者一同が全員口を揃えて「不注意による事故」を主張するので、仕方なく刑事事件としての立件を見送ってくれることになった。「本当にそれで良いのか?」と何度も確認されたが、僕ははっきりと首を縦に振った。それが僕らの――事実なのだと。
ちなみにこのことに関して僕は目を覚ました真白先生から感謝されることになる。
――真白先生が一番傷を負った被害者なのに。
※
日曜日、念の為の検査に来るように言われて、僕は病院へと向かった。
明莉が付き添ってくれて、母さんが車で送ってくれた。
僕の検査の結果は良好で、特段の異常は無かった。後は時間薬だから経過観察していこうと言われた。
ついでに真白先生の病室に立ち寄った。一応のお見舞いだ。
先生は半身を斜めに起こして、本を読んでいた。
僕らの来訪に気付くと本を閉じて、ベッド脇の椅子に座るように促した。
読んでいた本が分厚かったので何を読んでいたのかと尋ねると、熱力学に関する数学書なのだと言っていた。
時間が出来たから今のうちに日頃勉強できなくて積ん読になっていた本を読むんだとか。意外と教師の鑑みたいな人なんだな、と思った。
病室に香奈恵さんはいなかった。やっぱり精神状態が不安定なので、一旦実家の榎本家に戻って療養しているのだとか。「一人にするのは、心配だからね、やっぱり」と真白先生は少し困ったような笑顔を浮かべた。でもその笑顔は随分と清々しそうにも思えた。
人生において重い荷物は下ろしているよりも背負っているときの方が、人は自分らしくいられることがあるのかもしれない。
「――なんだかすまなかったな、二人とも。色々あったけれど、あらためて振り返ってみると、僕ら夫婦の問題に君たち二人を巻き込んでしまったのかもしれない」
そう言って真白先生は寝間着姿のまま上体を起こした。少しだけ痛みに顔をしかめて。
「いえ、僕こそすみません。――あの日、動画を撮った日から僕が勝手に暴走しなければ、……ここまでのことにはならなかったかと」
結局、僕が状況を掻き混ぜて、巻き込んで、事態を悪化させてしまったように思う。
世界線を│発散《ダイバージェンス》させていたのは僕自身だったのかもしれない。
「それを言ったら僕ら教師陣が一年前に起きたコンテストの問題を上手く収められていたら、そもそもの問題も起きなかったのかもしれない」
その言葉にはっとする。
真白先生があの一件に責任を感じていたとは知らなかった。
教師も万能ではない。責任を感じていてもどうにも解決出来ないことはあるのだと、当たり前のことを思い出した。
「――香奈恵の上司が立派な人だったら、佐渡と君たちの作品提出前に僕がちゃんとチェックしていたら、とか――タラレバは尽きないよ。結局全ての現象は繋がっているんだから。でも――だからこそ僕は君たちに謝りたいんだよ。僕は僕の責任を手放したくはないからね。――すまなかった」
そう言って、真白先生は僕と明莉に深々と頭を下げた。
「――いいです。僕はもう。なんだか僕も、振り返るとかなり酷いことをしてしまったんで。……明莉さえ良ければ――もう」
僕は隣の幼馴染みの横顔を見る。慰めあう関係から、恋人としての関係に至った女子生徒――篠宮明莉へと、真白先生も視線を向けた。
明莉はゆっくりと唇を開く。
「……真白先生は、私のこと好きでしたか? 卒業したら香奈恵さんと別れて、私と付き合って、いつか結婚したいと言ってくれたのは、――本心ですか?」
「――本心だよ。本当にそう思っていたよ。――君だけが僕の、心の支えだったから」
「――だったら、……良かったです。――香奈恵さんと、どうか末永く、……お幸せに」
最後の言葉は嗚咽混じりだった。
隣に座る明莉は泣いていた。
泣きながら笑っていた。
「篠宮さんも――ありがとう。中途半端な男で申し訳なかったけれど、君と過ごした一年間が僕を今まで支えてきたのは事実だから。……これからは僕から自由になって、――君らしい青春を歩んでほしい」
真白先生の言葉は優しかった。
だから明莉はうなずいた。――とても苦しそうに。
「――先生も、頑張ってくださいね。奥さんのこと」
「ああ、頑張るよ。――きっと願いは届くと思うから」
それから真白先生は右手を伸ばして僕の肩を小突いた。
