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第2章 いきなりロボットアニメみたいな世界に放り込まれたんですけど
6:束の間の共闘
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「そもそも彼女の汚染値の推移は、改竄していない限りあり得ない数値です」
イーサンと名乗ったスーツの男は言外に疑いを滲ませていた。日本への不信感が垣間見える。殯森は言い返そうとしたが司令が制した。
「我々は品行方正に運用してますよ」司令が牽制するような目を向ける。「それとも、〝異獣が人間の姿に化けている〟なんてオカルトを信じてらっしゃるんですか?」
イーサンは鼻で一笑する。
「たかが精査に感情的になりなさんな」
日米の対異獣機関の人間がいがみ合っている。結局、大人の世界はこうやって醜い争いを繰り返してきたのだ。
***
私はイーサンに連れられ、鎮守府のヘリポートへ向かった。ここからヘリで米軍基地へ。そして、そこから本国へ移送されるらしい。鎮守府内では、建御名方の移送とプリシラの骨骼兵器・メツトリの配備で大童だ。
大人たちの事情は知らない。だが、目まぐるしい一日が終わろうとしていた。イーサンからでも詳しい話を聞き出さなければならない。
「異獣って一体何なんですか?」
「異世界からの侵略者だよ」
ヘリポートからは夕陽が落ちる水平線が見える。それを背にするイーサンの表情は暗い。
「さっきは念のために君の汚染値を測ったが、出撃から数時間後としては異常な値だ。我々が君を警戒するには充分すぎる理由だ」
勝手に巻き込んで勝手に疑いを持たれても困る……そう言い返そうとする私を遮るようにアラートが鳴る。
──また……?!
『異獣発生確率の規定値超過を確認。総員第2種戦闘配備へ移行せよ』
イーサンが建物の中に駆け出す。私も後を追った。鎮守府の中は混迷を極めていた。
作戦指令室の控室としても使われるブリーフィングルームに駆け込むと、司令と殯森、ドライバースーツに身を包んだプリシラが揃っていた。イーサンが問う。
「どうなってる?! 前回の異獣の出現は数時間前だろう?!」
司令も殯森も返答に窮していた。前例のないことなのだ。
「さっさとぶっ潰してくるわ。今、ムカムカしてんの」
プリシラが部屋を出て行こうとする。私は無意識に彼女の腕を掴んだ。自分でもよく分からないまま、口が動いているのに気づく。
「──待ってよ。ここは日本だよ」
「それがなに?」
プリシラが私を睨みつけた。強く言い返す。
「あんたなんかに任せられない」
「二人ともやめろ!」
司令が怒号を発すると、プリシラは私を嘲るように一瞥して駆けて行く。私は司令たちを真っ直ぐと見つめた。
「私も出ます」
私を制する声を置き去りにして部屋を出た私の前に、あの無口なドライバーの少女が現れた。彼女は何か言いたげだったが、私は言葉を待たずに建御名方のもとへ向かった。
***
『メツトリはもう異獣と会敵してる! 建御名方も応急処置的な改修しかしてないんだから、余計なことしないで!』
「建御名方、出ます」
殯森の声を無視して射出口から飛び出す。躯体がぎしぎしと軋む。眼下に広がる街の一角から青い火柱が上がっているのが見えた。
『なに、こいつ!! 今までと違う!』
プリシラの音声が通信されて聞こえる。松明のように頭に青い炎を灯した異獣がしならせた炎の糸のようなものをメツトリにぶつけていた──鞭だ。
右腕を切り飛ばされたメツトリだが、臆することなく異獣の懐に飛び込んで、拳を打ち上げる。身体を浮かされた異獣が腕を振り下ろすと炎の鞭が3本、青い残像を引いて叩きつけられる。
異獣の鞭撃がメツトリの右足を3つに切り分ける。
『四路坂! メツトリを援護!!』
司令の怒号が走る。地面を蹴って異獣との距離を詰めようとする私の前に、見慣れない骨骼兵器が2機、轟音と共に降り立った。
