76 / 127
窮鼠猫を噛む
しおりを挟む
目の前にスチュアートが居る。
(不味い。これは不味い状況だ。追加装備の固定武装もパージしたし、モアはガタが来てまともに戦える状態では無い……)
「ザッ……マサキ~もうダメだって!武装も無いしモアもヤバいって!」
(ですよね~。うん、解ってる。)
マサキとスチュアートは目線を外さずに対峙して、お互い相手の出方を伺っていた。
「ザザッ……クラタナさんもう良いでしょう!そちらのモアも限界が来てますし。アグレッサー隊員六人相手に良く持った方だと思いますよ!」
ニヤリと余裕を見せてスチュアートはそんな通信を入れて来た。
(分が悪いのは悪いけど、上から目線がどうにもムカつく。でも戦うにしても逃げるにしてもどうも出来ん……さてどうしよう。)
「ザザッ……まだ続けますか?」
スチュアートのモアは一歩引き、太刀の切っ先をこちらに向けて構え、ヤル気満々だ。
(おい。言ってる事と行動が伴って無いぞ……)
「ザッ……スチュアート。そんな事言ってる割には、超ヤル気だよなぁ。既にこっちは見ての通りこのザマだ。けど、そんなにやりたいなら相手するぞ。」
(めっちゃハッタリカマしたったー!)
「ザッ……ほぅ……お見事ですね。そうで無ければ面白く無いというもの。一応コレでも副隊長をしてますから。では、お相手願いましょうか!行きますよ!」
(てか何でそんなに上から目線なん?まぁ、立場上とか、素人に負けれんとか、部下を負かされたとか有るんだろうけど。)
スチュアートはそう言って太刀を再度構えた。
シャーロットとアリシアは、粘液まみれなのも忘れて固唾を呑んで見守っている。
「ザッ……ま、マサキ……謝っちゃいなよ!一緒に謝ってあげるから!もうダメだって!あああ~!早く!早く!」
ティナはこの世の終わりと言わんばかりの表情をして席を立ち、前のめりで直接声が届くにも関わらず通信を入れて来た。
(解ってるけど……てか、もちつけティナさんや……)
マサキは逆にティナのテンパり具合に落ち着かされ
「ザッ……シー…………ティナ、機体チェック。こいつ全く動けない訳じゃ無いんだよな。」
眼をスチュアートから逸らさずにティナに通信を入れて、すかさず手網コントローラーにコマンドを入れた。
「ザザッ……まぁ、全く動かない訳じゃ無いけど……リスト真っ赤っかだってば!」
キィィィィィィィィ~ン………………ゴゴッ……ゴッ……ゴゴゴ……ォォォォ……
(無理すればもうちょいイケるか?頼む……動いてくれ……)
「ザッ…………解った。合図するからフレアとチャフ全部ばらまけ!後、もしスチュアートが魔法を発動したらすぐ教えてくれ!」
「ザザッ……分かったけどどうすんのよ!」
「ザザッ……イマジナリーで何とかするわ!」
(コレは最初に魔物を見た時と同じだ。っても気を逸らす位じゃ子供騙しか。くそっ!チート能力見てろよ~!)
暫くスチュアートは事の成り行きを見ていたが「ザザッ……話はまとまりましたか?行きますよ!」
そう言ってスロットルをミリタリーパワー全開にしてマサキ達に攻撃を仕掛けた。
シュッ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「き、き、来たぁぁぁぁ!」
(ちょ、ティナさん黙って……舌噛むから。)
スチュアートが突進して来るのを確認して、マサキはポケットから硬竹収集の時のちょろまかした魔石を数個まとめて取り出して手に握った。
次の瞬間、自分の首辺りを狙う太刀筋を直感で感じ、反射的にモアを降着姿勢にしゃがませた。
(ヤバっ!)