「――篠宮さんを頼むぞ。しぶとい幼馴染みの少年」
「あ……、はい」
僕はなんて答えて良いか分からなくて、ただ頷いた。
※
月曜日は安静にして、火曜日から登校した。松葉杖は目を引いて「どうしたんだ?」と同級生たちからは詰め寄られたけれど「ただの事故だよ」といなした。
事件に関しては関係者に徹底した箝口令が敷かれ、また現場となった理科実験室に残っていた血痕は日曜日の内に校長先生と教頭先生の手によって徹底的なクリーニングがなされ、証拠は消え去った。
証拠隠蔽にかける学園トップの情熱に感心するとともに、なんだか微妙な気持ちになったのも事実だ。いずれにせよまた学校が興味本位の流言に満たされることは回避された。
そして放課後に僕らは屋上へと繰り出した。
屋上からは色々な物が見える。
人、建物、山、川、観覧車、電車――僕らの生活を包む幾億もの事象。
そして今、隣には君がいる。
その笑顔にはいくつもの意味があって、いくつもの背景がある。
幾人もの人の思いが重なり合って、僕と君の物語は織りなされている。
「――明莉はこれからどうするの? 真白先生と別れて、……放送部は?」
「うん、放送部には残るよ? いっときの嫌な雰囲気も今は無いし、真白先生と私が付き合っていたのは秘密だったし。――部活は好きだし。お昼の放送とか?」
「――そっか。じゃあ、うん、それが良いんだろうな」
「――うん」
彼女の髪が耳に掛かって、うなじが見える。
小学生の頃の雰囲気は未だに残っている。
それでも彼女は大人になったと思う。
綺麗で優しくて素敵な――女性に。
「秋翔くんはどうするの? 戻ってこない? 放送部? いろんなことのほとぼりも冷めたし、真白先生とも仲直りしたし」
「――どうかなぁ~」
正直今更っていう思いもある。もうすぐ三年生だし、再入部してもどうせすぐに引退だ。
それに動画制作は部活に入らなくても出来るんだ。
「やめておくよ。僕はこのまま自宅での創作活動を続けるよ」
「――そう? わかった。無理強いはしないよ。秋翔くんが選ぶことだと思うし」
そう言って、明莉は屋上の柵に両手を掛けて仰け反るように伸びをした。
「でも今度投稿するショートムービーの制作手伝ってくれたら嬉しいかな?」
「――私? 森さんじゃなくて?」
「うん、明莉。 森さんは女優枠? 明莉はまた別の形で手伝って欲しいなって……って、もしかして森さんに妬いてたりする?」
「違うわよ。――でも、秋翔くんは森さんみたいな女の子を可愛いって思うのかなって、そう思って」
明莉がそう言って、頬を膨らませる。
僕はそんな彼女のリアクションが意外で、一瞬意味が分からなかった。
まだ明莉は理解していないのだ。
僕にとっての理想がどんな女の子なのかを。
「女優に必要なのは演技力。見た目の好みとは別だよ。――可愛さだけなら断然、僕にとっては明莉さ」
「――えっ?」
彼女は僕の方を振り返る。目を見開いて今更すぎるリアクションを僕へと返す。
そんな表情さえも堪らなく可愛らしくて僕は身悶えた。
僕は彼女の隣で篠宮明莉の微かな香りに包まれる。
「――ねぇ、明莉。こんなタイミングで言うのもどうかと思うんだけどさ。あらためて一つだけ伝えておいても良いかな? 僕にとっては当たり前過ぎて、あらためて言う必要も無いくらいだって思っていたんだけれど。……やっぱり一度はちゃんと言葉にしなくちゃいけないんだろうなって、思ってさ」
僕の長い前振りに、明莉は首を傾げた。
「――何かな?」
僕らは向き合う。立入禁止の屋上で。
いろいろな事があった放課後の校舎の上で。
収束した世界線を、またその先に伸ばしていくために。
二人の物語を重ね合わせて、一つの物語にしていくために。
言葉はそのためにあるのだから。
「好きなんだ。明莉のことが、ずっと昔から、これからもずっと」
驚いたような表情が幼馴染の顔に広がっていく。
小学校の時に同じクラスになった。
それが始まりだった。
中学生、高校生とずっと一緒にいて、きっと僕は明莉のことをずっと好きだった。――でもそのことをちゃんと伝えたことはなかったと思う。
今日初めて、僕は明莉にちゃんと告白した。
恋人ごっこでも、偽装恋愛でもなくて――僕の本当の思いを真っ直ぐに。
