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番外編
伯爵、最後の夜 ⑤ ※
しおりを挟む「ああっ。熱くて狭くて、素晴らしい。こんなにも健気に締め付けて。……紛いものじゃない、貴女だ」
最奥まで杭をねじ込んだテオドールが、ぴったりと覆い被さる。フローレンスを抱きしめたまま、感じ入るように何ごとか呟いた。男はそのまま動かない。破瓜の痛みに戦慄く内襞を、味わっているのだろうか。
外も内も隙間なくテオドールで占められ、フローレンスは泣きたくなった。痛みも続いているけれど、それより、もっと胸の奥が痛くて。
だって、こんなに。
テオドールは彼女自身よりも彼女の内側に触れている。
赤子の頃からずっと一緒で、男装の秘密の共犯者。
その上一番深くで繋がったのに。
彼の目はずっと翳ったままなのだ。
それでも。
フローレンスの身体は心よりもずっと欲深く喜ぶ。
幼い頃から抱え続けたもの悲しさを埋める術に、やっと辿り着いたのだと。気持ちを置いて、縋り付こうとする。
縋ったところで、これ一度きりなのに。
「テオ」
「っ! フロウ、おじょう……さまっ」
愛称で呼びかけると、一瞬だけ痛いほど抱きしめて、テオドールは腰を揺らし始めた。
情欲のリズムはゆったりしたものから、次第に速さを増してゆく。フローレンスの愛蜜を潤滑剤に、雄芯は蜜壺をかき混ぜ、奥の奥を暴くように悩ましい熱を広げる。
口元に手を押し付けて声を我慢していると、テオドールはわざと大きく動いて、フローレンスに跳ねる嬌声をあげさせようとする。指の隙間から、途切れ途切れの声が漏れる。その度に中のテオドールが、嬉しそうにぴくぴくと跳ねた。隙間なく埋められた粘膜から、直接それを感じ取ってしまい、涙と声を我慢して睨みつければ、艶を含んだ黒い瞳が細められる。
夜の手練手管は、彼の独壇場。
そう仕向けたのはフローレンスなのに、今だけ悔しくて仕方ない。
ソファの背もたれに掛けられていた片足を、テオドールが自らの肩に担いだ。ソファから落ちてしまいそうになって、引き締まった腕にしがみつくと、激しい口づけと共に、両腕の間にテオドールの頭が収まった。汗で濡れても崩れない固められた髪を、くしゃりと崩してかき抱く。
口淫で高められたときより、更に深く、ひたひたと波が迫る。大波の予感にフローレンスの本能が震える。
圧迫感に苛まれながらも、身体は快楽を拾い続けた。
テオドールは、強弱をつけて抽挿を繰り返している。浅い腹側を抉ったかと思うと、深く腰を回すように揺さぶられる。
「ひっ……うあっ、あん……ん……!」
最奥の一点を突かれたとき、フローレンスが抑えもきかずに声をあげた。
「ここ、ですねっ。もっと突いてあげます」
明らかに喜悦を含んだ声で、テオドールがそこばかりを穿ち始める。
「んっ。ちが……だめ、そこばっかり。やめ……んんっ」
「聞きません。こんなに嬉しそうに絡みついて、いるんですから」
フローレンスの内襞は小刻みに戦慄き、律動を繰り返す雄芯に縋りつき、蠕動を繰り返す。無意識の締め付けにテオドールは声をあげて笑うと、両手でフローレンスの腰を掴み、深く届けとばかりに腰を激しく打ち付け始めた。
「だめっ、だめ……いやあぁぁあああ!」
ガツガツと最奥を連続で突かれる快感に、フローレンスは悲鳴のような嬌声をあげて、大きな波に飲み込まれた。
「フロウ……!」
途端、苦しそうに目を閉じたテオドールが、腰を最奥に沈めたまま先端を押し付け静止する。
ぎっちりときつかった雄芯がさらに膨れ、熱が弾けた。震える腰から子宮の入り口にと、熱い飛沫が注がれる。
その熱さにフローレンスがぶるりと震えると、「うっ」と食いしばった歯の間から声を上げたテオドールが、腰を数回揺らして、最後の一滴まで白濁を出し切る。
その色気の漂う表情に、フローレンスの心の奥にも、じんわりと熱が広がる。何かが満たされた心地。とっくに行為は終わっているのに、ずっと腕を回したままでいたいような気持ち。
達する男の表情を、いつも間近で見続けてきた。
テオドールを受け止めるのは、いつもフローレンス以外の女達だった。
彼女達は皆、事後にこんな不思議な満足感と独占欲に駆られたのだろうか。
フローレンスはもう二十五歳。
女としては立派な嫁き遅れだ。しかも貴族籍から除される彼女は、多少の蓄えと仕事を得ても、醜聞にまみれきっている。この先一生独り身で過ごすことになるだろう。
それならば、今夜くらい。
世の女性の殆どが知っているこの行為を味わい尽したい。
伯爵が妊娠など絶対にあってはならないから、彼女はずっと純潔のままだった。知識だけは豊富なのに。おそらく既婚の婦人達よりも、ずっと。
どうせ一度きりなら、思い出にしよう。
淫らなフローレンスが、この夜を糧にして生きていけるように。
きっと大丈夫。
これまでだって触れずに、その名と裸身だけで、せつない夜を何度も埋めたのだから。
彼にとっての贈り物になるなら、この閨事はフローレンスにとっても贈り物だ。
「テオ」
もう一度呼びかけて、その頬を指の腹で優しくなぞれば。
「っ! フロウお嬢様……」
弁えた従者は、彼女の意を汲んで再度挑みかかった。
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