ズビュシュッ!と今まで首のあった辺りに太刀筋が通り、焦りと共に手網を握りしめた。
「ザザッ……ザッ……ティナ!チャフ、フレア連続射出!」
(あいつやべぇよ……マジ殺る気じゃん……)
そう言って立ち上がり様に羽根を広げて信地転回をしスチュアートに向き直り魔石を投げた。
(イマジナリー ファンネル!フレアバースト!)
続けてM500をすかさず抜いて狙いを定める。
宙を舞うフレアとチャフの中、魔石は意志を持った様に空中に浮かび、上方と左右、後方からフレアバーストを放った。
ズブォォォォォ~!ズボォォォォ!ズボォォォォ!ズボォォォォ!ズボォォォォ!
「なにっ!?」
スチュアートは魔力シールドを張りつつ、華麗に魔石ファンネルから放たれるフレアバーストを避けるが微妙にタイミングがズレる。
「く!くそっ!なんなんだこれは!何故全方向からフレアバーストがっ!回避タイミングが!」
その間にも、魔石は回避行動をしているスチュアートの行く手を阻むかの如く、どうにか眼で追える速度で空中を移動しながらフレアバーストを放ち続けた。
「な、何アレ……」
シャーロットとアリシアは瞬きも忘れて、魔石から繰り出されるフレアバーストの攻撃を見ていた。
「ま、魔石が宙に浮いて魔法撃ってる……です……」
(や、ヤバい……そ、そろそろ俺の魔力が尽きそうだ……)
「まだまだぁ~!」
スチュアートは鬼神の如くシールドも張らず、直撃を受けながらも正面に対峙しているマサキに捨て身の覚悟で突っ込んで来た。
「ザザッ……ティナ!回避!」
(こ、コイツっ!)
ドゴォォォン!ドゴォォォン!ドゴォォォン!ドゴォォォン!
狙いも定めずにM500を撃ちながらモアを地面スレスレまで座らせ、最後の残った力を振り絞る様にジャンプした。
(これが最後だ。ファイヤーブレード!)
びちゃっ!ぼちゃっ!と至近距離でスライム弾の爆発する音が聞こえ、反射的に心の中で詠唱すると、銃身を包むように炎の剣が出現し、すれ違い様にスチュアートの乗っているモアを下方から切り裂いた。
ズビュシュ……………………!
モアはそのまま四メートル程ジャンプしてスチュアートの後方に着地し、モウモウと煙を上げながらモアは座りこんだ。
(ま、魔力が…………)
…………………………………………………………………………
暫くの沈黙の後、M500の銃身を包んで居た炎が音も無く消え、スチュアートのディスプレイにはFailedの文字が表示されていた。
「ザッ……私の負けです……」
と警戒を解いたスチュアートから通信が入り、マサキは気怠い身体でゆっくりと振り向くと、向こうのモアも煙を吐く様子が微かに目に映った。
(終わった……のか?)
そう思った瞬間、マサキは意識を手放した。
~~~~~~~~~~~~~~~~
「……………………………………キ!」
「………………ん!」
「…………さん!」
「マサキ!」
(呼ばれてる?)
ガバッ!
ゴチっ!!
「痛っ~!」
「ぐはっ!」
おでこを抑え、涙目になりながら地面を転がり回るマサキとティナ。
「だから、何で急にいつも起き上がろうとするのよっ!」
(おやおや、ティナさんご立腹ですね。てか何で覗き込んでんだよ!)
「しょうが無いだろっ!癖なんだから!ティナも覚えろよ!もう何回目だよ!」
とおでこを抑えながら、心配されても逆切れモードのマサキである。
「だ、大丈夫……ですか?」
アリシアが心配そうに声を掛けるが制服はヌルヌルである。周りを見ると他の隊員も集まっていて一様にこちらを見ている。
「だ、大丈夫だから。」
と言って起き上がろうとしたが身体に力が入らない。
(えっ?)
ドタっ……
慌ててティナが支えようとしたが、そのまま一歩も踏み出せないままマサキは倒れた。
「ちょ!マサキ!魔力尽きてるんだから暫くは動けないってば!」
「まじかー!お、起こしてくれー。」
(こ、こんなに動けなくなるのか?こんなんヤバいじゃん!完全な無防備……てか爆〇魔法撃っためぐ〇んじゃん!)