「――ありがとう、秋翔くん。初めてだよきっと。ちゃんと言ってくれたのは。――嬉しいよ」
明莉は笑顔を浮かべる。その顔いっぱいに。
それは僕に向けられた、彼女自身の笑顔だった。
「うん。だから待っている。僕は明莉といつか本当の――恋人同士になれる未来を」
西の空から夕日が差した。
その光が彼女の目尻で乱反射する。
煌めきはいくつも瞬いて、輝きは僕らの側にあった。
「――うん。いつかきっと。――今度は私から……秋翔くんに言うね」
目に見えた出来事が全てじゃない。
スマートフォンで映した情景が全てじゃない。
僕らは放課後の世界で、ようやくそんな当たり前の答えへとたどり着いた。
僕らは一人ひとりの思いをもって共に物語を織りなしていく。
それが僕たちの現実を作り出して、美しい色彩を与えていくたった一つ方法だから。
背中から僕らを呼ぶ声がした。
水上と森さんが手を振っている。撤収、撤収、と声を上げながら。
学校の中なのに二人はもう一つの手を繋いでいる。
「――じゃあ、そろそろ僕らも行こうか」
「――うん」
僕が左手を差し出す。彼女がその手を取った。
ずっと好きだった幼馴染と放課後の屋上で僕は手を繋いで――また歩き始めた。
―― ずっと好きだった幼馴染が放課後に部活顧問の肉棒を咥えていて、僕はスマホで撮影した。(了)――
森美樹は鍵を回して扉を開け放つと、まだ風の吹くまだ寒い屋上へと飛び出した。
ポケットに両手を突っ込んだまま、水上が「よっ!」とジャンプしてそれに続く。
「――秋翔くん、大丈夫?」
「うん、まぁ、いけるいける」
松葉杖をコンクリートの上に突くと、それに体重を預けて、僕は屋上へと降り立った。
もう一方の上腕を明莉が支えてくれる。
土曜日の事件から二日が過ぎて火曜日。僕らは放課後の屋上へと繰り出していた。
僕が森さんに頼んだのだ。
明莉と二人で話がしたいから屋上を開けてほしい――って。
森さんは「いーよー、イシシ」と笑顔で快諾してくれた。
彼女もそろそろ水上を連れていこうと思っていたらしくて、放課後の屋上へと四人で向かうことになった。
以前、森さんと来て以来、二度目の屋上だ。
柵で囲まれたコンクリートの上からは僕らが住む小さな街の姿が一望出来た。
遠くに遊園地の観覧車、中央駅前のビル群、駅前のショッピングモール。
僕らの青春はこの小さな街の中で揺れている。
「――すごい綺麗な景色ね。初めて来た。森さんって何者?」
「偶然鍵を拾ったみたいだよ。……あ、これは秘密ね。もちろん真白先生にも」
「もちろん。秋翔くんも小石川先生に言わないようにね」
「――言わないよ!」
僕らは少し強い風に吹かれながら屋上の端に並ぶ柵へと近づいていく。
水上と森さんは二人で別方向の景色を求めて歩いていった。
柵に松葉杖を立て掛けて、肘を突くと、グランドを走り回る運動部の生徒たちの姿見えた。それはとても青春な光景に思えた。
「――秋翔くん」
「なに?」
明莉も柵に肘を突いた。そして語りかける。
隣を見るといつもの明莉の横顔で、綺麗なボブヘアが風に揺れていた。
「――えっと、お疲れ様?」
「何それ? 適当だなぁ、明莉は」
「だって、なんて言葉で表現したらいいのか、全然わかんないんだもん。――本当にいろいろありすぎて」
「そうだな――、いろいろありすぎたよな」
僕らはそう言って、西の空に浮かぶ太陽を眺めた。
明莉と真白先生の性行為を理科実験室で目撃したのが三週間前。
本当はすべてが去年の盗作事件から地続きに繋がっていたのだけれど。
いずれにせよこの三週間は濃密すぎた。
※
あの日――土曜日に僕が意識を失ってからの話をしよう。
僕は右太腿から大量出血し、真白先生は腹部からさらに多くの血を流し、二人とも意識を失った。
土曜日なのに小石川先生と保健委員の木戸美里香が駆けつけてくれて、僕らには応急処置が施された。
僕は実際には死に至るほどの傷ではなかったのだけれど、真白先生については、応急処置無しでは本当に命を落としていた可能性が大きかったという。
明莉が呼んでくれていた救急車が到着し、僕と真白先生は病院へと運ばれた。
