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風魔法と納豆と四百二十四回!
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ティナが店員を呼んで、メニューを指差しながらオーダーをしている。
「えっと、この焼き魚定食と単品でナトゥーを一つと、トマトカルボナーラをスープセットで。以上でお願いします。」
店員は内容を確認して去ろうとした時、マサキは呼び止めてこの店は喫煙可能なのか聞いてみた。
前世の感覚だと、基本的に殆ど禁煙か店内に入ったと同時に、禁煙席か喫煙席かを問われる。
だがここは、問われなかったのも有るが、調味料等を置いてある壁際に、灰皿らしき物まで置いてあったので一応、確認の為にマサキは聞いたのであった。
「はい?タバコですか?どうぞ。」
それをマサキが店員に聞いた瞬間、ティナは「またタバコかよ、懲りない奴だな」とでも言いたそうな表情になり軽く溜息をしていた。
マサキは、それを店員から聞いて安心して椅子に掛けたマントの内ポケットからタバコを出して火をつけて吸い、先程の雑踏を払う様に大きく吸い込んでから、一仕切りした様に煙を吐いたのであった、
「マサキ、これ二千五百円なんですけどぉ!」
ティナの「コレ」とはタバコでの事ある。
それをトントンと指差して話を続けた。
「コレ一箱で私達の一食分が賄えるんですけどぉ!」
「いや、まぁ……」
ぷはぁっと煙を吐きながらマサキは曖昧に返事をした。
「硬竹クエストの報酬もまだ残ってるし、ラスクに戻ったら井戸掘りとかの収入の見込みがあるから、兎や角言うつもりは無いんだけど……まぁ、身体に良くないことは止めた方が良いよ。」
「うん。一応自覚はしてる。」
「なら良いけど。」
「うん。」
「………………」
(おまいは俺の親かよっ!)
マサキは少々気まずくなり、ティナから顔を背けて挙動不審に店内を見渡したのであった。
「それはそうと……」
とティナが話を繋げてくる。
(おいおい、まだ言いたいことあるのか?)
「なに?」
ウンザリ気味に返事を返すマサキ。
「そんなあからさまに嫌な顔しないでよね!もう、その話じゃないんだから!」
「すまん。続けて。」
ティナの注意が続くのでは無いと解り、一吸いして話を促す。
「いや、スキルの認定式?っていつになるんだろう?この街に来て彼此一週間は経つでしょ?略毎日ギルド行ってるのに具体的に話が全然進んで無い気がしてさ……」
ティナは、天井に視線を彷徨わせながら、両手で組んだ上に顎を乗せてアンニュイな感じで話していた。
「確かに。でも、認定の手続きを踏むのに、人が集まるのが一週間とか言ってなかったか?明日でもいってエイドリアンさんに聞いてみるか?」
とマサキは言ってから、自分の近くに灰皿を寄せて、念入りにタバコの火を消し始めた。
「此処は此処で、毎日目新しい事を発見できて楽しいから良いんだけどさ、来た目的を忘れちゃいそうでね。それに長い事留守にしてると、家も心配だし……」
マサキの消したタバコの煙が、すぅーっと厨房へ流れて行くのを、何となく眼で追いつつ、この街での出来事を思い出していた。
「あ~……まぁそうだよな。」
(一般的にラスクが安全な町と思われているが、犯罪が無い訳では無い。ここヘ来る前に、ギルドの借り物の、レアマジックアイテムを奪いに来る様な輩も居たしな……)
「何か、状況に流されてる感は否めないよな。どうこう出来るもんでも無いのは理解してるんだが………」
「だよね~。」
う~ん……と二人、考えても解の出ない事に頭を悩ましている所へ「お待たせしました!」とバイト風の若い女の子が料理を運んで来た。
「こちらがセットでトマトカルボナーラと焼き魚定食とナトゥーです!」
ティナの前にパスタとスープ、マサキの前には念願?の焼き魚とナトゥー(納豆)が小鉢に収められて置かれた。
マサキは目の前に置かれた焼き魚を見て思った。
(な、何かイメージと…………汗。)
焼き魚定食って一般的?には、魚1匹丸々焼いた物が皿に載せて出て来る物だと思って居たのだが、皿には四角く切られている『切り身?』の焼き魚が盛られていたのである。
「なぁ、ティナ。」
「なに?」
ティナは、マサキの事も気にも止めず「頂きます!」と小声で言って右手にフォークを持ち、左手でスプーンを持って食べ始めた。
「コレって焼き魚なの?香りで魚ってのは解るんだけど。」
マサキは目の前に出された『焼き魚定食』の『魚』を凝視して固まっていたのであった。
「そうだよ。」
フォークで少しの量を取り、スプーンの上でクルクルと巻いて、パスタを食べ慣れてる感が有る。
(ティナってパスタ好物なのかな?前もこんなシチュあったよな?)