「と、取り敢えず仰向けにしましょう。」
とアリシアが俺の服を引っ張って仰向けにしてくれるが、勢い余って転がし過ぎてまたうつ伏せになった。
「おい……ロリ子……」
「ひっ!ひぇ!ご、ごめんなさいです!」
アリシアは萎縮してシャーロットの陰に隠れてしまった。
「ほら!マサキ!いじめない!」
(いじめてないから!普通だから!)
見兼ねたティナとシャーロットが「せーのっ!」と声を掛けて仰向けにして、引っ張って木に凭れ掛けさせてくれた。
「お手数をお掛けしてしまいありがとう。ございます……」
(なにこれ……)
全員の視線が集まる中、マサキはどうしていいか解らず黙っているとスチュアートが口を開いた。
「クラタナさん、最後のアレはなんなんですか?四方八方からフレアバースト撃つなんて……」
「そうですよぉ!あれはどうやったんですぅ?」
とシャーロットも興味深々に聞いてきた。
「あ、あんな攻撃の仕方、み、見た事無い、です……」
アリシアは未だシャーロットの陰に隠れて感想を言った。
先程の現場を見て居ない他の隊員は「なに?」とか「何があった?」等、顔を見合わせて目撃した二人に質問をしている。
「あ~、さっきのはイ……」
(あ、イマジナリーは言わん方が良いんだよな……ヤバい……)
「イ?」とスチュアートが言ってマサキの言葉を待っている。
「い、いい天気だよなぁ…はははは……」
チラッとティナに眼をやると、片手で眼を隠し頭を降っていた。
(ですよね~……(白目)
「天気はいいですから、どうやったんですか?あれは!」
スチュアートが業を煮やした様に聞いてくる。
「あ、アレは……ファンネル……(白目)」
(こんなんガン〇ム知らないとどう説明して良いのか解らん……)
「ファンネル?ってなんです?」
「え~っと……俺も初めてやったから良くわからんwww」
(ファンネルは具体的に前世の情報として知ってたからイメージで出来たんだけど、あんな上手く行くとは思わなかった……けど、一斉に何発もフレアバースト撃つとあっと言う間に魔力無くなるのな……)
「え~……よく分からずにあれが出来たんですか?」
スチュアートが半ば諦め気味に突っ込んで来る。
「ま、まぁ、そうなるのかな……すまん、上手く説明できん。」
(魔石ファンネルは魔石が使い捨て、と言うか燃えて無くなるのがダメだよなぁ……どうにかアレを再利用出来る様に考えないと……後は練習だなぁ……)
「まぁいいですけど……そう言えばファイヤーブレードも使ってましたよね?あんな技どこで覚えたんですか?」
「えっ?あっ……」
(何処でもクソも有るか!何となくだわ!反射的に思いついただけだから!)
