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第1章 「世界の半分をくれてやる」と言われて魔王と契約したらとんでもないことになったんですけど
幕間:言葉なき誓い
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~アーガイル騎士団入団の頃~
玄関口でロゼッタがアーガイルの足に取りついて離れなかった。アーガイルは困ったようにその頭を優しく撫でる。
「ロゼッタ、もう行かないといけないんだ」
それでもロゼッタは離れようとせず、兄の太ももに押しつけた顔を何度も横に振った。
母が眉尻を下げて笑みをこぼす。
「ロゼッタ、言うこと聞きなさい。アーガイルが困ってるわよ」
父がそっとロゼッタをアーガイルから引き剥がそうとすると、ついに彼女の涙腺が決壊する。
「やだああぁ!! 行っちゃヤダあぁ!!」
アーガイルはしゃがみこんでロゼッタと目線を同じくする。
「騎士団宿舎に移るだけだ。一生帰って来ないわけじゃない」
「本当に?」
「ああ、本当だぞ。それに、俺がぶっ倒した魔物の話だって聞かせてやれる」
「本当?」
ロゼッタの目が輝く。この街に住む女の子にしては珍しく武勇伝が大好きなのだ。
「色んな話聞きたいだろ?」
「うん!」
ロゼッタが笑顔になる。
母はホッとしたように足元に娘を抱き止めて、息子とまじまじと見つめた。その眼には光るものがある。
「いつの間にかこんなに大きくなって……」
「母さんまで泣くなよ」
「いいか、アーガイル」父が優しげな目を向ける。「シルディアの騎士として戦うというのは誉れなことだ。誇りを持って戦うんだぞ」
「分かってるさ。そのつもりだよ」
父は威厳を滲ませた表情の中に、親としての慈しみを見せた。
「私たちはお前を愛してる。いつか自分で剣を置くその日まで戦うんだぞ。分かってるな?」
──決して死ぬな。
そこに込められた思いに、アーガイルは強くうなずいた。
玄関口でロゼッタがアーガイルの足に取りついて離れなかった。アーガイルは困ったようにその頭を優しく撫でる。
「ロゼッタ、もう行かないといけないんだ」
それでもロゼッタは離れようとせず、兄の太ももに押しつけた顔を何度も横に振った。
母が眉尻を下げて笑みをこぼす。
「ロゼッタ、言うこと聞きなさい。アーガイルが困ってるわよ」
父がそっとロゼッタをアーガイルから引き剥がそうとすると、ついに彼女の涙腺が決壊する。
「やだああぁ!! 行っちゃヤダあぁ!!」
アーガイルはしゃがみこんでロゼッタと目線を同じくする。
「騎士団宿舎に移るだけだ。一生帰って来ないわけじゃない」
「本当に?」
「ああ、本当だぞ。それに、俺がぶっ倒した魔物の話だって聞かせてやれる」
「本当?」
ロゼッタの目が輝く。この街に住む女の子にしては珍しく武勇伝が大好きなのだ。
「色んな話聞きたいだろ?」
「うん!」
ロゼッタが笑顔になる。
母はホッとしたように足元に娘を抱き止めて、息子とまじまじと見つめた。その眼には光るものがある。
「いつの間にかこんなに大きくなって……」
「母さんまで泣くなよ」
「いいか、アーガイル」父が優しげな目を向ける。「シルディアの騎士として戦うというのは誉れなことだ。誇りを持って戦うんだぞ」
「分かってるさ。そのつもりだよ」
父は威厳を滲ませた表情の中に、親としての慈しみを見せた。
「私たちはお前を愛してる。いつか自分で剣を置くその日まで戦うんだぞ。分かってるな?」
──決して死ぬな。
そこに込められた思いに、アーガイルは強くうなずいた。
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