「ティナ、さっきシュッとした細長い魚って言わなかったか?」
マサキは箸を持ったまま、疑問しか浮かんで来ないこの四角い物を見ながら、そのままティナに疑問をぶつけた。
「言ったけど。」
「どう見ても、コレシュッとして無くて、只の切り身だよな。鮭とか鰤の切り身みとは異なるけど。」
「だね。」
(だね。じゃねーよ!魚!何処行ったよ!)
「ティナの話から一匹丸々焼いたのを予想してたんだけど……」
マサキは、期待していたものとは違った物が出て来て、若干落胆しながらその思いを口にしてみた。
「あ~!そゆことね。それ元々はシュッとした魚だよ。」
「え?何でわざわざ切っちゃってるの?切ってる意味わからんよ。大きい魚?」
「小さいからじゃないの?解らないけど。」
(小さい魚なのに切り身にする必要って有るのか?)
「てかこの魚ってなによ?」
「え?何って『サヨリ』だけど……」
(サヨリって、顎がシャイーンって伸びてる?確かにシュッとはしてるけど、刺身とかで食べるもんじゃ無いのか?てか刺身しか食べたことないぞ?もう色々と疑問しか浮かんで来ないわ……)
「サヨリって焼くの?」
「うん。大抵は焼くよ。煮たり蒸したりとかは無いかな?そんなに大きく無いからね。元々外洋の魚じゃないもん。」
(何か腑に落ちない……焼き魚ってイワシとか秋刀魚とかアジのヒラキとかがポピュラーだと思ってたが……)
目の前に現実に出されたものは、白身の四角くい物体であった。しかもミョウガとか添えられて、変に料亭風なシャレオツ感を醸し出していた。
「と、取り敢えず食べるか……」
ティナはスプーンとフォークを巧みに使ってパスタを食べて居る。
切り身なので、若干控えめにソーイユ(醤油)を掛け、小鉢に盛り付けられているナトゥー(納豆)にも掛けた。
(納豆は普通なんだよな……何処からどう見ても普通の小粒納豆だ。ちゃんとネギらしき物も掛かってる。)
そんな事を思いながら、納豆を泡立つまでグルグルとマサキは掻き混ぜ始めた。
「マサキ……そんなに思い切り混ぜなくても…………」
「え?」
「え?って。普通そんなに混ぜないよ!」
「いやいやいやいや!泡立つまで混ぜるのが普通だろ!」
「いやいや!無いって!」
「いやいや!混ぜないと美味しくならないんだぞ!混ぜると旨みのアミノ酸がどうのこうのって知らないのか?」
「アミノサン?何それ。それ人の名前?」
「いやいや!人の網野さんじゃなくて、アミノ酸!酸だよ!酸!」
(アミノ酸が人名になったぞ!話が通じないってのは結構厄介だなぁ……)
「あ~……ハイハイ。その臭い奴、どうでも良いから行儀よく食べてよね!」
(納豆混ぜるの、そんなに行儀悪い事なのか?それがコッチの文化なのか?てか茨城県民に謝れ!後、日本人に謝れ!)