「ファイヤーブレード?って何?」
ジェニファーがスチュアートに聞いた。
「そのまま炎の剣だ。超高圧に炎を圧縮して炎に質量を持たせ実体化する武器なんだが……元々は炎だろ?そうそう簡単には出来ないもんなんだが……魔力消費もかなりのもんだし。」
(え?そうなの?あれも何となくなんだけど……そうか、魔力消費が激しいのか…)
「マサキさん、そんな魔法も使えるんですか?凄いです!」
ジェニファーがこちらに向き直り聞いて来た。
「い、いや、使えると言うか……たまたまと言うか……次出来るかは分からんよ…(白目)」
(ティナ、この質問攻め何とかしてくれ……)
助けを求める様な眼でマサキはティナを見た。
「はぁ~……」と溜息を吐いて
「これからどうします?マサキはこんなだし、お借りしてたモアもあんなになっちゃったし……すみません。」
ペコッとティナがお辞儀をして謝った。
「あ、そうですね、動ける我々が一度戻って牽引モアと代わりのモアを連れてきますよ!モアの事は気にしないで下さい!それと生憎、複座のモアはクラタナさんの300系しかないので戻って来るまでここで待って貰う事になりますが……」
と逆にスチュアートは申し訳無さそうに言った。
「い、いえ、それは構いませんよ!」
「では、アクセル!アリス!お前ら二人はクラタナさんの護衛を頼む。別命あるまでここで待機!」
「了解!」
と二人は敬礼をして了承した。
「い、いや、護衛とか良いですって!」
マサキは焦りながら申し出を断るが
「そうは言っても、何かあってはいけませんですし、元より我々がクラタナさんの技術を見たいと言い出した事なので……」
「分かりました。」
(あれこれ言ってめんどくさい事になっても仕方が無いから引いておくか……)
「ふ、副隊長。わ、私も、の、残って良いですか?」
何の気紛れか、アリシアがそんな事を言い出した。
(ロリ子はスライム臭するから早く帰ってシャワー浴びろよ……www)
「お、お前はそんな制服のままで大丈夫なのか?」
戸惑いを隠せないスチュアートはアリシアのなりを見ながら更に言葉を付け足した。
「アリシア……お前……スライム臭いぞ……」
「えっ!えええぇ~!ほ、ほんとですか~!スライムの匂いするですか~!」
ロリ子はヌラヌラテラテラしたまま、居残り組のアクセルとアリスに迫って聞いているが、即座に二人は間合いを広げ、明らかに嫌な表情をしていた。
「うぇぇぇ……わ、私、スライム臭いですかぁ~!」
次はマサキの方を向き、ジリジリと 泣きながらアリシアはマサキに近づくが手前で石につまづいた。
「あっ!」
マサキは魔力枯渇で身体が全く動かせない状態である。
「う、うわ!ちょ!ちょ!ばか!まっ!ロリ子!落ち着け!ちょ!ちょっと!あ~!ティナ!ティナ!助けっ!ティナ~!!」
ティナはあっと言う間に距離を置いて逃げてしまった。
そして、マサキはスライム臭くなった。
(不味い。これは不味い状況だ。追加装備の固定武装もパージしたし、モアはガタが来てまともに戦える状態では無い……)
「ザッ……マサキ~もうダメだって!武装も無いしモアもヤバいって!」
(ですよね~。うん、解ってる。)
マサキとスチュアートは目線を外さずに対峙して、お互い相手の出方を伺っていた。
「ザザッ……クラタナさんもう良いでしょう!そちらのモアも限界が来てますし。アグレッサー隊員六人相手に良く持った方だと思いますよ!」
ニヤリと余裕を見せてスチュアートはそんな通信を入れて来た。
(分が悪いのは悪いけど、上から目線がどうにもムカつく。でも戦うにしても逃げるにしてもどうも出来ん……さてどうしよう。)
「ザザッ……まだ続けますか?」
スチュアートのモアは一歩引き、太刀の切っ先をこちらに向けて構え、ヤル気満々だ。
(おい。言ってる事と行動が伴って無いぞ……)
「ザッ……スチュアート。そんな事言ってる割には、超ヤル気だよなぁ。既にこっちは見ての通りこのザマだ。けど、そんなにやりたいなら相手するぞ。」
(めっちゃハッタリカマしたったー!)