病院につくと二人ともすぐ処置がなされた。僕の傷は入院するほどでも無くて縫合手術の後に包帯でぐるぐる巻きにされ後、後は松葉杖を渡されて自宅安静を命じられた。
一方、真白先生の状況は深刻で、内蔵にも傷が付いていて、最低一週間程度の入院が求められた。夕方になって意識を取り戻した真白先生は、苦痛に顔を歪めながらも苦笑いを浮かべていた。
「生徒に手を出した教師に天罰でも落ちたのかな?」
そんな笑いようのない冗談を口にしていた。
当然、僕らは微妙な空気を作っただけで、全く笑わなかった。
僕らが病院へと運び込まれて一時間も経たない内に次々と関係者が飛び込んできた。
明莉と小石川先生が連絡して、僕の母親――悠木奈那と、校長先生と教頭先生がやってきた。校長先生と教頭先生は学園で起きた殺人未遂事件に狼狽しているようだった。
そんな二人を僕の母さんは容赦なく叱り飛ばしていた。一人息子が学校で大量出血の傷を負ったのだ。母さんの心配はもっともなことかもしれない。
ただ母さんの剣幕に迫力がありすぎて、校長先生と教頭先生のみならず病室全体が震え上がっていた。あまりの怒声にナースステーションから看護師長さんがやってきて、母さんを宥めていた。
校長先生が「奈那さん、申し訳ない」と下の名前で母さんを呼んだのが気になったけれど、終始母さんのペースだった。PTA活動などで、思っていたよりも親しい感じの交流が教職員とあったのかもしれない。
ちょっとやり過ぎかなとは思ったけれど、母親が自分のことを本気で心配してくれる様子を見るのは――悪くなかった。
小石川先生に連れてこられた香奈恵さんは真白先生のベッド脇で放心状態になっていた。
明莉はずっと僕に寄り添ってくれた。
その他の入院に必要なものの買い物などについては、保健委員の木戸さんがてきぱきと対応してくれた。別に血の繋がりも交友関係もないのに、彼女は小石川先生と共に笑顔で動いてくれた。正直かなり助かった。
小石川先生によると木戸さんは看護師志望らしい。
将来、立派な看護師になるのは間違いないだろうなぁ、となんとなく思った。
昼下りに警察がやってきて事情聴取をしたのだけれど、僕らは無理筋だとは思いながら「不注意による事故」という主張を繰り返した。
真白先生はまだ目を覚ましていなかったけれど、彼は必ずその落としどころを希望するだろうと思った。――なんだかんだで僕と真白先生の思考回路はよく似ているのだ。明莉もその落とし所に納得してくれた。
警察は完全に訝しんでいたが、被害者を含めて現場にいた関係者一同が全員口を揃えて「不注意による事故」を主張するので、仕方なく刑事事件としての立件を見送ってくれることになった。「本当にそれで良いのか?」と何度も確認されたが、僕ははっきりと首を縦に振った。それが僕らの――事実なのだと。
ちなみにこのことに関して僕は目を覚ました真白先生から感謝されることになる。
――真白先生が一番傷を負った被害者なのに。
※
日曜日、念の為の検査に来るように言われて、僕は病院へと向かった。
明莉が付き添ってくれて、母さんが車で送ってくれた。
僕の検査の結果は良好で、特段の異常は無かった。後は時間薬だから経過観察していこうと言われた。
ついでに真白先生の病室に立ち寄った。一応のお見舞いだ。
先生は半身を斜めに起こして、本を読んでいた。
僕らの来訪に気付くと本を閉じて、ベッド脇の椅子に座るように促した。
読んでいた本が分厚かったので何を読んでいたのかと尋ねると、熱力学に関する数学書なのだと言っていた。
時間が出来たから今のうちに日頃勉強できなくて積ん読になっていた本を読むんだとか。意外と教師の鑑みたいな人なんだな、と思った。
病室に香奈恵さんはいなかった。やっぱり精神状態が不安定なので、一旦実家の榎本家に戻って療養しているのだとか。「一人にするのは、心配だからね、やっぱり」と真白先生は少し困ったような笑顔を浮かべた。でもその笑顔は随分と清々しそうにも思えた。
人生において重い荷物は下ろしているよりも背負っているときの方が、人は自分らしくいられることがあるのかもしれない。
「――なんだかすまなかったな、二人とも。色々あったけれど、あらためて振り返ってみると、僕ら夫婦の問題に君たち二人を巻き込んでしまったのかもしれない」