「わ、わかったよ……」
グルグルグルグルグルグル……
ティナは既にパスタを4分の1程食べて居たが、マサキはナトゥー(納豆)を混ぜ続けて居るので、まだ一口も食べて居なかった。
グルグルグルグルグルグル……
此方を嫌~な顔をして見ながら、音も立てずに黙々とティナはパスタを食べて居る。
グルグルグルグルグルグル……
「………………」
グルグルグルグルグルグル……
「………………」
グルグルグルグルグルグル……
「マサキ。いつまで混ぜてんよの!」
「え?四百回位?」
グルグルグルグルグルグル……
「はぁ?四百回?て……」
「昔……あ、前世の話だけどな、納豆を何回混ぜたら美味しくなるのか?ってググってさ。」
グルグルグルグルグルグル……
「ググる?って?」
グルグルグルグルグルグル……
「あ。説明そこからか!え~っと……検索エンジン……あ~……調べたんだよ。」
グルグルグルグルグルグル……
「ググルって書籍か何かなの?」
グルグルグルグルグルグル……
「いや、全然違うけどそんな感じに捉えて貰って良いわ……」
(イミダスとか言っても通じないしな……)
グルグルグルグルグルグル……
「で?それに四百回って書いてあったのね?」
グルグルグルグルグルグル……
「うん。正確には四百二十四回だな!本当は三百五回目でソーイユ(醤油)をを入れて残りの回数を混ぜるのが良いらしい。」
グルグルグルグルグルグル……
「そんなに変わるものなの?」
グルグルグルグルグルグル……
「俺のバカ舌だとそこまで解らん!」
グルグルグルグルグルグル……
「へぇ~……そんな変化を感じることも出来ない様な事を、苦労してやってたのね……(ジト目)」
グルグルグルグルグルグル……
「良いんだって!言い方変えると儀式みたいなもんなんだから!気分だよ!気分!召喚魔法も儀式居るだろ?そんな感じだって!」
グルグルグルグルグルグル……
「なら最初から風魔法で混ぜれば良かったじゃん。」
それを聞いた途端に、納豆を混ぜていたマサキの手がピタっと止まったのであった。
「いまなんて?」
(風魔法?)
「だから風魔法で混ぜれば良いのにって。」
「そんな事出来るの?」
「エアカット使えるんだから使えるでしょ。多分。」
(え?なんでそこで魔法出て来んの?納豆混ぜるのに魔法使うとか……流石にそれは無いだろ……)
「小さく細く、つむじ風を起こすようにすれば混ぜられるんじゃないの?野菜ジュース作る時は私そうやってるよ?」
「はい?」
(料理に魔法て……ファンタジーだけど……納豆混ぜるのに魔法使うのって、ファンタジーなのか?いや、まぁファンタジーだけど。今まで持っていたファンタジーの世界観が崩れて行くわ……)
「うん。流石に野菜を切ったり、とかに態々魔法は使わないけど。あ、散らかっちゃうからね!混ぜたりってのは刻んだ野菜をコップの中に入れて、そのまま風魔法でジュースにするよ!」
(野菜を切るのに魔法?最初から普通に包丁使えよ!散らかっちゃうって事は試して見たんだなこの娘……まぁ現代風?に言えば、かまいたちの応用なんだろうな。あ~。それを強力且つ大きくしたら、有りがちな攻撃魔法になるのか。なるほどなるほど……)
「へ、へぇ…………ま、魔法て、便利なんだな……」
(何か自分が今まで持っていた魔法に対してのイメージが……(汗)果たしてこんな魔法の覚え方で良いんだろうか?)
「便利、と言うか、道具って言うか『技術?』だよね。そのまんまだけど。」
ティナの言いたい事は理解出来るが、何か腑に落ちない……素材を美味しく料理するのも、前世でも此処でも料理の腕……所謂技術ってのは解るけど…
それに此処は、魔法の存在する世界だから、違和感無く料理にその技術を取り入れてるって感じも……なぁ……解るっちゃあ解るけど……これだから文明の利器が発展しないんじゃ無いのか?
「あ~……うん。まぁ……うん。」
(俺は異世界転生物で、初めて魔法で納豆を混ぜる事になるのか……聞いた事も読んだ事も無いし、そんな発想すらなかったわ!)
マサキは言われた通りに風魔法で納豆をまぜてみる。
(つむじ風って言ってたな……小さく細く……)と……ジューサーの回るイメージをした。
すると、持って居た小鉢に細かな振動が起きて、洗濯機の様に納豆が回り始めた。
「おおお!魔法すげぇ!!」
マサキは歓喜の声を上げて、その異常とも思える光景を見て居たが、納豆は尚も小鉢の中で回転を上げて、次第に空に吸い上げられる様に持ち上がり、納豆の香りを辺りに撒き散らしたのであった。
「マサキ、臭いからやめてよ!ホントにもう……」
ティナは鼻を摘んでそう言ったのだった。
(……え?それだけだと、俺自信が臭いって事になっちゃうよ!ティナさんや。誤解を生む言い方やめろし!)