「ザッ……ほぅ……お見事ですね。そうで無ければ面白く無いというもの。一応コレでも副隊長をしてますから。では、お相手願いましょうか!行きますよ!」
(てか何でそんなに上から目線なん?まぁ、立場上とか、素人に負けれんとか、部下を負かされたとか有るんだろうけど。)
スチュアートはそう言って太刀を再度構えた。
シャーロットとアリシアは、粘液まみれなのも忘れて固唾を呑んで見守っている。
「ザッ……ま、マサキ……謝っちゃいなよ!一緒に謝ってあげるから!もうダメだって!あああ~!早く!早く!」
ティナはこの世の終わりと言わんばかりの表情をして席を立ち、前のめりで直接声が届くにも関わらず通信を入れて来た。
(解ってるけど……てか、もちつけティナさんや……)
マサキは逆にティナのテンパり具合に落ち着かされ
「ザッ……シー…………ティナ、機体チェック。こいつ全く動けない訳じゃ無いんだよな。」
眼をスチュアートから逸らさずにティナに通信を入れて、すかさず手網コントローラーにコマンドを入れた。
「ザザッ……まぁ、全く動かない訳じゃ無いけど……リスト真っ赤っかだってば!」
キィィィィィィィィ~ン………………ゴゴッ……ゴッ……ゴゴゴ……ォォォォ……
(無理すればもうちょいイケるか?頼む……動いてくれ……)
「ザッ…………解った。合図するからフレアとチャフ全部ばらまけ!後、もしスチュアートが魔法を発動したらすぐ教えてくれ!」
「ザザッ……分かったけどどうすんのよ!」
「ザザッ……イマジナリーで何とかするわ!」
(コレは最初に魔物を見た時と同じだ。っても気を逸らす位じゃ子供騙しか。くそっ!チート能力見てろよ~!)
暫くスチュアートは事の成り行きを見ていたが「ザザッ……話はまとまりましたか?行きますよ!」
そう言ってスロットルをミリタリーパワー全開にしてマサキ達に攻撃を仕掛けた。
シュッ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「き、き、来たぁぁぁぁ!」
(ちょ、ティナさん黙って……舌噛むから。)
スチュアートが突進して来るのを確認して、マサキはポケットから硬竹収集の時のちょろまかした魔石を数個まとめて取り出して手に握った。
次の瞬間、自分の首辺りを狙う太刀筋を直感で感じ、反射的にモアを降着姿勢にしゃがませた。
(ヤバっ!)
ズビュシュッ!と今まで首のあった辺りに太刀筋が通り、焦りと共に手網を握りしめた。
「ザザッ……ザッ……ティナ!チャフ、フレア連続射出!」
(あいつやべぇよ……マジ殺る気じゃん……)
そう言って立ち上がり様に羽根を広げて信地転回をしスチュアートに向き直り魔石を投げた。
(イマジナリー ファンネル!フレアバースト!)
続けてM500をすかさず抜いて狙いを定める。
宙を舞うフレアとチャフの中、魔石は意志を持った様に空中に浮かび、上方と左右、後方からフレアバーストを放った。
ズブォォォォォ~!ズボォォォォ!ズボォォォォ!ズボォォォォ!ズボォォォォ!
「なにっ!?」
スチュアートは魔力シールドを張りつつ、華麗に魔石ファンネルから放たれるフレアバーストを避けるが微妙にタイミングがズレる。
「く!くそっ!なんなんだこれは!何故全方向からフレアバーストがっ!回避タイミングが!」
その間にも、魔石は回避行動をしているスチュアートの行く手を阻むかの如く、どうにか眼で追える速度で空中を移動しながらフレアバーストを放ち続けた。
「な、何アレ……」
シャーロットとアリシアは瞬きも忘れて、魔石から繰り出されるフレアバーストの攻撃を見ていた。
「ま、魔石が宙に浮いて魔法撃ってる……です……」
(や、ヤバい……そ、そろそろ俺の魔力が尽きそうだ……)
「まだまだぁ~!」
スチュアートは鬼神の如くシールドも張らず、直撃を受けながらも正面に対峙しているマサキに捨て身の覚悟で突っ込んで来た。
「ザザッ……ティナ!回避!」
(こ、コイツっ!)
ドゴォォォン!ドゴォォォン!ドゴォォォン!ドゴォォォン!
狙いも定めずにM500を撃ちながらモアを地面スレスレまで座らせ、最後の残った力を振り絞る様にジャンプした。
(これが最後だ。ファイヤーブレード!)
びちゃっ!ぼちゃっ!と至近距離でスライム弾の爆発する音が聞こえ、反射的に心の中で詠唱すると、銃身を包むように炎の剣が出現し、すれ違い様にスチュアートの乗っているモアを下方から切り裂いた。
ズビュシュ……………………!
