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第1章 「世界の半分をくれてやる」と言われて魔王と契約したらとんでもないことになったんですけど
2:半分を知るためには
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「お兄ちゃ~ん!」
妹のロゼッタが飛びついて来た。
しっかりと抱き止めてやると、パッと明るい笑顔で俺を見つめた。
「おかえりなさい!」
「ただいま、ロゼッタ。良い子にしてたか」
奥から母が顔を出した。
「ロゼッタ、あんたが帰って来るの待ってたんだよ」
なぜなら、今日は彼女の誕生日だからだ。
「妹さんにどうぞ」とセバスチャンから髪飾りを贈られて気づいた俺が言えることじゃないが。
シルディア城で働く父が帰って来て、ロゼッタの誕生日パーティーが始まる。俺からのプレゼントにロゼッタは飛び跳ねた。金色の髪飾りをつけてやる。
「似合ってるぞ、ロゼッタ」
「えへへ~、お兄ちゃんありがとう」
父がワイングラスを片手に俺に言った。
「お前の方は順調か?」
「ああ、まあね……」
魔王と話をつけて来たなんて口が裂けても言えない。母の話じゃ、息子が勇者に選ばれて父は方々に鼻が高いらしい。それをへし折るのはあまりにも申し訳ない。
「そんな話は後でしなさい」
そう言って母がホールケーキを運んでくる。
「ロゼッタ、半分食べる!」
「はいはい」
母が笑って、ケーキにナイフを入れた。
半分に切れたケーキ……俺の中に妙な違和感が生まれた。
***
翌日、俺は活動報告のためにシルディア城へ赴いた。玉座のシルディア王が俺を労ってくれる。
「勇者アーガイルよ、戦いの成果はどうだ」
「はい。北の山を越えた峠の辺りに黒竜の巣があり、進むのに苦労しています」
本当は黒竜の親玉をボコボコにぶん殴って道を通してもらったのだが、ここの軍隊じゃあそこまで辿り着くのは難しいだろう。
「ふむ。西の山を越えた街に竜退治の槍を作る鍛冶屋がいるそうだ。頼ってみてくれ」
「貴重な情報、ありがとうございます。助けを求めてみます」
王からお小遣いをもらって、城を出る前に窓口で身分証を発行してもらう。ハンコは今朝、母に若干怪しまれながら持ち出すことに成功している。
城門を出て魔王城へ向かおうとした俺を引き留める声がした。幼馴染みのスカーレットが茜色の髪をなびかせて立っていた。
「見送りにきてくれたのか」
彼女は顔を赤らめた。
「ち、違うわよ! これを渡そうと思ってきただけ!」
そう言って、俺の手に白い花を閉じ込めたガラス球を叩きつけた。
「これは?」
「幸福の花! 持ってても損はないでしょ」
流れ星の落ちる夜に咲くと言われる花だ。出会うのも難しいはず。
「ありがとう。大切にするよ」
行こうとする俺に、彼女は不安そうな青い目を向けた。
「気をつけてね……」
***
魔王城に着いた俺は契約の手続きを終え、これで名実ともに世界の半分が手に入ることになったわけだが……。
「魔王様、世界の半分というのは、どこからどこまででしょうか?」
「知らん」
無責任な。仮にも支配者だろ。
「世界の半分を知るには、世界の全てを知る必要があると思うんですが……」
魔王はにこりと笑った。
「では、確かめて来るがよい!」
妹のロゼッタが飛びついて来た。
しっかりと抱き止めてやると、パッと明るい笑顔で俺を見つめた。
「おかえりなさい!」
「ただいま、ロゼッタ。良い子にしてたか」
奥から母が顔を出した。
「ロゼッタ、あんたが帰って来るの待ってたんだよ」
なぜなら、今日は彼女の誕生日だからだ。
「妹さんにどうぞ」とセバスチャンから髪飾りを贈られて気づいた俺が言えることじゃないが。
シルディア城で働く父が帰って来て、ロゼッタの誕生日パーティーが始まる。俺からのプレゼントにロゼッタは飛び跳ねた。金色の髪飾りをつけてやる。
「似合ってるぞ、ロゼッタ」
「えへへ~、お兄ちゃんありがとう」
父がワイングラスを片手に俺に言った。
「お前の方は順調か?」
「ああ、まあね……」
魔王と話をつけて来たなんて口が裂けても言えない。母の話じゃ、息子が勇者に選ばれて父は方々に鼻が高いらしい。それをへし折るのはあまりにも申し訳ない。
「そんな話は後でしなさい」
そう言って母がホールケーキを運んでくる。
「ロゼッタ、半分食べる!」
「はいはい」
母が笑って、ケーキにナイフを入れた。
半分に切れたケーキ……俺の中に妙な違和感が生まれた。
***
翌日、俺は活動報告のためにシルディア城へ赴いた。玉座のシルディア王が俺を労ってくれる。
「勇者アーガイルよ、戦いの成果はどうだ」
「はい。北の山を越えた峠の辺りに黒竜の巣があり、進むのに苦労しています」
本当は黒竜の親玉をボコボコにぶん殴って道を通してもらったのだが、ここの軍隊じゃあそこまで辿り着くのは難しいだろう。
「ふむ。西の山を越えた街に竜退治の槍を作る鍛冶屋がいるそうだ。頼ってみてくれ」
「貴重な情報、ありがとうございます。助けを求めてみます」
王からお小遣いをもらって、城を出る前に窓口で身分証を発行してもらう。ハンコは今朝、母に若干怪しまれながら持ち出すことに成功している。
城門を出て魔王城へ向かおうとした俺を引き留める声がした。幼馴染みのスカーレットが茜色の髪をなびかせて立っていた。
「見送りにきてくれたのか」
彼女は顔を赤らめた。
「ち、違うわよ! これを渡そうと思ってきただけ!」
そう言って、俺の手に白い花を閉じ込めたガラス球を叩きつけた。
「これは?」
「幸福の花! 持ってても損はないでしょ」
流れ星の落ちる夜に咲くと言われる花だ。出会うのも難しいはず。
「ありがとう。大切にするよ」
行こうとする俺に、彼女は不安そうな青い目を向けた。
「気をつけてね……」
***
魔王城に着いた俺は契約の手続きを終え、これで名実ともに世界の半分が手に入ることになったわけだが……。
「魔王様、世界の半分というのは、どこからどこまででしょうか?」
「知らん」
無責任な。仮にも支配者だろ。
「世界の半分を知るには、世界の全てを知る必要があると思うんですが……」
魔王はにこりと笑った。
「では、確かめて来るがよい!」
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