「えっと、この焼き魚定食と単品でナトゥーを一つと、トマトカルボナーラをスープセットで。以上でお願いします。」
店員は内容を確認して去ろうとした時、マサキは呼び止めてこの店は喫煙可能なのか聞いてみた。
前世の感覚だと、基本的に殆ど禁煙か店内に入ったと同時に、禁煙席か喫煙席かを問われる。
だがここは、問われなかったのも有るが、調味料等を置いてある壁際に、灰皿らしき物まで置いてあったので一応、確認の為にマサキは聞いたのであった。
「はい?タバコですか?どうぞ。」
それをマサキが店員に聞いた瞬間、ティナは「またタバコかよ、懲りない奴だな」とでも言いたそうな表情になり軽く溜息をしていた。
マサキは、それを店員から聞いて安心して椅子に掛けたマントの内ポケットからタバコを出して火をつけて吸い、先程の雑踏を払う様に大きく吸い込んでから、一仕切りした様に煙を吐いたのであった、
「マサキ、これ二千五百円なんですけどぉ!」
ティナの「コレ」とはタバコでの事ある。
それをトントンと指差して話を続けた。
「コレ一箱で私達の一食分が賄えるんですけどぉ!」
「いや、まぁ……」
ぷはぁっと煙を吐きながらマサキは曖昧に返事をした。
「硬竹クエストの報酬もまだ残ってるし、ラスクに戻ったら井戸掘りとかの収入の見込みがあるから、兎や角言うつもりは無いんだけど……まぁ、身体に良くないことは止めた方が良いよ。」
「うん。一応自覚はしてる。」
「なら良いけど。」
「うん。」
「………………」
(おまいは俺の親かよっ!)
マサキは少々気まずくなり、ティナから顔を背けて挙動不審に店内を見渡したのであった。
「それはそうと……」
とティナが話を繋げてくる。
(おいおい、まだ言いたいことあるのか?)
「なに?」
ウンザリ気味に返事を返すマサキ。
「そんなあからさまに嫌な顔しないでよね!もう、その話じゃないんだから!」
「すまん。続けて。」
ティナの注意が続くのでは無いと解り、一吸いして話を促す。
「いや、スキルの認定式?っていつになるんだろう?この街に来て彼此一週間は経つでしょ?略毎日ギルド行ってるのに具体的に話が全然進んで無い気がしてさ……」
ティナは、天井に視線を彷徨わせながら、両手で組んだ上に顎を乗せてアンニュイな感じで話していた。
「確かに。でも、認定の手続きを踏むのに、人が集まるのが一週間とか言ってなかったか?明日でもいってエイドリアンさんに聞いてみるか?」
とマサキは言ってから、自分の近くに灰皿を寄せて、念入りにタバコの火を消し始めた。
「此処は此処で、毎日目新しい事を発見できて楽しいから良いんだけどさ、来た目的を忘れちゃいそうでね。それに長い事留守にしてると、家も心配だし……」
マサキの消したタバコの煙が、すぅーっと厨房へ流れて行くのを、何となく眼で追いつつ、この街での出来事を思い出していた。
「あ~……まぁそうだよな。」
(一般的にラスクが安全な町と思われているが、犯罪が無い訳では無い。ここヘ来る前に、ギルドの借り物の、レアマジックアイテムを奪いに来る様な輩も居たしな……)
「何か、状況に流されてる感は否めないよな。どうこう出来るもんでも無いのは理解してるんだが………」
「だよね~。」
う~ん……と二人、考えても解の出ない事に頭を悩ましている所へ「お待たせしました!」とバイト風の若い女の子が料理を運んで来た。
「こちらがセットでトマトカルボナーラと焼き魚定食とナトゥーです!」
ティナの前にパスタとスープ、マサキの前には念願?の焼き魚とナトゥー(納豆)が小鉢に収められて置かれた。
マサキは目の前に置かれた焼き魚を見て思った。
(な、何かイメージと…………汗。)
焼き魚定食って一般的?には、魚1匹丸々焼いた物が皿に載せて出て来る物だと思って居たのだが、皿には四角く切られている『切り身?』の焼き魚が盛られていたのである。
「なぁ、ティナ。」
「なに?」
ティナは、マサキの事も気にも止めず「頂きます!」と小声で言って右手にフォークを持ち、左手でスプーンを持って食べ始めた。
「コレって焼き魚なの?香りで魚ってのは解るんだけど。」
マサキは目の前に出された『焼き魚定食』の『魚』を凝視して固まっていたのであった。
「そうだよ。」
フォークで少しの量を取り、スプーンの上でクルクルと巻いて、パスタを食べ慣れてる感が有る。
(ティナってパスタ好物なのかな?前もこんなシチュあったよな?)