モアはそのまま四メートル程ジャンプしてスチュアートの後方に着地し、モウモウと煙を上げながらモアは座りこんだ。
(ま、魔力が…………)
…………………………………………………………………………
暫くの沈黙の後、M500の銃身を包んで居た炎が音も無く消え、スチュアートのディスプレイにはFailedの文字が表示されていた。
「ザッ……私の負けです……」
と警戒を解いたスチュアートから通信が入り、マサキは気怠い身体でゆっくりと振り向くと、向こうのモアも煙を吐く様子が微かに目に映った。
(終わった……のか?)
そう思った瞬間、マサキは意識を手放した。
~~~~~~~~~~~~~~~~
「……………………………………キ!」
「………………ん!」
「…………さん!」
「マサキ!」
(呼ばれてる?)
ガバッ!
ゴチっ!!
「痛っ~!」
「ぐはっ!」
おでこを抑え、涙目になりながら地面を転がり回るマサキとティナ。
「だから、何で急にいつも起き上がろうとするのよっ!」
(おやおや、ティナさんご立腹ですね。てか何で覗き込んでんだよ!)
「しょうが無いだろっ!癖なんだから!ティナも覚えろよ!もう何回目だよ!」
とおでこを抑えながら、心配されても逆切れモードのマサキである。
「だ、大丈夫……ですか?」
アリシアが心配そうに声を掛けるが制服はヌルヌルである。周りを見ると他の隊員も集まっていて一様にこちらを見ている。
「だ、大丈夫だから。」
と言って起き上がろうとしたが身体に力が入らない。
(えっ?)
ドタっ……
慌ててティナが支えようとしたが、そのまま一歩も踏み出せないままマサキは倒れた。
「ちょ!マサキ!魔力尽きてるんだから暫くは動けないってば!」
「まじかー!お、起こしてくれー。」
(こ、こんなに動けなくなるのか?こんなんヤバいじゃん!完全な無防備……てか爆〇魔法撃っためぐ〇んじゃん!)
「と、取り敢えず仰向けにしましょう。」
とアリシアが俺の服を引っ張って仰向けにしてくれるが、勢い余って転がし過ぎてまたうつ伏せになった。
「おい……ロリ子……」
「ひっ!ひぇ!ご、ごめんなさいです!」
アリシアは萎縮してシャーロットの陰に隠れてしまった。
「ほら!マサキ!いじめない!」
(いじめてないから!普通だから!)
見兼ねたティナとシャーロットが「せーのっ!」と声を掛けて仰向けにして、引っ張って木に凭れ掛けさせてくれた。
「お手数をお掛けしてしまいありがとう。ございます……」
(なにこれ……)
全員の視線が集まる中、マサキはどうしていいか解らず黙っているとスチュアートが口を開いた。
「クラタナさん、最後のアレはなんなんですか?四方八方からフレアバースト撃つなんて……」
「そうですよぉ!あれはどうやったんですぅ?」
とシャーロットも興味深々に聞いてきた。
「あ、あんな攻撃の仕方、み、見た事無い、です……」
アリシアは未だシャーロットの陰に隠れて感想を言った。
先程の現場を見て居ない他の隊員は「なに?」とか「何があった?」等、顔を見合わせて目撃した二人に質問をしている。
「あ~、さっきのはイ……」
(あ、イマジナリーは言わん方が良いんだよな……ヤバい……)
「イ?」とスチュアートが言ってマサキの言葉を待っている。
「い、いい天気だよなぁ…はははは……」
チラッとティナに眼をやると、片手で眼を隠し頭を降っていた。
(ですよね~……(白目)
「天気はいいですから、どうやったんですか?あれは!」
スチュアートが業を煮やした様に聞いてくる。
「あ、アレは……ファンネル……(白目)」
(こんなんガン〇ム知らないとどう説明して良いのか解らん……)
「ファンネル?ってなんです?」
「え~っと……俺も初めてやったから良くわからんwww」
(ファンネルは具体的に前世の情報として知ってたからイメージで出来たんだけど、あんな上手く行くとは思わなかった……けど、一斉に何発もフレアバースト撃つとあっと言う間に魔力無くなるのな……)
「え~……よく分からずにあれが出来たんですか?」
スチュアートが半ば諦め気味に突っ込んで来る。
「ま、まぁ、そうなるのかな……すまん、上手く説明できん。」
(魔石ファンネルは魔石が使い捨て、と言うか燃えて無くなるのがダメだよなぁ……どうにかアレを再利用出来る様に考えないと……後は練習だなぁ……)
「まぁいいですけど……そう言えばファイヤーブレードも使ってましたよね?あんな技どこで覚えたんですか?」
「えっ?あっ……」
(何処でもクソも有るか!何となくだわ!反射的に思いついただけだから!)
