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第4杯 ②
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「だから、まさか彼女もごちそうになる気?」
「あったりめーじゃんか」
まるで、当たり前の様に洋輔は答えたが、この態度を見る限り、まだ、あたしの財布事情を把握できてないらしい。目の前の後景に、思わず自分の額を抱える。
「まぁ、細かい事は気にすんなって」
「気にするでしょーがっ」
「そう、怒るなって。俺、今腹減りすぎてよっ死にそうなわけよ」
「ったく、とりあえず座ればいいんでしょっ」
文句を言いながらも、洋輔の彼女が待つテーブルへ。彼は彼女の隣に、あたしはテーブルを挟んだ向かい側のソファーにそれぞれ座る。
「わりぃな、待たせて。どっかの誰かが、ごねって――――」
洋輔が話終わらない内に、誤解のないように、あたしは彼の言葉に割り込む。
「誰がごねったって?」
「ん~なんか、ふたりとも~険悪なカンジィ?」
気が抜けるような軽い感じの声と、それに語尾の最後があがるイントネーション。そんな軽い感じの口調で言葉を発したのは、洋輔じゃなく、彼の彼女。大人の対応を努める為に下手な愛想笑いで、その場つくろうあたし。
「そういう訳じゃないんだけどね、予定じゃおごるのはひとりと思ってたから」
「おねぇさん、ミズの事なら、ぜんぜん気にしなくていいのにぃ」
おねぇさんという言葉に、全くシックリ来ないあたしは引きつった顔を苦笑いでなんとかごまかす。
「遠慮すんなって、ミズ」
「洋ちゃんがそう言うなら~食べちゃおっかなっミズも」
「コラコラ、そこっ人の話聞いてたわけ?」
「大丈夫。おねぇさんっミズはぁ小食だから~」
「いや、だから――――ね」
会話を拒むかの様に突如ピンポーンと、あのベルの呼び出し音。
話を続けようとした矢先、あたしたちのテーブルに注文を受けようと、既に店員さんが待機していた。いつもなら喜ぶはずだけど、今のあたしには素直にそうできそうにもない。
とまどうがそれでも店員さんの手前、文句いう訳にもいかないので、一応注文する事に。メニューのソフトドリンクが数種類並んだ写真を指差す。
「えっと、じゃっこれで」
店員さんはあたしの指差した場所を一度見て、こちらに視線を戻してから微笑えんだ。
「ドリンクバーおひとつですね」
注文の確認を取ると、店員さんは手元の機械へ料理を入力。
続いてその様子を見ていた洋輔が、メニューの商品をあちこち指差し注文する。その動作や口調にはなんの迷いもない模様。
「んじゃー俺はね、腹減ってるし、これとこれとこれがいいな」
「そちらでしたら、セットメニューでご用意できますが?」
洋輔の注文に反応した店員さんが、すかさず彼にお得なセットメニューをおススメ。
「セットあるなら、それで」
「かしこまりました」
「ミズは? 注文決まったのか?」
「ううん、まだなの。何がいいかな?」
「好きなもん、頼めばいいんじゃね?」
「じゃっ洋ちゃんと一緒のっ」
「かしこまりました、それではご注文を繰り返しま――――」
店員さんが確認を取っている間に、コソコソと鞄から自分の財布を取り出して、お金の勘定をするあたし。
頭の中の計算を終えて、財布から視線を元に戻した。
目の前はガランとした空間だけがあり、見事に向こうの端まで見通せる。
そして、そこにいるはずだった人の姿がない。どうやら夢中で計算していたあたしの耳には、いつの間にか店員さんの声が、聞えなくなっていた模様。
キョロキョロと店員さんの姿を探しながら、状況を把握するために洋輔へ問いかけた。
「あれっ、店員さんは?」