そう言って真白先生は寝間着姿のまま上体を起こした。少しだけ痛みに顔をしかめて。
「いえ、僕こそすみません。――あの日、動画を撮った日から僕が勝手に暴走しなければ、……ここまでのことにはならなかったかと」
結局、僕が状況を掻き混ぜて、巻き込んで、事態を悪化させてしまったように思う。
世界線を│発散《ダイバージェンス》させていたのは僕自身だったのかもしれない。
「それを言ったら僕ら教師陣が一年前に起きたコンテストの問題を上手く収められていたら、そもそもの問題も起きなかったのかもしれない」
その言葉にはっとする。
真白先生があの一件に責任を感じていたとは知らなかった。
教師も万能ではない。責任を感じていてもどうにも解決出来ないことはあるのだと、当たり前のことを思い出した。
「――香奈恵の上司が立派な人だったら、佐渡と君たちの作品提出前に僕がちゃんとチェックしていたら、とか――タラレバは尽きないよ。結局全ての現象は繋がっているんだから。でも――だからこそ僕は君たちに謝りたいんだよ。僕は僕の責任を手放したくはないからね。――すまなかった」
そう言って、真白先生は僕と明莉に深々と頭を下げた。
「――いいです。僕はもう。なんだか僕も、振り返るとかなり酷いことをしてしまったんで。……明莉さえ良ければ――もう」
僕は隣の幼馴染みの横顔を見る。慰めあう関係から、恋人としての関係に至った女子生徒――篠宮明莉へと、真白先生も視線を向けた。
明莉はゆっくりと唇を開く。
「……真白先生は、私のこと好きでしたか? 卒業したら香奈恵さんと別れて、私と付き合って、いつか結婚したいと言ってくれたのは、――本心ですか?」
「――本心だよ。本当にそう思っていたよ。――君だけが僕の、心の支えだったから」
「――だったら、……良かったです。――香奈恵さんと、どうか末永く、……お幸せに」
最後の言葉は嗚咽混じりだった。
隣に座る明莉は泣いていた。
泣きながら笑っていた。
「篠宮さんも――ありがとう。中途半端な男で申し訳なかったけれど、君と過ごした一年間が僕を今まで支えてきたのは事実だから。……これからは僕から自由になって、――君らしい青春を歩んでほしい」
真白先生の言葉は優しかった。
だから明莉はうなずいた。――とても苦しそうに。
「――先生も、頑張ってくださいね。奥さんのこと」
「ああ、頑張るよ。――きっと願いは届くと思うから」
それから真白先生は右手を伸ばして僕の肩を小突いた。
「――篠宮さんを頼むぞ。しぶとい幼馴染みの少年」
「あ……、はい」
僕はなんて答えて良いか分からなくて、ただ頷いた。
※
月曜日は安静にして、火曜日から登校した。松葉杖は目を引いて「どうしたんだ?」と同級生たちからは詰め寄られたけれど「ただの事故だよ」といなした。
事件に関しては関係者に徹底した箝口令が敷かれ、また現場となった理科実験室に残っていた血痕は日曜日の内に校長先生と教頭先生の手によって徹底的なクリーニングがなされ、証拠は消え去った。
証拠隠蔽にかける学園トップの情熱に感心するとともに、なんだか微妙な気持ちになったのも事実だ。いずれにせよまた学校が興味本位の流言に満たされることは回避された。
そして放課後に僕らは屋上へと繰り出した。
屋上からは色々な物が見える。
人、建物、山、川、観覧車、電車――僕らの生活を包む幾億もの事象。
そして今、隣には君がいる。
その笑顔にはいくつもの意味があって、いくつもの背景がある。
幾人もの人の思いが重なり合って、僕と君の物語は織りなされている。
「――明莉はこれからどうするの? 真白先生と別れて、……放送部は?」
「うん、放送部には残るよ? いっときの嫌な雰囲気も今は無いし、真白先生と私が付き合っていたのは秘密だったし。――部活は好きだし。お昼の放送とか?」
「――そっか。じゃあ、うん、それが良いんだろうな」
「――うん」
彼女の髪が耳に掛かって、うなじが見える。
小学生の頃の雰囲気は未だに残っている。
それでも彼女は大人になったと思う。
綺麗で優しくて素敵な――女性に。
「秋翔くんはどうするの? 戻ってこない? 放送部? いろんなことのほとぼりも冷めたし、真白先生とも仲直りしたし」