「ファイヤーブレード?って何?」
ジェニファーがスチュアートに聞いた。
「そのまま炎の剣だ。超高圧に炎を圧縮して炎に質量を持たせ実体化する武器なんだが……元々は炎だろ?そうそう簡単には出来ないもんなんだが……魔力消費もかなりのもんだし。」
(え?そうなの?あれも何となくなんだけど……そうか、魔力消費が激しいのか…)
「マサキさん、そんな魔法も使えるんですか?凄いです!」
ジェニファーがこちらに向き直り聞いて来た。
「い、いや、使えると言うか……たまたまと言うか……次出来るかは分からんよ…(白目)」
(ティナ、この質問攻め何とかしてくれ……)
助けを求める様な眼でマサキはティナを見た。
「はぁ~……」と溜息を吐いて
「これからどうします?マサキはこんなだし、お借りしてたモアもあんなになっちゃったし……すみません。」
ペコッとティナがお辞儀をして謝った。
「あ、そうですね、動ける我々が一度戻って牽引モアと代わりのモアを連れてきますよ!モアの事は気にしないで下さい!それと生憎、複座のモアはクラタナさんの300系しかないので戻って来るまでここで待って貰う事になりますが……」
と逆にスチュアートは申し訳無さそうに言った。
「い、いえ、それは構いませんよ!」
「では、アクセル!アリス!お前ら二人はクラタナさんの護衛を頼む。別命あるまでここで待機!」
「了解!」
と二人は敬礼をして了承した。
「い、いや、護衛とか良いですって!」
マサキは焦りながら申し出を断るが
「そうは言っても、何かあってはいけませんですし、元より我々がクラタナさんの技術を見たいと言い出した事なので……」
「分かりました。」
(あれこれ言ってめんどくさい事になっても仕方が無いから引いておくか……)
「ふ、副隊長。わ、私も、の、残って良いですか?」
何の気紛れか、アリシアがそんな事を言い出した。
(ロリ子はスライム臭するから早く帰ってシャワー浴びろよ……www)
「お、お前はそんな制服のままで大丈夫なのか?」
戸惑いを隠せないスチュアートはアリシアのなりを見ながら更に言葉を付け足した。
「アリシア……お前……スライム臭いぞ……」
「えっ!えええぇ~!ほ、ほんとですか~!スライムの匂いするですか~!」
ロリ子はヌラヌラテラテラしたまま、居残り組のアクセルとアリスに迫って聞いているが、即座に二人は間合いを広げ、明らかに嫌な表情をしていた。
「うぇぇぇ……わ、私、スライム臭いですかぁ~!」
次はマサキの方を向き、ジリジリと 泣きながらアリシアはマサキに近づくが手前で石につまづいた。
「あっ!」
マサキは魔力枯渇で身体が全く動かせない状態である。
「う、うわ!ちょ!ちょ!ばか!まっ!ロリ子!落ち着け!ちょ!ちょっと!あ~!ティナ!ティナ!助けっ!ティナ~!!」
ティナはあっと言う間に距離を置いて逃げてしまった。
そして、マサキはスライム臭くなった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
198
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる