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第1章 「世界の半分をくれてやる」と言われて魔王と契約したらとんでもないことになったんですけど
幕間:新しい傀儡
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~第四魔王とクラウスの出会い~
シルディアから南に行くと荒涼とした岩石砂漠が広がっている。
そこにひとりの若者が倒れていた。
金髪が乾いた風に揺れる……クラウスだ。
力尽きたのか、びくりともしない。しかしながら、その手には魔物の血に汚れた剣が握られたままだ。
上空を鳥の魔物が旋回する。手痛い反撃を食らった彼らは、哀れなはぐれ者が完全に息絶えるのを待っているようだった。
その眼がギラリと光り、翼を折り畳んで急降下するその瞬間、巨大な剣が飛来した。飛剣の直撃を受けて、その身体が粉々に四散する。
マルガで魔王の襲撃を受け、臣下たちと別れて逃げてきた第四魔王だった。
「おい、生きてるのか~?」
横たわるクラウスに問い掛けるが、返事はない。彼の中の生命の息吹が徐々に失われつつあった。
──剣を握ったまま死ぬとは。
彼女の脳裏に遥か昔の光景が蘇る。すぐにそれを振り払うように首をブンブンと振る。
──こんなところで〝アイツ〟のことを思い出すとは……。
クラウスの背中には鋭い爪でえぐられた傷跡が残っている。それが彼を死に誘っているようだった。
──ひとりぐらい荷物が増えてもいいか。
第四魔王は胸の中に言い訳めいた言葉を呟いて、クラウスに魔力を接続した。
やがて傀儡と化したクラウスがゆっくりと立ち上がった。
「俺は……?」
「ふん」第四魔王はクラウスの前に歩み出て腕組みをした。「お前は今日からアタシの傀儡だ。光栄に思えよ」
傀儡は従順だ。
だが、この時は様子が違っていた。
「誰だ、お前は?」
赫眼が第四魔王をギッと睨みつけた。
「だ、第四魔王だ……! なんだ、その反抗的な眼!?」
「お前が俺を助けたのか?」
「そうだぞ。礼を言ってもいいんだぞ」
クラウスの瞳が葛藤を抱えたように揺れた。
「死ねばそれでよかったのだ、俺は」
この時になって、ようやく第四魔王は目の前の男が自分の支配下にないことを悟った。その赫眼の奥に秘められた底のしれない怒り……それがこの男の唯一の拠り所だったのだ。
「お前が俺に最後のチャンスをくれたんだな」
「何の話をしてんだ?」
「俺はあいつを……アーガイルをこの手で殺すために生かされたのだ」
第四魔王の胸がドキリと鼓動した。唐突にその名前を聞いて無条件に反応してしまったのだ。
──この場で魔力の接続を切れば、こいつは死ぬ。
マスターを案じれば、そうすべきだったのかもしれない。だが、彼女には、たったひとつの絶望的な希望を胸に歩き出すその背中を見送ることしかできなかった。
シルディアから南に行くと荒涼とした岩石砂漠が広がっている。
そこにひとりの若者が倒れていた。
金髪が乾いた風に揺れる……クラウスだ。
力尽きたのか、びくりともしない。しかしながら、その手には魔物の血に汚れた剣が握られたままだ。
上空を鳥の魔物が旋回する。手痛い反撃を食らった彼らは、哀れなはぐれ者が完全に息絶えるのを待っているようだった。
その眼がギラリと光り、翼を折り畳んで急降下するその瞬間、巨大な剣が飛来した。飛剣の直撃を受けて、その身体が粉々に四散する。
マルガで魔王の襲撃を受け、臣下たちと別れて逃げてきた第四魔王だった。
「おい、生きてるのか~?」
横たわるクラウスに問い掛けるが、返事はない。彼の中の生命の息吹が徐々に失われつつあった。
──剣を握ったまま死ぬとは。
彼女の脳裏に遥か昔の光景が蘇る。すぐにそれを振り払うように首をブンブンと振る。
──こんなところで〝アイツ〟のことを思い出すとは……。
クラウスの背中には鋭い爪でえぐられた傷跡が残っている。それが彼を死に誘っているようだった。
──ひとりぐらい荷物が増えてもいいか。
第四魔王は胸の中に言い訳めいた言葉を呟いて、クラウスに魔力を接続した。
やがて傀儡と化したクラウスがゆっくりと立ち上がった。
「俺は……?」
「ふん」第四魔王はクラウスの前に歩み出て腕組みをした。「お前は今日からアタシの傀儡だ。光栄に思えよ」
傀儡は従順だ。
だが、この時は様子が違っていた。
「誰だ、お前は?」
赫眼が第四魔王をギッと睨みつけた。
「だ、第四魔王だ……! なんだ、その反抗的な眼!?」
「お前が俺を助けたのか?」
「そうだぞ。礼を言ってもいいんだぞ」
クラウスの瞳が葛藤を抱えたように揺れた。
「死ねばそれでよかったのだ、俺は」
この時になって、ようやく第四魔王は目の前の男が自分の支配下にないことを悟った。その赫眼の奥に秘められた底のしれない怒り……それがこの男の唯一の拠り所だったのだ。
「お前が俺に最後のチャンスをくれたんだな」
「何の話をしてんだ?」
「俺はあいつを……アーガイルをこの手で殺すために生かされたのだ」
第四魔王の胸がドキリと鼓動した。唐突にその名前を聞いて無条件に反応してしまったのだ。
──この場で魔力の接続を切れば、こいつは死ぬ。
マスターを案じれば、そうすべきだったのかもしれない。だが、彼女には、たったひとつの絶望的な希望を胸に歩き出すその背中を見送ることしかできなかった。
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