「――どうかなぁ~」
正直今更っていう思いもある。もうすぐ三年生だし、再入部してもどうせすぐに引退だ。
それに動画制作は部活に入らなくても出来るんだ。
「やめておくよ。僕はこのまま自宅での創作活動を続けるよ」
「――そう? わかった。無理強いはしないよ。秋翔くんが選ぶことだと思うし」
そう言って、明莉は屋上の柵に両手を掛けて仰け反るように伸びをした。
「でも今度投稿するショートムービーの制作手伝ってくれたら嬉しいかな?」
「――私? 森さんじゃなくて?」
「うん、明莉。 森さんは女優枠? 明莉はまた別の形で手伝って欲しいなって……って、もしかして森さんに妬いてたりする?」
「違うわよ。――でも、秋翔くんは森さんみたいな女の子を可愛いって思うのかなって、そう思って」
明莉がそう言って、頬を膨らませる。
僕はそんな彼女のリアクションが意外で、一瞬意味が分からなかった。
まだ明莉は理解していないのだ。
僕にとっての理想がどんな女の子なのかを。
「女優に必要なのは演技力。見た目の好みとは別だよ。――可愛さだけなら断然、僕にとっては明莉さ」
「――えっ?」
彼女は僕の方を振り返る。目を見開いて今更すぎるリアクションを僕へと返す。
そんな表情さえも堪らなく可愛らしくて僕は身悶えた。
僕は彼女の隣で篠宮明莉の微かな香りに包まれる。
「――ねぇ、明莉。こんなタイミングで言うのもどうかと思うんだけどさ。あらためて一つだけ伝えておいても良いかな? 僕にとっては当たり前過ぎて、あらためて言う必要も無いくらいだって思っていたんだけれど。……やっぱり一度はちゃんと言葉にしなくちゃいけないんだろうなって、思ってさ」
僕の長い前振りに、明莉は首を傾げた。
「――何かな?」
僕らは向き合う。立入禁止の屋上で。
いろいろな事があった放課後の校舎の上で。
収束した世界線を、またその先に伸ばしていくために。
二人の物語を重ね合わせて、一つの物語にしていくために。
言葉はそのためにあるのだから。
「好きなんだ。明莉のことが、ずっと昔から、これからもずっと」
驚いたような表情が幼馴染の顔に広がっていく。
小学校の時に同じクラスになった。
それが始まりだった。
中学生、高校生とずっと一緒にいて、きっと僕は明莉のことをずっと好きだった。――でもそのことをちゃんと伝えたことはなかったと思う。
今日初めて、僕は明莉にちゃんと告白した。
恋人ごっこでも、偽装恋愛でもなくて――僕の本当の思いを真っ直ぐに。
「――ありがとう、秋翔くん。初めてだよきっと。ちゃんと言ってくれたのは。――嬉しいよ」
明莉は笑顔を浮かべる。その顔いっぱいに。
それは僕に向けられた、彼女自身の笑顔だった。
「うん。だから待っている。僕は明莉といつか本当の――恋人同士になれる未来を」
西の空から夕日が差した。
その光が彼女の目尻で乱反射する。
煌めきはいくつも瞬いて、輝きは僕らの側にあった。
「――うん。いつかきっと。――今度は私から……秋翔くんに言うね」
目に見えた出来事が全てじゃない。
スマートフォンで映した情景が全てじゃない。
僕らは放課後の世界で、ようやくそんな当たり前の答えへとたどり着いた。
僕らは一人ひとりの思いをもって共に物語を織りなしていく。
それが僕たちの現実を作り出して、美しい色彩を与えていくたった一つ方法だから。
背中から僕らを呼ぶ声がした。
水上と森さんが手を振っている。撤収、撤収、と声を上げながら。
学校の中なのに二人はもう一つの手を繋いでいる。
「――じゃあ、そろそろ僕らも行こうか」
「――うん」
僕が左手を差し出す。彼女がその手を取った。
ずっと好きだった幼馴染と放課後の屋上で僕は手を繋いで――また歩き始めた。
―― ずっと好きだった幼馴染が放課後に部活顧問の肉棒を咥えていて、僕はスマホで撮影した。(了)――
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※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
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