「ティナ、さっきシュッとした細長い魚って言わなかったか?」
マサキは箸を持ったまま、疑問しか浮かんで来ないこの四角い物を見ながら、そのままティナに疑問をぶつけた。
「言ったけど。」
「どう見ても、コレシュッとして無くて、只の切り身だよな。鮭とか鰤の切り身みとは異なるけど。」
「だね。」
(だね。じゃねーよ!魚!何処行ったよ!)
「ティナの話から一匹丸々焼いたのを予想してたんだけど……」
マサキは、期待していたものとは違った物が出て来て、若干落胆しながらその思いを口にしてみた。
「あ~!そゆことね。それ元々はシュッとした魚だよ。」
「え?何でわざわざ切っちゃってるの?切ってる意味わからんよ。大きい魚?」
「小さいからじゃないの?解らないけど。」
(小さい魚なのに切り身にする必要って有るのか?)
「てかこの魚ってなによ?」
「え?何って『サヨリ』だけど……」
(サヨリって、顎がシャイーンって伸びてる?確かにシュッとはしてるけど、刺身とかで食べるもんじゃ無いのか?てか刺身しか食べたことないぞ?もう色々と疑問しか浮かんで来ないわ……)
「サヨリって焼くの?」
「うん。大抵は焼くよ。煮たり蒸したりとかは無いかな?そんなに大きく無いからね。元々外洋の魚じゃないもん。」
(何か腑に落ちない……焼き魚ってイワシとか秋刀魚とかアジのヒラキとかがポピュラーだと思ってたが……)
目の前に現実に出されたものは、白身の四角くい物体であった。しかもミョウガとか添えられて、変に料亭風なシャレオツ感を醸し出していた。
「と、取り敢えず食べるか……」
ティナはスプーンとフォークを巧みに使ってパスタを食べて居る。
切り身なので、若干控えめにソーイユ(醤油)を掛け、小鉢に盛り付けられているナトゥー(納豆)にも掛けた。
(納豆は普通なんだよな……何処からどう見ても普通の小粒納豆だ。ちゃんとネギらしき物も掛かってる。)
そんな事を思いながら、納豆を泡立つまでグルグルとマサキは掻き混ぜ始めた。
「マサキ……そんなに思い切り混ぜなくても…………」
「え?」
「え?って。普通そんなに混ぜないよ!」
「いやいやいやいや!泡立つまで混ぜるのが普通だろ!」
「いやいや!無いって!」
「いやいや!混ぜないと美味しくならないんだぞ!混ぜると旨みのアミノ酸がどうのこうのって知らないのか?」
「アミノサン?何それ。それ人の名前?」
「いやいや!人の網野さんじゃなくて、アミノ酸!酸だよ!酸!」
(アミノ酸が人名になったぞ!話が通じないってのは結構厄介だなぁ……)
「あ~……ハイハイ。その臭い奴、どうでも良いから行儀よく食べてよね!」
(納豆混ぜるの、そんなに行儀悪い事なのか?それがコッチの文化なのか?てか茨城県民に謝れ!後、日本人に謝れ!)