『その必要はない』
男のドライバーの声がして、ミサイルポッドから放たれた無数の飛翔物が異獣に直撃した。
イーサンと名乗ったスーツの男は言外に疑いを滲ませていた。日本への不信感が垣間見える。殯森は言い返そうとしたが司令が制した。
「我々は品行方正に運用してますよ」司令が牽制するような目を向ける。「それとも、〝異獣が人間の姿に化けている〟なんてオカルトを信じてらっしゃるんですか?」
イーサンは鼻で一笑する。
「たかが精査に感情的になりなさんな」
日米の対異獣機関の人間がいがみ合っている。結局、大人の世界はこうやって醜い争いを繰り返してきたのだ。
***
私はイーサンに連れられ、鎮守府のヘリポートへ向かった。ここからヘリで米軍基地へ。そして、そこから本国へ移送されるらしい。鎮守府内では、建御名方の移送とプリシラの骨骼兵器・メツトリの配備で大童だ。
大人たちの事情は知らない。だが、目まぐるしい一日が終わろうとしていた。イーサンからでも詳しい話を聞き出さなければならない。
「異獣って一体何なんですか?」
「異世界からの侵略者だよ」
ヘリポートからは夕陽が落ちる水平線が見える。それを背にするイーサンの表情は暗い。
「さっきは念のために君の汚染値を測ったが、出撃から数時間後としては異常な値だ。我々が君を警戒するには充分すぎる理由だ」
勝手に巻き込んで勝手に疑いを持たれても困る……そう言い返そうとする私を遮るようにアラートが鳴る。
──また……?!
『異獣発生確率の規定値超過を確認。総員第2種戦闘配備へ移行せよ』
イーサンが建物の中に駆け出す。私も後を追った。鎮守府の中は混迷を極めていた。
作戦指令室の控室としても使われるブリーフィングルームに駆け込むと、司令と殯森、ドライバースーツに身を包んだプリシラが揃っていた。イーサンが問う。
「どうなってる?! 前回の異獣の出現は数時間前だろう?!」
司令も殯森も返答に窮していた。前例のないことなのだ。
「さっさとぶっ潰してくるわ。今、ムカムカしてんの」
プリシラが部屋を出て行こうとする。私は無意識に彼女の腕を掴んだ。自分でもよく分からないまま、口が動いているのに気づく。
「──待ってよ。ここは日本だよ」
「それがなに?」
プリシラが私を睨みつけた。強く言い返す。
「あんたなんかに任せられない」
「二人ともやめろ!」
司令が怒号を発すると、プリシラは私を嘲るように一瞥して駆けて行く。私は司令たちを真っ直ぐと見つめた。
「私も出ます」
私を制する声を置き去りにして部屋を出た私の前に、あの無口なドライバーの少女が現れた。彼女は何か言いたげだったが、私は言葉を待たずに建御名方のもとへ向かった。
***
『メツトリはもう異獣と会敵してる! 建御名方も応急処置的な改修しかしてないんだから、余計なことしないで!』
「建御名方、出ます」
殯森の声を無視して射出口から飛び出す。躯体がぎしぎしと軋む。眼下に広がる街の一角から青い火柱が上がっているのが見えた。
『なに、こいつ!! 今までと違う!』
プリシラの音声が通信されて聞こえる。松明のように頭に青い炎を灯した異獣がしならせた炎の糸のようなものをメツトリにぶつけていた──鞭だ。
右腕を切り飛ばされたメツトリだが、臆することなく異獣の懐に飛び込んで、拳を打ち上げる。身体を浮かされた異獣が腕を振り下ろすと炎の鞭が3本、青い残像を引いて叩きつけられる。
異獣の鞭撃がメツトリの右足を3つに切り分ける。
『四路坂! メツトリを援護!!』
司令の怒号が走る。地面を蹴って異獣との距離を詰めようとする私の前に、見慣れない骨骼兵器が2機、轟音と共に降り立った。
『その必要はない』
男のドライバーの声がして、ミサイルポッドから放たれた無数の飛翔物が異獣に直撃した。
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