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戦いの歴史
戦いの始まり
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「また会おうね……!」
母の最期の言葉を聞く余裕は、今の少年にはどこにもなかった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
気付くと、少年はいつの間にかナイフを手にして、魔族に斬りかかっていた。
「母さん……。よくも俺達の母さんを……!!
死んで詫びろ!音速の一閃!!」
少年・エイルは、特別な訓練をしていたわけではない。ましてや今の剣技を使おうとしたわけでもなかった。
突然、なぜか自分に使えた技。それは、エイルの復讐心を煽った。
「……この技があれば、奴らを皆殺しに出来る……ッ!」
数秒後には家を飛び出していた。家の目の前には、先ほどのものと同じ様な魔族が何体もいた。目につく限り虐殺を繰り返した。
「はぁ……。はぁ……。面白いじゃねぇか……!どんどんかかって来やがれ!俺が全部殺してやる……ッ!」
一人の少年による大量虐殺は、夜中まで続いた。最後の一体を前にして、シーフは立ち止まった。
「お前で最後か……。弱いな……。
なぁ、教えてくれよ。お前らは何故、この町を襲った?何のメリットもないこの町を……ッ!返せよ!俺の、俺たちの母さんを返してくれよぉぉぉぉぉ!!」
一閃。町を襲った魔族は全滅した。
…………かに思えた。だが、違った。
「お答えしましょうか。この町を襲った理由を」
突然、闇から男の声がした。声がした方を振り向くと、異様な服装の男が立っていた。
「ッ……!まだ残っていたのか!」
視認すると同時、直ぐに臨戦態勢に入るも、男の手に抱かれていた少女に気付くと、焦った様にナイフを収めた。
「おっとぉ。それ以上近づいたら、あなたの妹さんの命はないと思ってくださいね?」
案の定、男はエイルの妹・エイラを人質にして来た。
「卑怯だぞ……!」
「卑怯?何を言っていらっしゃるんですか?殺し合いにルールなどありませんでしょうに。
私は、あなた方に宣戦布告しに来たのですよ。我が主人、フローリア様から人間へのね」
「フローリア……?」
「えぇ。フローリア様は魔族の女王でございます。この世界は私の物にする……と。そうおっしゃっています」
「そんな事……、誰がさせるか!」
「あなたならそういうと思っていましたよ。我らが同士・エイル殿」
「同士だと……⁉︎いい加減にしろ!俺は母親を殺した奴らの仲間にはならないぞ!」
「お気が強い事で。だがまあ……。いずれ分かりますよ。妹さんは返します。西の果て・バベルでまたお会いしましょう」
「おい!待て!話はまだ終わってないぞ!」
「生憎と、こちらから話す事はもうないので。失礼させていただきます」
男は、現れた時と同じ様に闇に紛れ、消えた。
「ん……?エイ……ルお兄ちゃ……ん?」
憎悪を膨らませていたエイルは、妹の声で我に帰った。
「エイラ!気がついたのか!怪我はないか⁉︎」
「うん……。それより、私、何でここに……?……お母さんは?」
エイルは、母の事をどう話せばいいのかわからずに俯いた。それだけで察しがついたのか、エイラはそれ以上追求しようとはしなかった。
「そっか……。お母さん、死んじゃったか」
「あぁ……」
「お母さん……。死んじゃったのか……」
「……すまん。守れなかった」
「エイルお兄ちゃんは悪くないよ……。気に病まないで……」
「……あぁ」
その夜の星空は、皮肉な程に美しかった。生前の母を形取った様な、美しくはっきりとした星空だった……。
母の最期の言葉を聞く余裕は、今の少年にはどこにもなかった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
気付くと、少年はいつの間にかナイフを手にして、魔族に斬りかかっていた。
「母さん……。よくも俺達の母さんを……!!
死んで詫びろ!音速の一閃!!」
少年・エイルは、特別な訓練をしていたわけではない。ましてや今の剣技を使おうとしたわけでもなかった。
突然、なぜか自分に使えた技。それは、エイルの復讐心を煽った。
「……この技があれば、奴らを皆殺しに出来る……ッ!」
数秒後には家を飛び出していた。家の目の前には、先ほどのものと同じ様な魔族が何体もいた。目につく限り虐殺を繰り返した。
「はぁ……。はぁ……。面白いじゃねぇか……!どんどんかかって来やがれ!俺が全部殺してやる……ッ!」
一人の少年による大量虐殺は、夜中まで続いた。最後の一体を前にして、シーフは立ち止まった。
「お前で最後か……。弱いな……。
なぁ、教えてくれよ。お前らは何故、この町を襲った?何のメリットもないこの町を……ッ!返せよ!俺の、俺たちの母さんを返してくれよぉぉぉぉぉ!!」
一閃。町を襲った魔族は全滅した。
…………かに思えた。だが、違った。
「お答えしましょうか。この町を襲った理由を」
突然、闇から男の声がした。声がした方を振り向くと、異様な服装の男が立っていた。
「ッ……!まだ残っていたのか!」
視認すると同時、直ぐに臨戦態勢に入るも、男の手に抱かれていた少女に気付くと、焦った様にナイフを収めた。
「おっとぉ。それ以上近づいたら、あなたの妹さんの命はないと思ってくださいね?」
案の定、男はエイルの妹・エイラを人質にして来た。
「卑怯だぞ……!」
「卑怯?何を言っていらっしゃるんですか?殺し合いにルールなどありませんでしょうに。
私は、あなた方に宣戦布告しに来たのですよ。我が主人、フローリア様から人間へのね」
「フローリア……?」
「えぇ。フローリア様は魔族の女王でございます。この世界は私の物にする……と。そうおっしゃっています」
「そんな事……、誰がさせるか!」
「あなたならそういうと思っていましたよ。我らが同士・エイル殿」
「同士だと……⁉︎いい加減にしろ!俺は母親を殺した奴らの仲間にはならないぞ!」
「お気が強い事で。だがまあ……。いずれ分かりますよ。妹さんは返します。西の果て・バベルでまたお会いしましょう」
「おい!待て!話はまだ終わってないぞ!」
「生憎と、こちらから話す事はもうないので。失礼させていただきます」
男は、現れた時と同じ様に闇に紛れ、消えた。
「ん……?エイ……ルお兄ちゃ……ん?」
憎悪を膨らませていたエイルは、妹の声で我に帰った。
「エイラ!気がついたのか!怪我はないか⁉︎」
「うん……。それより、私、何でここに……?……お母さんは?」
エイルは、母の事をどう話せばいいのかわからずに俯いた。それだけで察しがついたのか、エイラはそれ以上追求しようとはしなかった。
「そっか……。お母さん、死んじゃったか」
「あぁ……」
「お母さん……。死んじゃったのか……」
「……すまん。守れなかった」
「エイルお兄ちゃんは悪くないよ……。気に病まないで……」
「……あぁ」
その夜の星空は、皮肉な程に美しかった。生前の母を形取った様な、美しくはっきりとした星空だった……。
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