「もう、向こうに行ったけど、返事ならしといたよ」
「あ――――そう、ありがとう」
「どういたしまして」
満面の笑みで洋輔が得意気に答えたのを最後に、あたしとの会話がなくなるのだった。
そこに洋輔の隣に座る彼女がイジケルような口調で、彼に問い詰め始めた。
「洋ちゃん、最近忙しいの?」
「なんで?」
「だってぇ、なかなかデェトしてくれんないんだもんっ」
「ああ、それはミズとの将来を考えてで、俺は今大学行くための勉強してるんだぜ」
「その話は聞いたけど、ミズすんご~く寂しいのぉ」
彼女は洋輔の服を細くきれいに手入れしている指で少しつまんで、自分の方へ彼をグイグイと寄せる。
引き寄せられた洋輔はなにやら彼女の耳元で囁く。彼の一言で、ふたりの空気が変わったのか、ラブラブなご様子。
食事が運ばれてくるまでの辛抱だ、とふたりのラブラブっぷりを横目に何度も自分へ言い聞かせるあたしの瞳に、注文した商品を引き連れた店員さんの姿が。
今日は特別その姿が輝いて映るのだった。
到着した店員さんが運んできた料理をそれぞれの目の前に置くと、テーブルいっぱいに美味しそうな香りが広がる。
「ご注文は以上でおそろいでしょうか?」
「はい」
店員さんが白い紙を透明の筒の様な置物の真ん中に紙を差し込む。軽く会釈して去っていった。その間中も彼らは何も気にせず、ふたりだけの世界。
いろんな意味でお腹いっぱいのあたしはうんざりしていた――――――――水分で胃袋はチャポンチャポン。目の前のバカップルのせいで、今にでもお腹がはち切れそうだった。
理由はイチャイチャする洋輔たちを暖かく見守るスキルなんて持ち合わせていなかったから。飲み物を一気に飲んでは、その度にドリンクバーへ何度も足を運び、往復する始末。
ふたりはすっかりあたしの存在を忘れているのか、それとも、今時の高校生は公衆の面前で恥知らずな行為を、遠慮なしにやってのけれる程、動物的本能が抑えられないお猿さんなのか。
「あったりめーじゃんか」
まるで、当たり前の様に洋輔は答えたが、この態度を見る限り、まだ、あたしの財布事情を把握できてないらしい。目の前の後景に、思わず自分の額を抱える。
「まぁ、細かい事は気にすんなって」
「気にするでしょーがっ」
「そう、怒るなって。俺、今腹減りすぎてよっ死にそうなわけよ」
「ったく、とりあえず座ればいいんでしょっ」
文句を言いながらも、洋輔の彼女が待つテーブルへ。彼は彼女の隣に、あたしはテーブルを挟んだ向かい側のソファーにそれぞれ座る。
「わりぃな、待たせて。どっかの誰かが、ごねって――――」
洋輔が話終わらない内に、誤解のないように、あたしは彼の言葉に割り込む。
「誰がごねったって?」
「ん~なんか、ふたりとも~険悪なカンジィ?」
気が抜けるような軽い感じの声と、それに語尾の最後があがるイントネーション。そんな軽い感じの口調で言葉を発したのは、洋輔じゃなく、彼の彼女。大人の対応を努める為に下手な愛想笑いで、その場つくろうあたし。
「そういう訳じゃないんだけどね、予定じゃおごるのはひとりと思ってたから」
「おねぇさん、ミズの事なら、ぜんぜん気にしなくていいのにぃ」
おねぇさんという言葉に、全くシックリ来ないあたしは引きつった顔を苦笑いでなんとかごまかす。
「遠慮すんなって、ミズ」
「洋ちゃんがそう言うなら~食べちゃおっかなっミズも」
「コラコラ、そこっ人の話聞いてたわけ?」
「大丈夫。おねぇさんっミズはぁ小食だから~」
「いや、だから――――ね」
会話を拒むかの様に突如ピンポーンと、あのベルの呼び出し音。
話を続けようとした矢先、あたしたちのテーブルに注文を受けようと、既に店員さんが待機していた。いつもなら喜ぶはずだけど、今のあたしには素直にそうできそうにもない。