「わ、わかったよ……」
グルグルグルグルグルグル……
ティナは既にパスタを4分の1程食べて居たが、マサキはナトゥー(納豆)を混ぜ続けて居るので、まだ一口も食べて居なかった。
グルグルグルグルグルグル……
此方を嫌~な顔をして見ながら、音も立てずに黙々とティナはパスタを食べて居る。
グルグルグルグルグルグル……
「………………」
グルグルグルグルグルグル……
「………………」
グルグルグルグルグルグル……
「マサキ。いつまで混ぜてんよの!」
「え?四百回位?」
グルグルグルグルグルグル……
「はぁ?四百回?て……」
「昔……あ、前世の話だけどな、納豆を何回混ぜたら美味しくなるのか?ってググってさ。」
グルグルグルグルグルグル……
「ググる?って?」
グルグルグルグルグルグル……
「あ。説明そこからか!え~っと……検索エンジン……あ~……調べたんだよ。」
グルグルグルグルグルグル……
「ググルって書籍か何かなの?」
グルグルグルグルグルグル……
「いや、全然違うけどそんな感じに捉えて貰って良いわ……」
(イミダスとか言っても通じないしな……)
グルグルグルグルグルグル……
「で?それに四百回って書いてあったのね?」
グルグルグルグルグルグル……
「うん。正確には四百二十四回だな!本当は三百五回目でソーイユ(醤油)をを入れて残りの回数を混ぜるのが良いらしい。」
グルグルグルグルグルグル……
「そんなに変わるものなの?」
グルグルグルグルグルグル……
「俺のバカ舌だとそこまで解らん!」
グルグルグルグルグルグル……
「へぇ~……そんな変化を感じることも出来ない様な事を、苦労してやってたのね……(ジト目)」
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「なら最初から風魔法で混ぜれば良かったじゃん。」
それを聞いた途端に、納豆を混ぜていたマサキの手がピタっと止まったのであった。
「いまなんて?」
(風魔法?)
「だから風魔法で混ぜれば良いのにって。」
「そんな事出来るの?」
「エアカット使えるんだから使えるでしょ。多分。」
(え?なんでそこで魔法出て来んの?納豆混ぜるのに魔法使うとか……流石にそれは無いだろ……)
「小さく細く、つむじ風を起こすようにすれば混ぜられるんじゃないの?野菜ジュース作る時は私そうやってるよ?」
「はい?」
(料理に魔法て……ファンタジーだけど……納豆混ぜるのに魔法使うのって、ファンタジーなのか?いや、まぁファンタジーだけど。今まで持っていたファンタジーの世界観が崩れて行くわ……)
「うん。流石に野菜を切ったり、とかに態々魔法は使わないけど。あ、散らかっちゃうからね!混ぜたりってのは刻んだ野菜をコップの中に入れて、そのまま風魔法でジュースにするよ!」
(野菜を切るのに魔法?最初から普通に包丁使えよ!散らかっちゃうって事は試して見たんだなこの娘……まぁ現代風?に言えば、かまいたちの応用なんだろうな。あ~。それを強力且つ大きくしたら、有りがちな攻撃魔法になるのか。なるほどなるほど……)
「へ、へぇ…………ま、魔法て、便利なんだな……」
(何か自分が今まで持っていた魔法に対してのイメージが……(汗)果たしてこんな魔法の覚え方で良いんだろうか?)
「便利、と言うか、道具って言うか『技術?』だよね。そのまんまだけど。」
ティナの言いたい事は理解出来るが、何か腑に落ちない……素材を美味しく料理するのも、前世でも此処でも料理の腕……所謂技術ってのは解るけど…
それに此処は、魔法の存在する世界だから、違和感無く料理にその技術を取り入れてるって感じも……なぁ……解るっちゃあ解るけど……これだから文明の利器が発展しないんじゃ無いのか?
「あ~……うん。まぁ……うん。」
(俺は異世界転生物で、初めて魔法で納豆を混ぜる事になるのか……聞いた事も読んだ事も無いし、そんな発想すらなかったわ!)
マサキは言われた通りに風魔法で納豆をまぜてみる。
(つむじ風って言ってたな……小さく細く……)と……ジューサーの回るイメージをした。
すると、持って居た小鉢に細かな振動が起きて、洗濯機の様に納豆が回り始めた。
「おおお!魔法すげぇ!!」
マサキは歓喜の声を上げて、その異常とも思える光景を見て居たが、納豆は尚も小鉢の中で回転を上げて、次第に空に吸い上げられる様に持ち上がり、納豆の香りを辺りに撒き散らしたのであった。
「マサキ、臭いからやめてよ!ホントにもう……」
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職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
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