とまどうがそれでも店員さんの手前、文句いう訳にもいかないので、一応注文する事に。メニューのソフトドリンクが数種類並んだ写真を指差す。
「えっと、じゃっこれで」
店員さんはあたしの指差した場所を一度見て、こちらに視線を戻してから微笑えんだ。
「ドリンクバーおひとつですね」
注文の確認を取ると、店員さんは手元の機械へ料理を入力。
続いてその様子を見ていた洋輔が、メニューの商品をあちこち指差し注文する。その動作や口調にはなんの迷いもない模様。
「んじゃー俺はね、腹減ってるし、これとこれとこれがいいな」
「そちらでしたら、セットメニューでご用意できますが?」
洋輔の注文に反応した店員さんが、すかさず彼にお得なセットメニューをおススメ。
「セットあるなら、それで」
「かしこまりました」
「ミズは? 注文決まったのか?」
「ううん、まだなの。何がいいかな?」
「好きなもん、頼めばいいんじゃね?」
「じゃっ洋ちゃんと一緒のっ」
「かしこまりました、それではご注文を繰り返しま――――」
店員さんが確認を取っている間に、コソコソと鞄から自分の財布を取り出して、お金の勘定をするあたし。
頭の中の計算を終えて、財布から視線を元に戻した。
目の前はガランとした空間だけがあり、見事に向こうの端まで見通せる。
そして、そこにいるはずだった人の姿がない。どうやら夢中で計算していたあたしの耳には、いつの間にか店員さんの声が、聞えなくなっていた模様。
キョロキョロと店員さんの姿を探しながら、状況を把握するために洋輔へ問いかけた。
「あれっ、店員さんは?」
「もう、向こうに行ったけど、返事ならしといたよ」
「あ――――そう、ありがとう」
「どういたしまして」
満面の笑みで洋輔が得意気に答えたのを最後に、あたしとの会話がなくなるのだった。
そこに洋輔の隣に座る彼女がイジケルような口調で、彼に問い詰め始めた。
「洋ちゃん、最近忙しいの?」
「なんで?」
「だってぇ、なかなかデェトしてくれんないんだもんっ」
「ああ、それはミズとの将来を考えてで、俺は今大学行くための勉強してるんだぜ」
「その話は聞いたけど、ミズすんご~く寂しいのぉ」
彼女は洋輔の服を細くきれいに手入れしている指で少しつまんで、自分の方へ彼をグイグイと寄せる。
引き寄せられた洋輔はなにやら彼女の耳元で囁く。彼の一言で、ふたりの空気が変わったのか、ラブラブなご様子。
食事が運ばれてくるまでの辛抱だ、とふたりのラブラブっぷりを横目に何度も自分へ言い聞かせるあたしの瞳に、注文した商品を引き連れた店員さんの姿が。
今日は特別その姿が輝いて映るのだった。
到着した店員さんが運んできた料理をそれぞれの目の前に置くと、テーブルいっぱいに美味しそうな香りが広がる。
「ご注文は以上でおそろいでしょうか?」
「はい」
店員さんが白い紙を透明の筒の様な置物の真ん中に紙を差し込む。軽く会釈して去っていった。その間中も彼らは何も気にせず、ふたりだけの世界。
いろんな意味でお腹いっぱいのあたしはうんざりしていた――――――――水分で胃袋はチャポンチャポン。目の前のバカップルのせいで、今にでもお腹がはち切れそうだった。
理由はイチャイチャする洋輔たちを暖かく見守るスキルなんて持ち合わせていなかったから。飲み物を一気に飲んでは、その度にドリンクバーへ何度も足を運び、往復する始末。
ふたりはすっかりあたしの存在を忘れているのか、それとも、今時の高校生は公衆の面前で恥知らずな行為を、遠慮なしにやってのけれる程、動物的本能が抑えられないお猿さんなのか。
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